果たして、Windows Server 2012 Hyper-Vはどこまで使えるようになったのか?:読者の疑問をMS担当者にズバリ聞いた!
プライベートクラウドとオンプレミスを併せて運用する“ハイブリッドクラウド”が注目を集めている。今回は、ハイブリッドクラウド時代に応えるべく「Windows Azure」や「Microsoft System Center 2012」を提供し、さらに9月にはサーバ最新版「Windows Server 2012」をリリースし、対応を強化している日本マイクロソフトに話を聞いた。
2012年9月、ついに提供が開始されたマイクロソフトの新サーバOS「Windows Server 2012」。Hyper-Vの仮想化機能が大幅に強化されたほか、数多くの新機能が搭載された。先ごろ、@IT読者に対して行ったアンケート調査でも、多くの読者から高い期待が寄せられていることがうかがえた。では、実際のところ、Windows Server 2012は、本当にユーザーの期待に応えられるだけの製品に仕上がっているのだろうか?
今回、Publickey編集長の新野淳一氏が、日本マイクロソフト サーバプラットフォームビジネス本部 Windows Server製品部 マネージャー 藤本浩司氏に対して、@IT読者から寄せられた声を中心にさまざまな疑問点をぶつけ、Windows Server 2012の真の姿に迫る。
Windows Server 2012の第一の開発目標は「高品質の達成」
新野氏 今回リリースされたWindows Server 2012には、実に数多くの機能が追加されましたが、それら個々の機能についてお聞きする前に、まずは製品全体の開発コンセプトについて教えていただけますか。
藤本氏 はい。巷では、Hyper-Vによる仮想化機能の強化が大きく取り上げられているようですが、われわれが今回のWindows Server 2012のリリースで最も重視したのは、何よりも「品質」です。事前に多くのパートナー企業に入念に評価していただいたこともあり、β版の段階で既に製品版と同等の品質が達成できていましたし、その後も製品版のリリースまでにブラッシュアップを重ねてきました。従ってWindows Server 2012は、サービスパックのリリースを待つことなく、すぐに高品質なサーバプラットフォームとして導入していただける高品質な製品に仕上がったと自負しています。
それに加えて、180の新機能が加わって大幅な機能強化も行われています。特に、皆さんが注目されている仮想化に関しては大幅な機能強化が行われており、競合製品に追い付いたと考えています。むしろ一部の機能に関しては、追い越したとさえ思っています。そしてもう1つの大きなトピックが、クラウド対応です。われわれはWindows AzureやWindows Updateという巨大なクラウド基盤を運営していますが、そこで得たノウハウをサーバ製品にも組み込み、クラウドの一部として簡単に使えるようにするというのが、Windows Server 2012の開発コンセプトの1つになっています。
新野氏 なるほど。では、今回追加された新機能の中から、代表的なものを幾つか紹介していただけるでしょうか。
藤本氏 やはりユーザーの注目度が高いのは、Hyper-Vの機能強化ですね。新たに追加された「Hyper-Vレプリカ」という仮想マシンの複製機能は、災害対策のソリューションとして注目を集めています。また同じく仮想化関連では、ストレージ仮想化の機能が追加されたことも大きいですね。複数のストレージをプールする機能や、シンプロビジョニングの機能などが新たに実装されています。
新野氏 このストレージ関連の新機能は、かなりアグレッシブだと感じました。重複排除の機能までもサーバOSで実装していますから、ローエンドのストレージアプライアンス製品を食ってしまう可能性すら感じます。
藤本氏 アプライアンス製品にはサーバ製品とはまた別のメリットがありますから、これからも共存していくとは思いますが、今回Windows Server 2012でストレージ関連の機能を強化した背景には、ユーザー企業の「ファイルサーバ統合」への取り組みを積極的に支援したいという思いがあります。特に日本企業では、部門ごとにファイルサーバが散在している環境がまだまだ多いので、Windows Server 2012でそれらを簡単に集約するソリューションを提供してきたいからです。
新野氏 個人的には、ネットワーク仮想化の機能までOSに取り込んでいるところが興味深いですね。
藤本氏 そうですね。実際にこれまで、お客さまから「ハイパーバイザだけでなく、ストレージやネットワークの仮想化までを含めた仮想化基盤をセットで提供してほしい」という要望を多くいただいていましたから、今回はHyper-Vだけでなくその周辺のストレージやネットワーク仮想化技術もすべて含めてWindows Server 2012で提供できるようにしました。
注目の新機能は果たして本当に使えるのか?
新野氏 実は、今回のWindows Server 2012リリースに当たって、@ITの読者に対してアンケート調査を実施しました。その結果、Windows Server 2012の新機能の中で最も興味の高いものとして、「ライブストレージマイグレーション」「NUMA対応」「Hyper-Vのスケーラビリティ向上」「Hyper-Vレプリカ」などが挙がりました。それぞれの機能について、少し詳しく説明していただけますか。
藤本氏 ライブストレージマイグレーションについてですが、「サーバ上の仮想マシンのマイグレーションだけでなく、ストレージのマイグレーションもしたい」という要望は、実は以前から多く寄せられていました。これに応える形で、今回Windows Server 2012では新機能として追加した形になります。これで、共有ストレージ装置を導入しなくても、ストレージのマイグレーションを簡単に行えるようになります。
また「NUMA(Non-Uniform Memory Access)対応」ですが、実は現在市場に出回っているサーバ機のほとんどはNUMA機能を搭載しているのですが、必ずしもそのすべてでユーザーがNUMAのメリットを享受できるとは限りませんでした。Windows Server 2012では、NUMAの機能をHyper-V上のゲストOSからでも利用できるようになったので、Hyper-V上のSQL Server 2012などのパフォーマンスを大きく向上させることが可能です。そのため、Hyper-V上のゲストOSの、パフォーマンス向上が大いに期待できるはずです。
新野氏 Hyper-Vのスケーラビリティは、かなり向上しましたね。
藤本氏 はい。Hyper-V 2.0では仮想CPUの割り当てが最大4個だったのが、新しいHyper-Vでは一気に最大64個まで増えました。当然、それに伴ってメモリ量も大幅に増やせるようになっています。これまでは、「データベースなどの大規模アプリケーションを仮想化するには、CPU4個では心許ない」というユーザーも多かったのですが、これだけのリソースと先ほどのNUMAなども使えるようになりましたし、Active Directoryも仮想化できるようになりましたから、「もはや仮想環境に載らないものはない」と言っていいかと思いますので、Windows Serverを無制限に利用できるDatacenterがお勧めです。
新野氏 Hyper-Vレプリカも、既存ユーザーからの要望が多かった機能なのでしょうか。
藤本氏 「手間とコストを抑えて災害対策を行う方法はないのか?」という要望は、確かに多くいただいていました。従来は、災害対策のために仮想マシンの遠隔コピーを行うには大掛かりなシステムが必要だったのですが、Hyper-Vレプリカを使えばOSの機能だけでこれを手軽に実現できます。この機能は特に、中堅・中小企業のユーザーが災害対策を行う際にメリットが大きいのではないかと思います。
やはり気になる「移行パス」や「互換性」は?
新野氏 同じく@ITの読者調査では、「現在利用しているサーバOSは?」という質問に対して、最も多かった回答が「Windows Server 2003」で34%、2位が「Windows Server 2008」で30%という結果が出ました。これら旧バージョンからWindows Server 2012への移行に関しては、何らかの配慮がなされているのでしょうか。
藤本氏 Windows Server 2003をお使いの環境では、そろそろサーバ機のリプレース時期に差し掛かってきているでしょうから、移行パスは気になるところだと思います。ただ、Windows Server 2012は、Hyper-V上でWindows Server 2003の稼働をサポートしていますから、まずは仮想化環境上にWindows Server 2003のサーバ環境を集約して、その後にWindows Server 2012への移行を検討することをお勧めします。これはもちろん、Windows Server 2008環境についても同様です。今までのように、サーバOSをがらりと入れ替えることなく、そのままの環境を保持して移行・集約できるわけです。
新野氏 なるほど。それはとても合理的な考え方ですね。アプリケーションの互換性を考慮する必要もありませんからね。ただ一方で、読者調査ではWindows Server 2012導入検討時の課題として「既存ソフトウェアの互換性」を懸念する声も多く寄せられています。
藤本氏 かなり互換性は高いはずです。というのは、Windows Server 2012のカーネルは、基本的にWindows Server 2008 R2のものを継承しているからです。当然のことながら、APIも高い互換性を保っていますから、Windows Server 2008 R2上で動くアプリケーションなら、ほとんどのものはWindows Server 2012でも動くはずです。実際、パートナー企業による事前検証でも、かなり互換性が高いという評価をいただいています。
また、アプリケーション移行のための手順書や技術資料に関しても、マイクロソフト社内の互換性テストだけでなく、パートナー企業やユーザー企業による事前検証の結果も反映させた、より実践的な技術ノウハウを盛り込んだホワイトペーパーをできるだけ早い時期に公開していきたいと考えています。
新野氏 読者調査では、「Active Directoryなど既存システム環境からの移行手順/注意点」を課題として挙げる回答も多かったのですが、Active Directoryの移行に関しても順次情報を発信されていくということですね。
藤本氏 はい。年内にはきちんとした移行手順書を出したいと考えています。これも、単にマイクロソフトから情報を発信するだけでなく、パートナー企業とともにお客さまの移行作業を直接支援できるような体制を構築していく予定です。
新野氏 これまでのお話を伺っていると、Windows Server 2012のリリースに当たっては、パートナー企業との協業をかなり重要視されているようですね。既に導入支援パートナーとして50社のベンダやSIerが名乗りを上げているそうですが、今後これらパートナー企業とどのような取り組みを展開されていくのでしょうか。
藤本氏 今回手を挙げていただいた50社のパートナー企業からは、年内にWindows Server 2012のソリューションが出る予定になっています。50社の中には、主要なパートナー企業がすべて含まれていますので、年内にはかなりの数のソリューションが出揃ってくるはずです。もちろんその後も協業の幅をどんどん広げていき、2013年の早い段階までにはWindows Server 2008 R2上のソリューションは、ほぼすべてWindows Server 2012でも可能になる状態にまで持っていきたいと考えています。
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