Wiki(うぃき)情報システム用語事典

» 2009年07月21日 00時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 ネットワークを介して、複数の利用者がコンピュータ上の文章(ハイパーテキスト)を共同作業で追加・修正・更新できるようにした仕組みのこと。これを実現するための管理システムをいう場合が多いが、作成されたWebサイトや文書群を指すこともある。また、コンセプトを「Wiki」、個別の実装を「wiki」と書き分ける場合もある。

 電子掲示板ブログと同様にWebコンテンツサーバの1種といえるが、掲示板が対話、ブログが時系列な情報記録を主眼としているのに対して、Wikiは新規の書き込みに加えて、すでに公開済みのコンテンツを随時(別の参加者が)書き換えていくという利用スタイルに特徴がある。各テキストは任意のテキストにハイパーリンクで結び付けることができるため、サイト構造(知の組織化)も利用者に委ねられる形となる点も特徴的である。

 一番有名な使用例は、オンライン百科事典「ウィキペディア」であろう。ウィキペディアは、Wikiの哲学である「開放的な編集」を引き継ぎ、世界中の閲覧者が執筆・編集者となってオープンに読み書きできるシステムとして運営されている。ウィキペディアのように万人向けに公開されたコンテンツサイトのほか、特定のコミュニティや会社内で情報共有するための仕組みとして利用されることも多い。

 Wikiのコンセプトと実装を最初に作り出したのは、米国のプログラマのウォード・カニンガム(Ward Cummingham)である。その主たる想定用途はソフトウェアパターンの収集・整理であった。カニンガムは、建築家であるクリストファー・アレグザンダー(Christopher Alexander)の思想に影響を受け、アレグザンダーのパターンランゲージをソフトウェア開発に導入することを提唱していた。その趣旨の論文『Using Pattern Languages for Object-Oriented Programs』をケント・ベック(Kent Beck)との連名で発表した1987年、アップル・コンピュータ(現アップル)が「HyperCard」というソフトウェアを発売すると、カニンガムはこのソフトを使ってパターンを整理するための“パターンブラウザ”の開発を始めた。

 1994年になってカニンガムはPerlとCGIを使ってパターンブラウザのWeb版を作り始め、1995年3月に自身のWebサイトであるc2.comで公開した。このサイト(コンテンツ群)には「Portland Pattern Repository」という名前が付けられており、このコンテンツを編集する仕組みが「WikiWikiWeb」と呼ばれた。“wiki”とはハワイの言葉で「速い」「急ぐ」「形式ばらない」という意味で、ホノルル空港内のシャトルバス「ウィキウィキ」に由来するという。

 WikiWikiWebはオープンソース・ソフトウェアとして公開され、多くの派生プログラムを生み、世界中に広まった。派生ソフトウェアのことを「wikiクローン」と呼ぶこともある。

参考文献

▼『Wiki Way――コラボレーションツールWiki』 ボウ・ルーフ、ウォード・カニンガム=著/yomoyomo=訳/ソフトバンクパブリッシング/2002年9月(『The Wiki Way: Quick Collaboration on the Web』の邦訳)

▼『パターン、Wiki、XP――時を超えた創造の原則』 江渡浩一郎=著/技術評論社/2009年8月


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