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@IT > SPSS Open House 2006 イベントレポート前編 |
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10月24、25日の2日間にわたり、「SPSS Open House 2006」が開催された。 会場では、基調講演を皮切りに、SPSS Open House 10周年記念特別企画セッション、SPSSの最新ソリューションのデモンストレーション、ユーザー企業の実践事例報告、研究者による研究発表、チュートリアル・セミナー、ハンズオン・ワークショップなど多数のセッションが行われ、1200人の参加者で活況を呈していた。
本レポートではいくつかのセッションを取り上げ、そのポイントをご紹介していく。 なお、「SPSS Open House 」は今年で幕を閉じる。来年からは、ワールドワイドで開催されてきたSPSSユーザーカンファレンス「SPSS Directions」として、新たなスタートを切ることが予定されている。 では、基調講演を含む、いくつかのセッションを取り上げ、そのポイントをご紹介していこう。
ブランドマップとは、競合する各ブランドを、消費者がどのように知覚(または選好)しているか、それぞれの相対的な位置を示すためのマップである。中西氏は、ブランドマップは、マーケティング戦略の策定に際して有用な情報を提供すると述べ、ブランドマップの種類や問題点、作成に当たっての留意事項などについて具体的に説明してくれた。 中西氏によれば、ブランドマップの種類としては、「知覚マップ」「選好マップ」「競争構造マップ」や、知覚マップと選好マップを結合した「同時(結合)マップ」などがあり、こうしたブランドマップを作成するために用いるデータはそれぞれ異なるのだという。例えば、以下のようなものが挙げられる。
中西氏は、典型的なブランド(知覚)マップにはいくつかの問題点があると指摘する。
ただし、最後の「市場セグメント規模が分からない」という問題点については、ブランドの属性データだけでなく、選好データも収集し、同時(結合)マップ(知覚マップ+選好マップ)を作成すれば解決すると説明してくれた。 中西氏は、ブランドマップを作成するに当たっては、各企業が持つデータの有効活用を前提に、必要なデータをそろえていけばよいという。本講演は、マーケティング戦略策定において多用されるブランドマップ作成・活用のポイントが理解できる実践的な内容であった。
基調講演に続き、Open House 10周年を記念して、10年にわたるOpen House開催を成功させた立役者であるSPSSの村田氏、そしてSPSSと早い時期からかかわってこられた慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授の井上氏、明治学院大学経済学部教授の清水氏とともにSPSSの歴史を振り返った。
<1968〜1975 :創世期> 1968年、スタンフォード大学在学中のノーマン・ナイ氏、ハドラル・ハル氏、デール・ベント氏の3人によりSPSSは誕生した。SPSSは当初オープンソースとして公開され、ユーザーコミュニティを通じて改良が加えられていったという。そして、1975年SPSS Inc.が設立。井上氏は、初めてナイ氏と会ったときのことを、「宇宙のビッグバンと同じくらい衝撃を受けた」と、同氏とのツーショット写真をスクリーンに映しながら、当時を振り返った。 <1975〜1995 :発展期> 1984年、SPSS Inc.はPC DOS版統計ソフトを他社に先駆けてリリース。清水氏は、SPSSがPC版統計ソフトの市場初のリリースとなったことについて「プラットフォームの変化にうまく対応して成長している、時代の流れを読むのがうまいことに感心している」と述べた。また、「以前、大学の方針転換でSPSSを学生に教えなくてはならなくなり、SPSS社へ操作方法を学びにいったところ、思いのほか簡単に操作できるようになった」というエピソードも披露してくれた。 1988年には日本法人であるエス・ピー・エス・エス株式会社が設立され、村田氏がSPSSに入社したのは、ちょうどSPSS Inc.がNASDAQ上場を果たした1993年のことだった。 村田氏は入社以来、同社のブランディングを強く意識してきたという。例えば、NIKEのブランド戦略として高名な「スーパーカスタマー」の育成を重視し、同時に「社会貢献」に注力したそうだ。その活動の中心となったのが「産学の橋渡し」であり、日本消費者行動学会の事務局を引き受けるなど、さまざまな形で産学の研究活動を支援、いまでもそれは継続している。 <1996〜2002 :転換期> 1996年、Amos 3.6をリリース。清水氏は、消費者行動分析の結果をビジュアルに表現できるツールの登場を歓迎したという。同年Open House 第1回が開催された。1999年以降は、ISL(Clementine)、Lexi Quest、Quantime社などを買収し、データマイニング、テキストマイニング機能の充実を図っていった。井上氏は「Clementine自体が1つの分析プラットフォームになっていったのは非常に衝撃的であった」と語った。 <2003〜 :Predictive Analytics 〜 将来> 2003年、SPSSはついに「Predictive Analytics」を提唱する。その中で、同社は現在〜将来にわたるロードマップを明確に打ち出し、その実現に向けて進化し続けているのだ。 なお、本セッションの中で、SPSS Inc. CEO ジャック・ヌーナン氏からのビデオメッセージが流れた。ヌーナン氏は、「今日は悲しいお知らせとうれしいお知らせがあります」と切り出すと、まず悲しいお知らせとしては、SPSS Open Houseは10回目の本開催をもって幕を閉じることを宣言した。そして、うれしいお知らせとして、2007年からはワールドワイドで開催されているSPSSユーザーカンファレンス「SPSS Directions」が登場し、新たなスタートを切ることを告げた。 村田氏は、これからも「研究奨励賞」などを通じた、日本独自の産学の橋渡しともいえる支援は今後も必ず継続することを約束。また、SPSSユーザーとの交流も新たな形で行えることに対して大きな期待を表し、実施して欲しい企画の提案を募集することにもふれ、特別企画は幕を閉じた。
本セッションでは、SPSS Japan Inc.鈴木氏から、Predictive Enterpriseについての説明、デモを交えながらSPSSを採用した事例が紹介された。 企業には2つのギャップが存在するという。1つは「Knowledge Gap」、もう1つは「Execution Gap」である。「Knowledge Gap」とは、「データ入手能力」と「分析能力」との間のギャップであり、企業が保有する利用可能な情報(データ資産)を十分に活用できていない状況を指す。また、「Execution Gap」とは、データ分析から得た知見を具体的なアクションに結び付けることができていない状況であることを指している。つまり、「分析能力」と「実行能力」との間のギャップである。 SPSS CEOのジャック・ヌーナン氏が“SPSSは、企業を「Predictive Enterprise」に生まれ変わらせる”と主張するように、SPSSの推進する「Predictive Analytics」が有効活用されれば、この2つの「Knowledge Gap」「Execution Gap」は解消される。2つのギャップが解消されれば、膨大なデータ資産から最大限の価値を引き出し、深い洞察を得て自社のビジネスを理解することができ、そして高度な分析機能を駆使して結果を予測し、経営全般の意思決定を最適化すべく、データ分析結果から得た知見をもとにアクションを起こすことができる。それが「Predictive Enterprise」なのだ。 鈴木氏は「Predictive Enterprise」の具体例として3つの事例を紹介してくれたが、当レポートでは、「オンラインショップによる情報収集とその活用」についての事例を取り上げる。 従来、リアル店舗や代理店を通じた販売を行ってきた某旅行会社では、新たな販売チャネルとしてWebによるオンライン販売に取り組んできた。しかし、競争が激しい業界であり、また製品の差別化が難しいため、他社との競争優位性の確保に苦労していたという。 そもそも自社の顧客のニーズや行動を的確に把握できる分析環境が未整備であったという問題が背景にあり、これまでも簡単な集計作業は行っていたが、Webログやコールセンターログ(コンタクトログ)の分析は未着手であったし、アンケートの実施結果は、社内にフィードバックされないまま放置されていた。結果として、ダイレクトメール、ECサイト、コールセンターなどでの顧客に対するオファー(提案)は、個々の顧客のニーズを無視した画一的なものとならざるを得ず、顧客満足度の低下につながっていたという。 そこで、この旅行会社では、ECサイトやコールセンターなどさまざまな顧客接点で発生する顧客データを統合的に収集、分析、活用する情報分析基盤をSPSSのソリューション(図1)を採用して実現したのである。
図2の「Predictive Enterprise プラットフォーム」に組み込まれたSPSSのツール群を用いて、Webログ分析を行いサイト上での顧客の購買行動を詳細に把握したり、Webページ上で簡単なオンラインアンケート「旅行に求めるものは何ですか?」といったような質問を投げかけ、その回答に応じて、顧客ニーズを満たすような内容のWebページを表示するといった仕組みを実現している。ただし、これは直接購買に結び付けることを目的とはしておらず、あくまでも新規会員登録を促し、顧客情報を収集することを目的としている。一方、既存会員向けのアンケートも実施しているが、その結果は、これまで蓄積してきた会員情報と結び付けたうえで分析、最適なオファーを提示して実売につなげているそうだ。
このように、データの収集・分析から得られた知見は、実際のアクションに反映される。具体的には、顧客のセグメンテーションを行い、最適なDM配信先リストを作成。また、Webサイトやコールセンターでは、個々の顧客情報に基づくレコメンデーションを行い、顧客の反応率を高めているそうだ。なお、上記の情報の収集・分析・活用プロセスは、「Predictive Enterprise Service」を用いてすべて自動化されており、当情報分析基盤の管理負荷は大幅されているという。 この企業は、SPSSの提唱するPredictive Analyticsを有効活用して「Predictive Enterprise」に生まれ変わった典型的な事例といえるだろう。 提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2006年12月27日 |
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