|
多くの企業にとってもはや当たり前となった仮想化技術。企業の関心は大きく2つのメリットに集まってきた。1つは既存の物理サーバを集約することで、ハードウェアの調達コストを下げること。もう1つは、管理対象を集中させることで運用管理の手間を削減することだ。そうした仮想化基盤を整備することで、「無駄のないリソース活用」や「ビジネス基盤の俊敏・柔軟な展開」といったさらなるメリットが見えてくる。
しかし現実には、物理サーバの調達コスト削減には成功したものの、かえって運用管理の煩雑化を招き、ビジネスの効率向上という仮想化本来の利点を引き出せずにいるケースが多い。では仮想環境の運用管理を効率化し、そのメリットを引き出すためには、具体的にどのような点がポイントになるのだろうか?
日立製作所(以下、日立)では、そうした課題の解決は「標準化、自動化が鍵であり、さらにそれらを追求していくと、おのずとプライベートクラウドの考え方に行き着く」と指摘する。そして2012年10月にリリースした統合プラットフォーム製品「Hitachi Unified Compute Platform(ユニファイド コンピュート プラットフォーム)」(以下、UCP)は、まさしくそうした仮想環境の運用課題を解決し、本来のメリットを引き出すための“解”だという
では、日立では、多くの企業が抱えている「仮想環境の運用にまつわる課題」をどのように見て、標準化、自動化がどのような形で課題解決の鍵となると考えているだろうか?――ITR シニア・アナリスト 金谷敏尊氏と、日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 企画本部 担当本部長 島田朗伸氏の対談から、仮想化運用を効率化するポイントと、日立がUCPに込めた開発思想を明らかにする。
金谷氏 近年は“経営に寄与するIT”の重要性が叫ばれています。この背景には市場競争の激化と、年々進歩するITシステム/サービスに対する期待などがあるわけですが、仮想化やSaaS、IaaSといったクラウドサービスは、まさに“経営に寄与するIT”を実現する上で格好のツールとなり得るものです。しかし現実には、事業部門がIT部門を介することなく、直接サービスを利用したり、ITベンダと契約したりするケースも増えつつあるようですね。
![]() |
| 日立製作所 情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 企画本部 担当本部長 島田朗伸氏 |
島田氏 確かに、そうした声はユーザー企業の方々からもよく寄せられています。今、企業のIT部門には、従来のような“インフラのお守り”中心ではなく、“ビジネス価値の高いサービスを提供する部門”としての在り方が強く求められています。
そのためにはインフラの運用管理作業を省力化し、“価値を生む仕事”により多くのリソースを振り分ける必要があります。仮想化技術はその実現の上で極めて有効な技術なのですが、数々の課題がかえって運用管理の複雑化を招き、業務部門の期待にうまく応えられていないケースが多いようです。
金谷氏 そうですね。これまでのITインフラは業務システムごとにサイロ化されていましたが、仮想化によってこれを共通化すれば運用ははるかにシンプルになります。しかし仮想化を導入することは、物理環境にはなかった新たな管理対象レイヤーが1つ増えるということでもあります。この点が、逆に運用の煩雑化を招く要因になってしまっているようです。このハードルを乗り越えるためには、技術面と運用プロセス面の両面から、インフラ統合のメリットを追及していく必要があります。
まず技術面では、IT部門の人員が削減され、運用ノウハウの不足に悩む企業も多い中、複雑な仮想環境の管理を「自動化」する製品が鍵になります。プロセス面では、ITリソース調達・利用のプロセスの「標準化」が重要になります。つまりIT部門は業務部門に要求されるがまま、その場その場でシステム・サービスを提供していくのではなく、標準化されたプロセスに基づき、システマティックかつ効率的に業務部門の要望に応えながら、自らITサービスを企画・提供していく「ITサービスプロバイダ」に脱皮することが期待されるわけです。
島田氏 運用自動化は運用管理の効率化・確実化を図る上で鍵になりますし、実際に大きなニーズがあります。ただ日本企業は欧米とは異なり、企業によってシステムの運用形態が大きく異なりますから、“各社独自のプロセス”にも配慮する必要があります。つまり仮想化本来のメリットを引き出す上では、「自動化」と「標準化」が鍵となりますが、「それらをどう両立させるか」も大きなポイントとなるわけですね。
![]() |
| ITR シニア・アナリスト 金谷敏尊氏 |
金谷氏 一方で、そうした仮想化によるインフラ統合や、運用の自動化、標準化を追求していくと、おのずとプライベートクラウドの考え方に行き着きます。しかしこのフェーズに至ると、また別の検討課題が出てきます。それはシステムの「信頼性」です。プライベートクラウド基盤の上には、物理環境で安定稼働していたさまざまな業務システムが集約されるわけですから、そのインフラには高い信頼性が求められます。
しかし現在はさまざまなベンダのハードウェア、ソフトウェア製品を組み合わせた構築スタイルが一般的である点で、その信頼性は常に課題となり続けています。自前でシステム基盤の信頼性を検証し、高い品質を担保するのも容易な作業ではありません。
島田氏 そうですね。システム要素ごとに最善と考えられるものを見極め、組み合わせる――いわゆるベスト・オブ・ブリード型のシステム構築は、コストメリットの点で企業の注目を集めてきました。しかしシステム構築作業や、信頼性担保のためのテストの手間、コストなどを考えると、逆に高くつくケースも少なくありません。企業のIT部門が、そうした高度なSIを自社でできるだけのスキルやノウハウを持っておらず、アウトソースに出す例が多いことを考えても、必ずしもコスト的に有利とは言えないわけですね。
島田氏 では先の標準化、自動化というテーマを、システムの信頼性を担保しながらどう解決すれば良いのか?――そうした課題感から、近年、複数のベンダがリリースしているのが垂直統合型製品だと言えると思います。日立が2012年10月にリリースしたUCPも、そうしたプラットフォーム製品です。
垂直統合型製品の大きな特長は、サーバ、ストレージ、ネットワークも含めて統合している点です。それぞれについて、個別に仮想化用に最適化した製品やソリューションはこれまでもありましたが、必要な構成要素を組み合わせ、仮想化統合基盤用に最適化し、さらに事前に入念な動作検証を施した上でユーザーに提供します。そのためトータルで見ると、ベスト・オブ・ブリード型の構築スタイルより、低コストかつ低リスクで仮想化統合基盤を実現できるメリットがあります。
![]() |
| 日立の垂直統合型製品「UCP」の開発コンセプト。変化し続ける事業環境において業務基盤の迅速な構築・改修と、 自動化、自律化による運用コストの削減を両立する |
金谷氏 マルチベンダ方式では多大な時間とコストが掛かる検証作業を、ベンダ側であらかじめ済ませてあることは、ユーザー企業にとっても安心感が高いですし、導入時間の大幅な削減にもつながりますね。ただ垂直統合型製品といっても複数のベンダが提供している以上、そこには各社独自の考え方が反映されています。日立さんの場合は、どういった点が差別化のポイントになるのでしょうか?
島田氏 日立の場合、まず導入の時間・コストの削減や信頼性の担保はもちろんですが、先ほど述べたように、自動化・自律化による省力化、コスト削減と、“経営に寄与するIT”を実現するための基盤を整備できるよう配慮している点が大きな特長と言えます。
例えば自動化では、業務部門の要請に応じて仮想サーバを新たに立ち上げる際にも、仮想サーバの管理者がVMwareの管理ツール上で操作を行うだけで、サーバ、ストレージ、ネットワークといったハードウェアリソースの設定と割り当てを自動的に行うことができます。それぞれ別の管理ツールを使って個別に運用するスタイルに対し、シングルコンソールで1人の管理者が運用できることは、サービス開始までの大幅な時間短縮と省力化につながります。
![]() |
複数のツールを、複数の管理者が連携して利用する管理形態から、1人の管理者が単一のツールを使う管理形態へ変革する |
金谷氏 先ほど指摘された「自動化」と「標準化」をどう両立させるかの問題についてはいかがでしょうか。ITシステム/ リソースの運用プロセス整備は、いわば社内のITガバナンスの枠組みを作ることでもあります。現在のプロセスにも理由や事情があるなど、一朝一夕に整備することはなかなか難しいのが現実ですが……。
![]() |
島田氏 運用プロセス整備については、統合システム運用管理「JP1」や、数多くのSI案件を通じて、ユーザー企業のシステム運用管理を長年支援し続けてきた弊社に一日の長があると思います。
例えばJP1では、これまでに蓄積してきたシステム運用管理の知見、ノウハウを基に、さまざまな運用パターンのテンプレートを作り、ユーザー企業に提供しています。ユーザー企業側はそれをカスタマイズすることで、自社独自の運用プロセスの標準化を効率的に果たすことができます。UCPにはこのJP1が統合運用管理機能として統合されているので、ユーザー企業は“日立の運用ノウハウ”を即座に入手し、無理なく使えることになるわけです。
金谷氏 ところで、仮想化統合基盤を構築してITリソースを提供する形態には、大きく分けてIaaSタイプとPaaSタイプがあります。UCPでも2製品をラインアップしていますね。PaaSも昨年から注目を集めていますが、日本ではスクラッチやカスタマイズを行う文化が根強いことから、現時点ではIaaSに対するニーズが大きいようです。この背景にはベンダロックインに対する懸念もあるようですね。
![]() |
島田氏 そうですね。弊社も日本企業のユーザーニーズに応えられるよう、VMware vSphereを使ってIaaS基盤を提供する「UCP Pro for VMware vSphere」と、日立製ミドルウェアまでを統合し、業務アプリケーションの実行基盤を整えるPaaS基盤モデル「UCP with OpenMiddleware」を用意しています。現時点では、迅速な仮想サーバの手配、仮想環境の運用効率化など、よりインフラに近い部分のニーズが大きいことから、当面はIaaS基盤モデルに人気が集まるかもしれません。
ただベンダロックインに関して言えば、もちろんシステム構築の目的や要件によっては、個別の製品を組み合わせるスタイルが適している場合もあるでしょう。しかし、ビジネスを取り巻く環境が刻一刻と変化する今日、新たなビジネスを立ち上げる際に、いちいちシステムを一から構築・検証しているようでは、とてもビジネス環境の変化に付いていけません。システムの構築スタイルも、まず目的ありきで考える姿勢が重要なのではないでしょうか。
![]() |
金谷氏 なるほど。仮に「ベンダロックインが心配だ」と考えたとしても、ご指摘のように「業務部門のリクエストにいかに迅速に応えるか」「いかに市場の変化に対応していくか」という目的に照らして考えれば、ベンダロックインによるデメリットより、垂直統合型製品のメリットの方が大きいことにおのずと気付くのではないか、ということですね。また、垂直統合型製品とはいえ、UCPのように標準的な仮想化プラットフォームを採用している場合、ベンダロックインはさほど気にする必要がない、とも言えるでしょうね。
島田氏 ええ。それに自社のビジネスの課題と、それを支えるITシステムの課題を基に導入対象製品を評価・検討するという“システム導入の鉄則”は、対象製品がどのようなものであれ、決して変わらないと思うのです。その点、UCPは冒頭で申し上げた「システム運用の複雑化」という課題と「“経営に寄与するIT部門”」というあるべき姿を見据えて、“日立のシステム構築・運用ノウハウ”を軸に要件を固めた製品です。このUCPという日立からの提案を、ぜひ現在の課題に照らして考えていただければと思います。
|
||
|
※ VMware、VMware vSphere、VMware vCenterは米国およびその他の地域におけるVMware, Inc.の登録商標または商標です。
| 関連リンク |
|
UCPの詳しい製品情報や構築/運用/更改など、システムのライフサイクルのステージに応じた適用ケースを紹介。 |
関連記事 |
|
(@IT News) (ITmedia エンタープライズ) |
提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画
制作:@IT情報マネジメント編集部
掲載内容有効期限:2013年2月8日
| 関連リンク |
|
情報ページ UCPの詳しい製品情報や構築/運用/更改など、システムのライフサイクルのステージに応じた適用ケースを紹介。 |
関連記事 |
|
(@IT News) (ITmedia エンタープライズ) |









