ベースライン(べーすらいん)情報システム用語事典

baseline / 基準計画 / 基準値

» 2007年10月04日 00時00分 公開

 あるものの時間的経過を伴う変化を観測するとき、変化や実験効果の有無を判定する基準となる値のこと。観測データ(変化後の観測値)の比較対象として設定されるデータで、通常は事前(変化の要因となる措置や処遇の行う前)に得られた観測データが用いられる。分野・用途によって、一定の期間の推移データを利用したり、統計的代表値を使ったりする。

 例えばある人が“太った”かどうかを判断するには、現在の体重と過去の体重を比較しなければならない。しかし、過去の体重データが“たまたま”太っていた時期のものであれば、正しい判断は得られない。そこで厳密な比較を行う場合には、日常的な体重変動を加味して、“普段の体重”を導き出すことが求められる。このように「通常」「実験前」「異常なし」の状態を示すデータや値を、ベースラインという。

 プロジェクトマネジメントでは、プロジェクトにおいてプロジェクトオーナー(決裁者・顧客)あるいはプロジェクトマネージャの承認を得て、具体的に実施が予定されている計画をベースラインという。

 プロジェクトマネジメントを行う場合、最初にスコープ、スケジュール、コストなどに関する計画(初期計画)を策定するが、その計画のままでプロジェクトが完了することはほどんどない。これらの計画はプロジェクトの状況変化に応じて、オーナーの承認を得ながら、常に最新のものに更新される。このようにプロジェクトの進ちょくに従って変更され、「現在の計画」を示すものがベースラインである。

 スコープベースライン、スケジュールベースライン、コストベースラインがあり、それぞれプロジェクトが正しく進ちょくしているのかを測定する基準として活用される。EVMSでは、金額換算した達成予定価をベースラインとして、現実の達成価値と比較してプロジェクトの進ちょくを評価する。

 プロセス改善では進歩や達成を図る基準(一連の仕様や作業成果物)で、CMMIでは構成ベースライン、成果物ベースラインがある。

 システムの運用管理では、日常トラブルなく稼働しているシステム(サーバなど)の状態や構造を示す管理データをいう。例えば性能監視においては、性能データ(CPU使用率、メモリ使用率など)から作られる標準値がベースラインとなる。専用の監視ツールによって日々の性能データを収集してベースラインに反映し、これと現在値を比較することで、性能劣化などのシステムの異変を迅速に察知できる。ITILにおいては、ITSMベースライン、パフォーマンスベースライン、構成管理ベースラインなどがある。

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