CMMI(しーえむえむあい)情報システム用語事典

capability maturity model integration / SEI CMMI / 能力成熟度モデル統合 / CMM統合

» 2007年10月30日 00時00分 公開

 専門分野・改善作業内容別に複数存在していたCMM(注1)を整理・統合し、分野横断的な改善活動で利用可能な手引きとして定義・策定されたプロセス改善モデル。世界中の組織・企業でCMMを利用した結果をフィードバックして、より効果的なモデルとして作られた。

 1980年代半ばにカーネギーメロン大学 ソフトウェアエンジニアリング研究所(CMU/SEI)で開発が始まったCMM(SW-CMM)は、ソフトウェア開発のプロセス改善において大きな成果を示した。この成功は、さまざまな分野で類似の改善モデルを多数生み出すことになった。

 これらのモデルは各分野の特定プロセスに適用するには有用だったが、大規模な組織が複数の異なるプロセス同士を横断的に連携して改善活動を行おうとする場合、訓練や評価、プロセス資産の重複など、コスト・手間・一貫性といった点で問題があり、改善活動の目的や焦点がぼやけるという弊害が指摘されるようになった。

 そこで1997年、米国国防総省(科学・技術国防副長官)がCMU/SEIとNDIA(米国国防産業協会)の協力を得て、複数の改善モデルを統合するCMMIプロジェクトをスタートした。短期的には「ソフトウェア能力成熟度モデル」(SW-CMM)、「システムエンジニアリング成熟度モデル」(EIA/IS 731)、「統合成果物開発成熟度モデル」(IPD-CMM)の3モデルの統合が目標とされ、2年余りを経た2000年に最初のCMMIモデル(V1.02)と関連アセスメント、トレーニング成果物がリリースされた。さらに2002年にはV1.1(システムエンジニアリングおよびソフトウェアエンジニアリングのためのCMMI:CMMI-SE/SW)が、2006年にはV1.2(開発のためのCMMI:CMMI-DEV)がリリースされている。これらはCMU/SEIのサイトからダウンロードでき、無料で使用することができる。

 CMMIモデルの基本は、プロセス領域(process area)である。これはプロセス改善における活動を分類したもので、従来のSW-CMMでいう「キープロセスエリア」、EIA/IS 731でいう「フォーカスエリア」、IPD-CMMでいう「プロセスエリア」に該当する。CMMIではこれらを整理・統合し、CMMI-DEV V1.2では22のプロセス領域が定義されている。各プロセス領域には固有ゴールと共通ゴールがあり、固有ゴールには固有プラクティスが、共通ゴールには共通プラクティスが設定されている。これらのプラクティスを実施し、ゴールを満たすことが成熟度・能力(後述)の達成につながる。

連続表現の
グループ
プロセス領域 段階表現のグループ
(成熟度レベル)
プロセス管理 OPF:組織プロセス重視   3    
OPD:組織プロセス定義+IPPD   3    
OT:組織トレーニング   3    
OPP:組織プロセス実績     4  
OID:組織改革と展開       5
プロジェクト管理      PP:プロジェクト計画策定 2      
PMC:プロジェクトの監視と制御 2      
SAM:供給者合意管理 2      
IPM:統合プロジェクト管理+IPPD   3    
RSKM:リスク管理   3    
QPM:定量的プロジェクト管理     4  
エンジニアリング RD:要件開発   3    
REQM:要件管理 2      
TS:技術解   3    
PI:成果物統合   3    
VER:検証   3    
VAL:妥当性確認   3    
支援 CM:構成管理 2      
PPQA:プロセスと成果物の品質保証 2      
MA:測定と分析 2      
DAR:決定分析と解決   3    
CAR:原因分析と解決       5
「開発のためのCMMI V1.2」のプロセス領域

 CMMIは異なるモデルを統合した結果として、「段階表現」と「連続表現」という2つの表現形式を持つ。これは全プロセス領域のグルーピングにおける考え方の違いを示すものだが、ユーザーにとっては改善活動に対するアプローチが異ってくる。

 段階表現は「成熟度」(maturity)の概念を用いて、組織(企業全体・部署・プロジェクト)を5段階の成熟度レベルで診断し、そのレベルに応じて改善活動(プロセス領域)を順序に従って実施していく。ある成熟度レベルを達成するには定められたプロセス領域の活動を省略することなく行うことが求められる。また、高い成熟度レベルの組織になるためには、下位レベルを必ず確立してからでなければならない。改善活動をどこから手を付けてよいか分からない組織にとって適したアプローチである。

 これに対して連続表現は「能力」(capability)という概念を中核に据え、選択したプロセス領域ごとにベースラインを設定して改善活動の結果を測定、達成された能力に評点を与えて可視化して、改善サイクルを回していく。このとき、能力値は組織にではなく、プロセス領域に対して付与される。どのプロセス領域に焦点を当てるかは、その組織の必要・目的に応じて柔軟に選ぶことが許されている。各プロセス領域には依存関係があるので選択に一定の制限はあるが、自由度はかなり高い。

 ユーザーは原則としてどちらかの表現形式を選択して使用することになるが、この2つはプロセス改善においても評定(appraisal)においても本質的には等価な結果が得られるように設計されており、双方を必要に応じて並行的に使い分けることも想定されている。

(注1)CMM

参考文献

  • 『CMMIモデルガイド』 デニス・M・エイハーン、アーロン・クローズ、リチャード・ターナー=著/前田卓雄会=訳/日刊工業新聞社/2002年9月(『CMMI Distilled』の邦訳)
  • 『図解 はじめてのCMMIとプロセス改善』 橋本隆成=著/日刊工業新聞社/2006年9月
  • 『CMMI V1.2 モデル − 公式日本語翻訳版』 CMMI成果物チーム=著/情報処理推進機構、日本SPIコンソーシアム CMMI V1.2 翻訳研究会=訳/カーネギーメロン大学 ソフトウェアエンジニアリング研究所/2007年(『CMMI for Development, Version 1.2』の邦訳)

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