SWOT分析(えすだぶりゅーおーてぃーぶんせき)情報システム用語事典

swot analysis / スウォット分析

» 2007年06月01日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 企業の戦略立案を行う際で使われる主要な分析手法で、組織の外的環境に潜む機会(O=opportunities)、脅威(T=threats)を検討・考慮したうえで、その組織が持つ強み(S=strengths)と弱み(W=weaknesses)を確認・評価すること。経営戦略策定のほかにマーケティング計画やバランスト・スコアカード、ISOのマネジメントシステム構築など、幅広い分野で活用される。

 機会と脅威は、外部環境――すなわち組織が目的を達成するうえで影響を受ける可能性のあるマクロ要因(政治・経済、社会情勢、技術進展、法的規制など)とミクロ要因(市場規模・成長性、顧客の価値観、価格の傾向、競合他社、協力会社など)を列挙し、促進要因と阻害要因に分けることで導き出す。

 強みと弱みは、自社の有形・無形の経営資源――例えば商品力、コスト体質、販売力、技術力、評判やブランド、財務、人材、意思決定力などを検討し、それらが競合他社より優れているか、劣っているかで分類して導いていく。

 SWOT分析においてどのような項目をいくつ取り上げるかは、特に統一的な基準があるわけではない。定量的な評価を可能にするためのチェックリストはいくつも提案されているが、それらを使う場合も目的に合致しているかどうかを検討する必要がある。

 また、機会/脅威、強み/弱みは相対的なものであり、外部環境の変化によって強みが弱みに転じたり、分析者の解釈によって機会だったものが脅威になったり、ということがあり得る。このようにSWOT分析は主観的な裁量にゆだねられる部分が大きいため、需要や利益率の予測といった詳細・精密な分析には不向きである。結果よりも、過程に意味のある戦略立案手法といえる。

 SWOT分析は、経営学者のヘンリー・ミンツバーグ(Henry Mintzberg)による戦略マネジメント分類でいう“デザインスクール”の基本ツールで、企業内部の能力と外的環境を適合する戦略(計画)を作成するためのものである。戦略(計画)とは内的状況と外的環境を一致させることであるという立場は古くからあるが、これが戦略策定プロセスとして明確になってくるのはハーバード・ビジネススクールのゼネラルマネジメント・グループのケネス・R・アンドルーズ(Kenneth Andrews)らによって書かれた「Business Policy: Text and Cases」(1965年)からだとされる。同書はビジネススクールの教科書としてポピュラーなものとなり、ここに示された機会・脅威(当初は「リスク」と表現されていた)・強み・弱みから企業を分析し、戦略=中長期計画を策定する方法は、米国で広く普及した。

 一方、スタンフォード研究所(SRI)では1960年代にアルバート・ハンフリー(Albert Humphrey)らが企業の長期計画がなぜ失敗したのかを明らかにするという研究プロジェクトを行っていた。この中で企業活動などの良し悪しを明示する仕組みとして、「SOFT分析」という方法が考案された。すなわち、現状における良いという評価を満足(S=satisfactory)、将来における良いという評価を機会(O=opportunity)、現状における悪いという評価を失敗(F=fault)、将来における悪いという評価を脅威(T=threat)に分類するものである。これが1964年にFがWに変更され、「SWOT分析」という言葉が生まれたという。

 SWOT分析は、市場調査や社会調査などでは外部環境分析を先に行うことを強調して「OTSW分析」、シックスシグマなどではWをC(challenge)に替えて「SCOT分析」と呼ばれる場合がある。また、SWOT分析の拡張であるTOWS分析(SWOT分析を含んでいる)も、しばしば「SWOT分析」と呼ばれている。

参考文献

▼『Business Policy: Text and Cases』 Edmund P. Learned、Kenneth R. Andrews、C. Roland Christensen、William D. Guth=著/Irvin/1965年

▼『経営戦略論』 ケネス・R・アンドルーズ=著/山田一郎=訳/産業能率短期大学出版部/1976年11月(『The Concept of Corporate Strategy』の邦訳)

▼『SWOT analysis method and examples, with free SWOT template』 businessballs.com

▼『戦略サファリ――戦略マネジメント・ガイドブック』 ヘンリー・ミングバーグ、ブルース・アルストランド、ジョセフ・ランペル=著/齋藤嘉則=監訳/木村充、奥澤朋美、山口あけも=訳/東洋経済新報社/1999年10月(『Strategy Safari: A Guided Tour Through The Wilds of Strategic Management』の邦訳)

▼『企業戦略を考える――いかにロジックを組み立て、成長するか』 淺羽茂、須藤実和=著/日本経済新聞出版社/2007年9月


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