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今最も魅力的なビジネスフィールド、インド
依然として国内市場が伸び悩んでいる中、インドに活路を見い出す企業が増え続けている。近年、インドの経済成長は新興国の中でも著しく、2010年、実質GDP成長率は中国の10.3%に次ぐ8.6%を記録。
これを裏付けるように、インド全土で強い購買力を持つ、年間所得20万〜100万ルピーの中間層が毎年大幅に拡大しており、2025年には1億2800万世帯に達すると見られている(The‘Bird of Gold’――Rise of India’s consumer marketより)。急速に伸び続ける魅力的な“市場”として、インドは今、世界中の企業が「必修科目」と捉える非常に重要なビジネスフィールドとなっているのだ。
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| 日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループ マネージング・コンサルタントの中西美鈴氏 |
これを受けて、インドに進出する日本企業も年々増加。2005年4月時点では328社だったが2010年10月には725社と、実に2倍以上の伸びを記録している(在インド日本国大使館 進出日系企業リストより)。
海外進出を狙う日本企業に対し、コンサルティングサービスを提供している日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティンググループ マネージング・コンサルタントの中西美鈴氏は、こうした状況について次のように語る。
「経済成長が著しい“販売市場”としてのインドに、今多くの企業が注目しています。例えば、従来ならデリー、ムンバイ、チェンナイといった人口400万人以上のTier1都市が消費の中心地でしたが、近年は人口100万〜400万人のTier2都市にも需要のすそ野が広がり、ショッピングモールのオープンラッシュが続いています。加えて、中間層だけではなく、年間所得9万〜20万ルピーの新中間層も拡大するなど、消費者の購買力が年々向上し続けているのです」
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| 図1 インド全土で高い購買力を持つ中間層、新中間層が毎年急速に拡大し続けており、“販売市場”としてのインドに世界中の経営者が期待を寄せている。出典:McKinsey Global Institute:The‘Bird of Gold’――Rise of India’s consumer market,Census2010などからIBMが作成 |
また、インドが注目されていることにはもう1つ理由がある。それは“生産拠点・輸出拠点”としてのインドだ。インドはASEANをはじめ、多くの国や地域とFTA(自由貿易協定)を結んでいる。このため高い関税を回避できるほか、地理的にも欧州・中東・アフリカに近い。
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| 図2 インドはASEANをはじめ、多くの国や地域とのFTA(自由貿易協定)を結んでいるほか、欧州・中東・アフリカに近く、“西方へのゲートウェイ”として活用することもできる。“生産拠点・輸出拠点”としても注目を集めているのだ(図中の青線は航路) |
つまり、上の図2のように西方へのゲートウェイとして活用することで、輸送コスト削減、リードタイム短縮というメリットを享受できるのだ。この点を見据えて「チャイナ・プラス・ワン」の候補地としても注目されているのである。さらに中西氏は、「労働人口が豊富な点も見逃せません」と付け加える。
「現在、インドの人口は12億1000万人と、中国の13億5000万人に迫る勢いですが、平均年齢が24歳と若く、若年層が多い理想的な人口ピラミッドとなっています。また、2010年4月に無償義務教育法が施行されたため、2020年には学校教育を受けた約2億5000万人もの人材が、労働市場に輩出されることになるのです」
「インドで作ってインドで売る」だけではなく、「インドで作って世界で売る」ことも十分に狙える――近年、製造業をはじめ、サービス業が、さらには規制の範囲内で金融、保険、流通・小売りが現地パートナーと組み、積極的にインドに乗り出していることには、こうした背景があるのだ。
しかし、いくら魅力的なフィールドとはいえ、そこで成功するためにはそれなりの戦略が必要となる。特にインドに進出するためには、業種を問わず、全ての企業がクリアしなければならない4つのハードルが存在すると言われている。
1つ目は「Government Relationship(以下、GR)の構築」。インドでは市場に対する政府の介入が多い。特に州政府の権限が強いため、中央政府だけではなく、州政府との良好な関係を構築することが市場進出の前提条件となる。
2つ目は「オペレーションリスク」。インドでは中央政府と州政府が独自に徴税権を持つため、非常に入り組んだ税金体系となっている。従って、州をまたぐ輸送で求められる複雑な税計算、各種手続きを確実に行える体制と、掛かったコストを可視化する仕組みが不可欠となる。現在、現行の関税を除いた全ての間接税を撤廃し、GST(Goods and Service TAX)に一本化することが中央政府で検討されており、議論の推移に注目していくことが必要だ。
「従って、まずはGRへの取り組みが進出への大きなカギになります。特に大切なのは、受け身の姿勢に陥らないことです。日ごろから政府と密接にかかわる中で、政策ロードマップ作成への参画など、自社の目的に応じた事業環境実現を狙う“攻め”のGRと、セキュリティ、税金などに関する法規制の調整など、将来的なリスクやコスト増を回避するための“守り”のGR、両面での能動的なアプローチが不可欠となります」(図3参照)
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| 図3 政策ロードマップへの参画などの“攻め”のGRと、税金や雇用に関する政策策定への参画など“守り”のGR、両方への積極的なアプローチが必要。法規制を「所与」のものとせず、「自社の戦略上の操作変数」として位置付け、参入戦略を考えることが重要だという |
また、オペレーションリスクの1つとして、物流網の未整備という問題も挙げられる。道路の整備状況も悪く、冠水によって輸送が遅れることも珍しくない。
そうした中、コストを抑えながらジャスト・イン・タイムでの物流を実現するためには、現地に詳しく、一定の物流品質を満たした物流企業の選定や、輸送管理システムなどの導入が求められる。中西氏は、「物流を制す者がインドを制すと言われているように、現地物流網の最適化が進出成功の大きなカギになります」と付け加える。
続いてインド進出、第3のポイントは「パートナー企業の選定」だ。インドに進出する上では、単独で進出する、現地に詳しいパートナー企業と組むという2つの選択肢がある。マーケットについての知見がなく、ブランド認知向上/販路開拓に時間とコストが掛かるといった場合、後者を選択することがある。
ただ、新規にビジネスを展開する上では、地元の名士との関係構築も必須となるが、すでに先行企業に押さえられており、会うことすら難しいケースも多い。そこでパートナーと組むことがポイントとなってくるわけだが、そもそも「目的が合致するか」「Win-Winの関係を築けるか」など、最適なパートナーを探すこと自体が難しい。見つかったとしても、事業拡大に伴い、互いの方向性にズレが生じてくる可能性もある。中西氏はこの点を受けて「何をするかより誰とするかの方が重要」と指摘する。
そして最後は「日本人の思い込みを捨てた顧客理解」だ。一般に、インド人は「価格に見合った良いものを買う」質実剛健な購買行動を取ると言われている。従って中間層、新中間層をターゲットと考えれば低い価格設定が理想と考えがちだが、価値があると認められない限り低価格でも売れないのである。
そうした購買行動特性に加えて、「家電製品の買い替え需要はインド最大の祭り、ディワリの時期に集中する」など、地元の文化・風習に対する理解も必須となる。また近年は、ソーシャルメディアの浸透を受けて、Web上のつぶやきや評価を収集・分析してマーケティング施策に生かす企業も増えつつあるという。
「顧客理解が重要なのはBtoBの商流を築く上でも同様です。例えば製品が医療機器の場合、大規模な病院では、購買担当者が付き合いのある業者から集中購買を行っています。しかし個人病院の場合、オーナーが複数のメーカーの中から好みで製品を選択しています。こうした対象顧客の違いによって、また、地域によっても組むべきディストリビューターが変わるため、地域ごとにサプライヤ、ディストリビューター、ディーラーといったプレーヤーを認識・選定し、個別具体的に商流を築く必要があるのです。このためにはマーケットに対する深い知識と現地のネットワークが不可欠となります」
ワンストップで支援
では販売市場として、生産・輸出拠点として、非常に魅力的なインドに進出するためには、これらの課題をどう解決すれば良いのだろうか。特に以上4つのポイントは、関係構築、市場の理解など、時間とコストが掛かるテーマが多い。だが、参入準備に時間をかけ過ぎてしまえば、その分、先行者に市場優位性を奪われることになる。
そこで日本IBMでは、「グローバル・ビジネス・サービス」として、日本企業の新興国進出を支援している。日本IBMが、世界176カ国の現地IBMと連携し、各国の文化・商慣習に基づいたコンサルティングを通じて、日本企業の迅速・確実な進出を支援しているのだ。
具体的には、まず中西氏のような日本人コンサルタントが顧客企業の課題・狙いを聞き出し、調査・分析した上で最適な現地スタッフをアサイン。ローカルの視点を組み合わせて具体的な戦略・仮説を立案していく。
特長は2つあるという。1つは、豊富なコンサルティング実績から得た知見を基に、各国への進出・事業拡大ノウハウを標準化したライブラリを持っていること。つまり各地域統括のコンサルタントは、顧客企業の進出地域に応じたノウハウをローカライズすることで“実績に裏付けられた戦略”を立案できるため、ビジネスをスピーディに展開できるのである。
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| 「戦略コンサルティングから実際のオペレーションまで、現地在住のコンサルタントとともにワンストップでサポートできる点がIBMの強み」と中西氏は語る |
もう1つは、戦略コンサルティングから実際のオペレーションまで、ワンストップで提供すること。例えばGRなら、多くの日本企業では政府との関係構築を駐在員個人の人間関係に頼っているケースが多い。
だが本サービスでは、IBMのコンサルタントがGRの仕組み作りを支援することで、一担当者をインテグリティ違反のリスクから守りながら、「国」対「会社」の関係構築を支援する。商流/物流整備におけるパートナー企業の選定についても、最適な企業候補を提案。販路開拓に欠かせない地元の名士の紹介、関係構築も含め、顧客企業とともにスムーズな参入を図っていくという。
「商流/物流の整備では、実現のカギとなるキーパーソンが存在します。しかし現地についての知見やネットワークがない状態では、自社の目的に最適な“ライトパーソン”になかなか出会えないと言われています。戦略立案にとどまらず、キーパーソンの紹介や、パートナー企業の選定、顧客理解に基づいた製品・サービスのローカライズ、FTAや現地調達によるコスト削減を重視した物流体制の確立など、実際のアクションまで支援できる点が大きな強みです。これは、各国でIBM自身が事業を行っているからこそ、ご支援できるのだと考えています」
一方、ビジネス基盤となるITシステムの整備についても、以下の図4のように、IBMならではのノウハウを活用する。例えば、インドの新拠点に個別にシステムを構築する考え方では、日本本社からのコントロールが難しくなるほか、運用面、コスト面で無駄が生じやすい。そこでインドに新拠点を設置する際には、まず事業立ち上げのスピードを重視し、事業に最低限必要なアプリケーションとインフラを選別して迅速に配備する。
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| 図4 インドでの事業拡大に伴うシステムの横展開だけではなく、さらに他の新興国への進出も見据えてITシステムのグローバル標準を確立。新拠点の迅速な配備、コスト最適化、グローバルITガバナンスの確立を同時に狙えるシステム構築のロードマップを提案する |
そして実際にビジネスを開始したら、今度はコスト削減を重視。システム運用のグローバルKPIを策定し、アプリケーションとインフラを最適化することで、インドでの事業拡大に伴うシステムの横展開を可能とする。さらに、それを基にITシステムのグローバル標準を確立。日本も含めた各国のシステムを“グローバル標準をベースにローカライズした仕組み”に改善していく。こうしたITシステム構築・拡大のロードマップを提案することで、新拠点の迅速な配備、コスト最適化、グローバルITガバナンスの確立まで同時に狙うのである。
長期的な視点で事業展開を
以上の同社サービスには、すでに数百社の実績があり、規模を問わずメーカーをはじめあらゆる業種の企業がインドでビジネスを展開しているという。ただ、中西氏はサービスの有効性を強調しながらも、「進出成功の最大のポイントは、やはり経営トップの意志です」と力を込める。
「参入する際には、ブランド認知以前に、まず政府、企業、消費者の信頼獲得のために経営幹部自ら現地を訪問し、例えばマスメディアを使ってインドにコミットするなど、会社としての“本気度”を示すことが肝要です。これはある意味、ビジネスの基本でもあります。そもそも誠意の感じられない相手との信頼関係は成立し得ません。先進国に進出する際のように、成果が得られなければすぐに撤退するといった短期的な視点ではなく、腰を据えて信頼関係を構築し、じっくりとブランドを醸成していく姿勢が重要です」
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| 「販売市場として、生産・輸送拠点として、インドは非常に魅力的なフィールド。長期的な視点を持ち、ぜひ“本気”で取り組んでみられては」と語る中西氏 |
実際、インドで高い収益を挙げているサムスンなどは、経営トップ自ら「インドはサムスンにとってトッププライオリティの国だ」といったメッセージをマスメディアなどで発信し続けているという。言ってみれば、インド市場進出の要件とは決して特別なものではなく、GRや深い顧客理解、パートナー企業との関係構築など、日本でも必要な“ビジネスの鉄則”が、より一層高いレベルで求められるということなのかもしれない。
「課題もありますが、それでもインドは企業の発展に寄与する非常に魅力的なフィールドです。グローバルでの経営ノウハウを生かし、現地を知り尽くしたスタッフとともに、戦略立案からソフト面、ハード面の整備までワンストップでサポートしますので、ぜひ本気でインドに取り組んでいただければと思います」
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提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画
制作:@IT情報マネジメント編集部
掲載内容有効期限:2012年1月22日
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