ワーク・フォルダは、複数のWindows 8.1 PCやモバイル・デバイスの間でユーザー・ドキュメントなどを共有・同期させる機能。ワーク・フォルダに保存された情報はクライアント・デバイスへダウンロードされ、オフラインでも自由に閲覧・編集できる。
「Windows 8.1クロスロード」は、2013年10月から出荷が開始されたWindows 8.1の注目機能について解説するコーナーです。
前回は、Windows 8.1で改善されたWindowsストア・アプリを中心に、Windows 8.1での機能強化点について解説した。今回はWindows 8.1の新機能「ワーク・フォルダ」について解説する。
Windows 8.1で新たに導入された「ワーク・フォルダ」とは、複数のクライアントからファイル・サーバ(Windows Server 2012 R2)上に置いたファイルをネットワーク経由で共有、同期させる機能である。社内だけでなく、インターネットや自宅からも自由にアクセスできるようになるという、いわゆる「BYOD」を支援するための機能だ。SkyDriveのようなインターネット・ストレージ・サービスが持つファイル同期・共有と同等の機能を提供するが、商業サーバではなく自社のサーバを使って実現するので、セキュリティやコスト、ストレージ容量なども自由に設定/管理できる。現在のところワーク・フォルダのクライアントとして利用できるOSはWindows 8.1だけだが、Windows 7やスマートフォン向けクライアントの提供なども計画されている。
機能/サービス | SkyDrive | SkyDrive Pro | ワーク・フォルダ | フォルダ・リダイレクト/クライアントサイド・キャッシング |
---|---|---|---|---|
コンシューマ/個人データ | ○ | − | − | − |
個人の作業ファイル | − | ○ | ○ | ○ |
チーム/グループの作業ファイル | − | ○ | − | − |
個人のデバイス | ○ | ○ | ○ | − |
データの場所 | パブリック・クラウド | SharePoint/Office 365 | ファイル・サーバ | ファイル・サーバ |
ファイル同期ソリューション |
Windows Server 2012 R2以前でも、社外からDirectAccessやインターネットVPNなどを介して社内ファイル・サーバへアクセスできたが、その場合は、クライアントがSMBプロトコルなどを使ってサーバ上のファイルを直接読み書きしていた。これに対してワーク・フォルダでは、サーバとクライアント間でフォルダを「同期させる」ことによって共有を実現している。
クライアントでワーク・フォルダを有効にするとサーバ上にあるワーク・フォルダのコピーがローカルに作成され、以後、ユーザーはこのローカルのコピーに対して読み書きなどのアクセスを行う。そして適当な時間間隔か、あるいはシステムがアイドル状態になったときなどに、ファイルの同期サービスがサーバ上のフォルダとの同期動作を行う(新しい方のファイルを他方へコピーする)。ネットワークがオフラインの場合はローカルだけで読み書きするが、ネットワーク接続が復旧した時点で自動的に同期処理が行われるので、ネットワークの接続や切断などをユーザーが特に気にする必要はない。また複数のデバイスが同時に同じワーク・フォルダを参照していると、どこかのデバイスで更新されたファイルはまずサーバへ反映され、次いでほかのデバイスへも順次反映される。
ワーク・フォルダを利用するには、サーバとしてWindows Server 2012 R2が必要なほか、Active Directory環境も必要となる。またクライアントとサーバ間の通信はhttpsで行われるので、これを実現するためにSSLの証明書も必要となる(プライベートCA発行の証明書でも運用可能)。クライアントは現在のところWindows 8.1のみがサポートされているが、Active Directoryのメンバでなくてもよいので、Windows 8.1 Enterprise/Proだけでなく、ドメインに参加する機能のない無印エディションやWindows RT 8.1でもよい。将来はWindows 7やスマートフォン向けクライアントなども提供される予定となっている。
1台のクライアント(1人のユーザー)は1つのワーク・フォルダにしか参加できないが(複数のワーク・フォルダに同時に接続して使い分けることは原則不可)、ドメイン内に複数のワーク・フォルダ(のサーバ)を用意して、分散処理させることは可能である。上の図にあるように、インターネットからのアクセスをリバース・プロキシを使ってユーザーごとに特定のサーバへ振り分けるという運用は可能である。
ワーク・フォルダを使うにはまずWindows Server 2012 R2側で準備しなければならないが、サーバOSの解説は本連載の対象外なので、ここでは最低限のことだけを簡単にまとめておく。
まずActive Directoryドメインに参加しているWindows Server 2012 R2システムを1台用意し、「ワーク フォルダー」役割と[リモート サーバー管理ツール]機能を導入しておく(後者に含まれるIIS管理ツールは、後でhttpsの設定を行うときにあると便利なので一緒に導入しておこう)。
ワーク・フォルダ役割を導入したら、次はサーバ・マネージャのタスクで[新しい同期共有]ウィザードを起動してワーク・フォルダをセットアップする。
ウィザードの最初の画面ではワーク・フォルダとして利用するフォルダの場所を指定する。
ウィザードのこの後の画面は省略するが、ユーザーごとのサブフォルダ名をどうするか(「ユーザー名」のみにするか、「ユーザー名@ドメイン名」にしてマルチドメイン環境での衝突を避けるか)、ワーク・フォルダへのアクセスを許可するグループ(セキュリティ・グループ)の指定、ワーク・フォルダ内のデータを暗号化するかどうか、などを順次設定する。
以上でワーク・フォルダ・サービスの設定は完了だが、クライアントからはhttpsプロトコルでアクセスするため、これが正しく通るようにWebサーバ(正確にはIISの「ホスト可能な Web コア」)を設定しておく必要がある。この手順はワーク・フォルダの設定とは関係ないので省略するが、このサーバに対するWebサーバ証明書を用意して、SSLのポートにバインドしておけばよい。Webブラウザで「https://workfolders.example.jp/」のようなURLにアクセスして、警告メッセージが出ないように環境を用意する必要がある(TIPS「WebサーバにSSLの証明書が正しくインストールされているか確認する」の最初の画面のように、「この Web サイトのセキュリティ証明書には問題があります。」などと表示されていると、クライアントからワーク・フォルダへは接続できない)。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.