最新のクラウドを使いやすい形で、いち早く顧客に届ける――アイネットとヴイエムウェアが創造する新たなクラウドの価値とは:顧客に最適なクラウド環境を提供するために
「Software-Defined Data Center」を掲げ、統合ハイブリッドクラウドによる顧客価値向上を図るヴイエムウェアと、ヴイエムウェアの最新技術を駆使したデータセンター/クラウドサービスを展開するアイネットがパートナーシップを強化。両社のタッグはユーザーにどのような価値をもたらすのか――アイネットの田口勉氏とヴイエムウェアの神田靖史氏に話を聞いた。
多様化するクラウドへのニーズに応えるために協業を強化
──アイネットとヴイエムウェアがパートナーシップを強化しました。その背景を教えてください。
アイネット 田口勉氏(以下、田口氏) アイネットでは2009年に竣工した次世代型データセンターにクラウドサービスのインフラ基盤を構築し、2010年からはお客さまの仮想化環境の運用支援・代行サービス「仮想化運用代行センター(Virtualization Operation Center:VOC)」や企業向けクラウドサービス「Dream Cloud」の提供を開始しています。この「Dream Cloud」の中核サービスである「EASY Cloud」(IaaS/PaaS)には、当初からヴイエムウェアの最新技術を採用してきました。
当社では、クラウドコンピューティングの実現、普及には最新の仮想化技術の活用と高度な運用の組み合わせが欠かせないと考えており、積極的に最新技術の習得やコンサルティングパートナーとしてのトレーニングに投資を行ってきました。ヴイエムウェアさんとは2010年2月に日本で初めて「VMware ソリューション コンピテンシー」を取得するなど、特に技術者育成の面で深い協業関係を築いてきました。
ヴイエムウェア 神田靖史氏(以下、神田氏) ヴイエムウェアのサービスプロバイダパートナーは、グローバルで約4200社、日本国内で約140社にも及びます。その中でも、アイネットさんは先進技術を積極的に採用しながら、エンタープライズレベルの信頼性の高いサービスを提供しているパートナーです。
ヴイエムウェアがお客さまに最適なクラウド環境としてハイブリッドクラウドを提唱し始めたのは2008年からです。当時はこれを「Your Cloud」と表現していました。アイネットさんはその頃から、当社の最新技術を積極的に採用していただき、お客さまの課題を解決し、ビジネスを加速するサービスを提供していただいています。当社では「技術や機能それだけではお客さまにとっての価値はない」と考えています。私たちが提供する技術や機能は、アイネットさんのようなパートナーが提供するサービスとなって初めて、お客さまに真の価値として提供することができます。こうした背景は、今回のパートナーシップ強化にもいえることです。
田口氏 そうですね。確かにヴイエムウェアの技術や機能を積極的に採用した当社のクラウドサービス「Dream Cloud」は、2015年8月に採用企業が1000社を超えるなど、多くのお客さまから高いご評価をいただいています。ただ、提供開始当初と比較すると、お客さまがクラウドに求める要件が多様化、複雑化してきていると思います。例えば、情報システム部門だけにとどまらず、事業部門自らのクラウド活用や、新規事業企画、対消費者へのサービス向上施策などに活用する動きも拡大しています。ミッションクリティカルなシステムをクラウド上で稼働させたいという要望も増えてきていますし、さらにはクラウドサービスゆえの即時性、柔軟性を求める声も聞こえてきます。
そうしたお客さまの新しいニーズに応えていくには、サーバ仮想化だけでなく、ネットワークやストレージまでも仮想化し、データセンター全体をソフトウェアでコントロールしていくことが必要になります。そんな中で、ヴイエムウェアさんも「Software-Defined Data Center(SDDC)」というコンセプトを推進しています。まさにこれは、「お客さまのシステムが求める要件に応じた基盤を、容易に利用できるサービスとしてお届けする」という当社の方向性とも合致しています。
- Software-Defined Data Center(SDDC)(ヴイエムウェア)
神田氏 技術や機能を顧客価値として提供するためには、アイネットさんのようなサービスプロバイダーとの協業が必要不可欠です。アイネットさんは、40年以上にわたる基幹系システムの運用経験もあります。革新的で華やかな機能やメニュー、あるいは価格だけでなく、実際のお客さまにとって最も重要な高い安全性と安心感を提供し、さらにクラウド時代に必要なスピード感も共有できるパートナーです。
ITの迅速性、効率性、収益性を大幅に向上するSDDC
──今回の協業強化の1つとして、2015年6月にアイネットがSDDCアーキテクチャを全面採用した「Next Generation EASY Cloud(NGEC)」の提供開始があります。NGECは顧客にどのようなメリットを提供するのでしょうか。
神田氏 SDDCは、サーバ仮想化によって得られたメリットをデータセンター内のネットワーク、ストレージ、そしてセキュリティに至るまで、全てのITの要素に展開していくためのアーキテクチャです。IT基盤の運用管理がハードウェアから完全に分離されることで、運用管理の自動化、ポリシーに基づくプロビジョニングが可能になります。これにより、IT基盤の俊敏性、効率性、収益性を大幅に向上させることができます。企業は自社データセンター内でSDDCを実現することで、こうしたメリットを得られるようになります。
一方、クラウドサービス事業者がSDDCを実現すると、それを利用するユーザー企業は直ちにこれをサービスとして利用することが可能となります。ユーザーはオンプレミス環境の再構築を伴わなくても、このような基盤を求めるアプリケーションから順次クラウド上に構築していくことで段階的なSDDC環境への移行が可能となります。将来的にはクラウド、オンプレミス両方の環境をSDDC化した統合ハイブリッドクラウド環境として活用することも可能になってきます。
田口氏 当社では、サーバ仮想化、ネットワーク仮想化、ストレージ仮想化のそれぞれを進めてSDDC化することで、大きなメリットが得られるようになると考えていました。具体的には、仮想マシン単位ではなくネットワーク構成やセキュリティポリシーなどを保ったまま異なるデータセンターにシステムとして移行することが可能になったり、その際にそれぞれの構成情報に関する再設定が不要になります。これによって開発、本番環境で異なるデータセンターを活用したり、あるいは災害対策の面でも即時の復旧が可能となります。また、ストレージについても、異なるデータセンター間でシステムをオンラインのままで移動できるようになります。
その結果として得られるメリットは、まず、システム移行が容易になり、運用管理コストの大幅な削減が見込めることです。また、データセンター間でのITリソースのモビリティも向上します。さらに将来的には、データセンターの完全無人化による運用管理コストの低減も視野に入ってきます。このようなデータセンターの省力化、効率化は、当社のお客さまにサービス品質や価格として反映できるものです。
神田氏 クラウドに対するニーズの多様化やミッションクリティカルシステムへの対応なども背景としてあると思いますが、その辺りはどう対応されたのですか。
田口氏 最新の「VMware vSphere 6.0」を基盤とするソリューションで提供基盤を刷新したことで、災害対策や地理的冗長化、フォールトトレラントなどの機能も提供できるようになりました。ネットワークとセキュリティは「VMware NSX」、ストレージは「VMware Virtual SAN」を活用することで、お客さまのさまざまなニーズに柔軟に応えています。
──NGECの提供開始後、顧客からはどのような声が寄せられていますか。
田口氏 まず、セキュリティや信頼性という観点で非常に高いご評価をいただいています。実際にこれらを重要視される地方自治体や公共機関のお客さまでの採用が進んでいます。また、ミッションクリティカルシステムへの対応についても、従来はUNIXなどの専用ハードウェアが必要とされていた無停止型の企業システムについて、「VMware vSphere Fault Tolerance(FT)」の大幅な機能拡張によって安心して利用できるようになりました。これらは特に、製造業を中心に採用が増えています。
加えて、広域災害に備えた定期的な遠隔地データ保管や復旧業務の提供も開始しました。特に「inet primary(首都圏)」「inet north(北海道地区)」「inet east(中部地区)」という異なる地域で稼働する3つのデータセンターを広域災害対策として利用できる点を評価していただいています。
ヴイエムウェアのSDDCアーキテクチャを全面採用したアイネットの「Next Generation EASY Cloud(NGEC)」は、複数のクラウドやマルチデータセンターに対応し、高い可用性を実現する(クリックで拡大します)
この他にも、オンプレミスで稼働していたサーバをクラウドに移行する際、ネットワーク設定を変更する必要がないことや、オンプレミスやデータセンター間で仮想マシンをオンラインのままで移行できることなどについても期待の声をいただいています。
神田氏 データセンターの管理コスト削減などにも効果は出ていますか。
田口氏 かなりの効果が現れています。インフラ管理コストは約4分の1にまで削減できています。今はその成果をお客さまへのサービス対価に徐々に反映させているところです。データセンターの管理性が高まることで、ユーザーもきめ細かい管理が可能になり、ビジネスに俊敏に対応していくことができるようになります。
新しいDaaSが“ユーザー(ID)中心のサービス”を実現する
──協業強化では、2016年5月から提供が開始された新しい仮想デスクトップサービス「VIDAAS by Horizon View」「VIDAAS by Horizon DaaS」も注目されます。今回、新しいサービスを提供する背景を教えてください。
- アイネット、仮想デスクトップサービス「VIDAAS」の新ラインアップ「VIDAAS by Horizon View」ならびに「VIDAAS by Horizon DaaS」の提供を開始(ニュースリリース)
田口氏 当社では、2011年から仮想デスクトップサービス「VIDAAS」を提供してきました。業種業界、利用規模を問わず、多くのお客さまに利用していただいています。一方、ここ数年でDaaS(Desktop as a Service)に対するニーズが変化してきていることも感じていました。
例えば、以前は1人で1台のPCを利用するというスタイルがほとんどでしたが、最近は1人がPC、タブレット、スマートフォンなど複数のデバイスを利用するケースが増えています。また、相次ぐ情報漏えいの事故を受け、情報セキュリティ対策や個人情報保護への関心はかつてないほど高まっています。大きな震災も経験し、事業継続性への意識も高くなっています。そうしたお客さまの要求を満たした上で、時間や場所にとらわれずに、業務を遂行できる環境として、新しいDaaSが提供できないか――そんなところから、今回の新しい仮想デスクトップサービス「VIDAAS by Horizon View」「VIDAAS by Horizon DaaS」の提供に至りました。
神田氏 ヴイエムウェアとしても、そうしたDaaS市場の動向には注視していました。情報漏えいやセキュリティへの対策などを主な目的としながら、今後もDaaS市場は年平均成長率で40%以上の伸びと予測する向きもあります。Windows 10への移行やモバイルデバイスの普及などもあり、これまでとは異なるDaaSへのニーズが生まれています。デスクトップからモバイルへ、デバイスに依存しない環境でアプリケーションやデータを活用できるように、「VMware Horizon」の機能改善に努めてきました。既にDaaSサービスを提供し、多くのお客さまのニーズを知るアイネットさんは、そうしたヴイエムウェアの新しい技術をお客さまの価値につなげてくれると感じました。
──これまでにもDaaSのラインアップはありましたが、今回、VMware Horizonをベースとしてサービスを拡充した理由とは何でしょうか。
田口氏 ひとつは、これまでのPCやタブレット、スマートフォンといったデバイス中心の管理サービスから、新しい“ユーザー(ID)中心のサービス”への変革が必要と考えていたことです。1人のユーザーが複数のデバイスを使う現在の環境に対応していくには、これまでとは異なるアプローチが必要です。ヴイエムウェアの「VMware Workspace ONE」をはじめとした「End User Computing(EUC)」ソリューションは、まさに私たちが考えていた狙いに合致したものだったのです。
もうひとつは、セキュリティです。セキュリティを確保するために、エンドユーザーの利用に制限をかけるのではなく、セキュリティは確保しながらも、むしろ一層コミュニケーションを加速させる方法を探していました。VMware NSXを活用したネットワークセキュリティの考え方は、サイバー攻撃や侵入後の内部拡散などへの対策を、1ランクも2ランクも押し上げるものでした。
神田氏 これまでに構築したNGECをベースにしたソリューションという見方もできますね。VMware Horizonの仮想デスクトップ環境の提供を契機に、今後「VMware AirWatch」によるモバイルデバイス/アプリケーション/コンテンツ管理などのサービスや、「VMware Identity Manager」による統合認証サービスを、SDDCのクラウド基盤であるNGECから提供いただく予定です。
田口氏 おっしゃる通りです。VIDAAS by Horizon ViewとVIDAAS by Horizon DaaSは、NGECの基盤を活用した新サービス展開の第一弾という位置付けになります。
これからも協業を深め、顧客に新しい価値を届けていく
──両社の協業は今後、ますます加速していくわけですね。両社の今後の展開と抱負をお聞かせいただけますか。
田口氏 SDDCアーキテクチャを全面採用したNGECは、企業ITを支える第三のプラットフォームとしても位置付けています。デジタルビジネスに向けて企業がトランスフォーメーションしていくことをこれからも支援し続けていきます。そのためには、今後もアーリーアダプターとして新しい技術に積極的にチャレンジし、お客さまにとってより使いやすいサービスを提供していこうと思っています。
例えば、Dockerなどのコンテナ技術についても、当社は既にVMware vSphere上で2万台のDockerコンテナを商用環境として運用しています。今後は、コンテナ型仮想化環境の「VMware Photon Platform」なども積極的に試しながら、お客さまに新しい価値をお届けします。
神田氏 クラウドは手段であって、目的ではありません。最終的にはお客さまが必要とするアプリケーションのために最適な環境を提供することであり、そのアプリケーションを利用するエンドユーザーにとって最も利便性と生産性の高い環境を提供することが大切だと考えています。当社はお客さまに最適な環境を提供し続けるためにも、今後も「One Cloud, Any Application, Any Device」というコンセプトに基づいた製品提供を行っていきます。
今後もアイネットさんとのパートナーシップをさらに強固なものにしていきます。特にアイネットさんには、国内140社のクラウドパートナーのレファレンスとなるような先進技術への取り組みとリーダーシップの発揮を期待しています。
──どうもありがとうございました。
◆「Dream Cloud Seminar 2016 in 東京ミッドタウン」開催
アイネットの「Dream Cloud Seminar 2016」では、クラウドサービス「Dream Cloud」の先進的な取り組みや、第三のプラットフォームとして稼働を開始した次世代クラウドサービス「Next Generation EASY Cloud」、5月にリリースされたばかりの仮想デスクトップサービス「VIDAAS」の新ラインアップ、ユーザー様の導入事例などをご紹介します。安全性に優れた最新ITインフラへの理解と新たなクラウドサービスのベネフィット、柔軟性、俊敏性、セキュリティ性といったクラウドによるビジネス拡大の可能性をご体感ください。
また、併催イベントといたしまして、ヴイエムウェア株式会社による「VMware Business Mobility Seminar」を開催いたします。先般3月1日に目黒雅叙園にて開催されました「VMware Conference 2016 Spring」の人気3セッションのアンコールセミナーとなります。
- I-NET Dream Cloud Seminar 2016(併催:VMware Business Mobility Seminar)
- 開催日:2016年7月5日(火)
- 会 場:東京ミッドタウン ホール&カンファレンス ホールA & B
- 参加費:無料
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:株式会社アイネット
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月19日