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育休1年、残業ゼロ――イクメン エンジニアが選んだ家庭の守り方育児は俺に任せろ!

妻のキャリアを守るために、育児全般を引き受けることを選択したパパエンジニア。「自分はイクメンという自覚はない」と言う彼が考える仕事と育児の両立とは?

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 月曜から金曜までのウイークデー、三好和馬さん(38歳)の朝は、3歳の娘の保育園登園準備から始まる。

 6:00に起床して自身の顔を洗い歯を磨いた後は、6:30に娘を起こし、朝食を準備し、着替えを手伝う。検温をし、保育園の連絡ノートに記入して、自分と娘の荷物の支度をする。7:30に家を出て、保育園に送り届けてから飯田橋の職場へ向かう。

 9:00にオフィスに入り、そこから17:30までエンジニアとして勤務。終業後、18:00前には職場を後にし、まずは一度帰宅する。

 「認証保育園なので19時まで預かってくれて、ちょっとした夕食も提供されます。なので、その間に、家で掃除と洗濯を済ませ、それからお迎えにいきます。子どもがいると、家事が進みづらいので……」

 お迎えの後、20:00ごろに帰宅する妻と家族そろっての夕食。その後、娘をお風呂に入れて、21:30〜22:00には寝かしつける。

 見事なイクメンぶりである。なぜ三好さんはイクメンになったのか。

妻が築いたキャリアを手放させたくない

 三好さんがイクメンデビューを果たしたのは2013年6月のこと。金融系企業でマネジャーを務める妻にとって、育児休業を取得することは、キャリアアップの一時中断を意味していた。

 一方の三好さんは、当時も今もリクルートスタッフィング情報サービスに所属するエンジニア。特定派遣スタッフとして顧客企業で仕事をし、プロジェクトごとに職場を変えつつキャリアを形成していくスタイルの働き方だ。

 「2人で話し合った結果、保育園が決まるまでの間、(妻のキャリアのために)私が育児休業を取る方がいいだろうということになりました」

 保育園の入園は4月。もちろん空きがあれば、4月を待たずに入ることも可能だ。転居などで空きができることもある。しかし、待機児童の問題がニュースで盛んに報じられている通り、昨今の保育園事情は厳しく、空きができてもすぐに埋まってしまう。4月に最も多くの人数を受け入れるため、入園の可能性が高いのは4月になるのだが、それでも入園希望者が殺到する認可保育園の入園は狭き門だ。

 「認可保育園は落ちることが分かっていたので早々に諦め、認証保育園を探したのですが、そちらもなかなか空きが見つからず、結局、翌年4月まで待つことになりました」

 認可保育園(認可保育所)とは、国が定めた設置基準をクリアして都道府県知事に認可された保育施設を指す。大幅な公的資金補助があり、保育料が比較的安いため、入園希望が集中しやすい。区立や市立など、自治体が設立・運営する保育園はおおむね認可保育園である。

 認可保育園の場合は、自治体ごとに異なるものの、入園希望者が多数いる場合には、就業状況や保護者の状況、世帯収入などにより入園の優先順位が定められているケースがほとんどだ。より保育園を必要としている人に利用してもらうための措置だが、そのため、夫婦ともフルタイム勤務で世帯年収の水準値が高い三好さん家族は、こと認可保育園の入園においては厳しい状況だった。

 東京都には、認可保育園の他に、認証保育園という制度がある。保育ニーズの高い東京都において保育園不足を解消するため、都独自の基準を設定し、基準をクリアした保育施設に対して、都と区市町村が補助しているものだ。民間が運営しているケースがほとんどで、延長保育や一時保育などのニーズに応えるようサービスもきめ細く設定されているものの、保育料は認可保育園に比べると高めだ。順番待ちは認可保育園ほどではないものの、それでも空けばすぐ定員が埋まるという状況は変わらない。

 何とか翌年4月の認証保育園への入園を果たした三好さんだが、育児休業から即復帰というわけにはいかなかった。

 「入園してすぐは『慣らし保育』の期間があり、フルタイムでは働けません。5月に復帰できそうな旨を会社に伝えたところ、『それなら切りのいい6月まで育児休業を続けた方がいい』と言われ、結局、丸1年、きっちり育児休業を取得しました」

 慣らし保育の期間は、保育園によっても異なるが、「2時間×3日間」「3時間×3日間」「6時間×3日間」というように、段階的に保育時間を長くしていく。その間は、預けた2時間後、3時間後に迎えに行かなければならず、フルタイムワークは難しい。

 三好さんが育児休業から復帰したのは2014年7月だった。

保育園が見つかればそれでOKではない!

 復帰後最初の職場は、オンサイトでの保守業務を担当するCE(カスタマーエンジニア)の部署だった。

 「私は主に内部調整を担当しました」

 外回りの業務を担当しなかったのは、急なお迎えに対応できるようにするためだった。保育園に通い始めれば、それで全てOKというわけではない。急な発熱などで保育園から連絡があれば、仕事を切り上げ、お迎えに行かなければならない。特に入園当初は、初めて多数の子どもたちと接触するため、免疫のない乳幼児はちょっとした感染症にもかかりやすい。

 「急にお迎えにいかなければならない可能性があることを会社に伝え、顧客企業の担当者にも伝えてもらいました。幸い、職場に育児中の女性が2人勤務していたので、『困ったときはお互いさま』という雰囲気があり、助かりました」

 特定の感染症にかかった場合、完治しても、医師による登園許可がおりるまでの数日間、登園できないケースがある。インフルエンザやウイルス性胃腸炎、手足口病などがその典型的なケースだ。

 「そういう場合は、数日間連続して自宅で子どもの面倒を見なければならないので、妻と相談し、交代で休むようにしています」

 こうした状況では、家族間での連携が欠かせないのである。

「育児をしている」という自覚がないのが成功の秘訣?

 こうしてイクメンデビューを果たした三好さんは、2015年12月に復帰後最初の職場を離れることになり、独身のころに派遣されていた職場に配属された。

 2016年1月からの仕事は、顧客企業業務システム部での社内SE(システムエンジニア)。基幹系システムの新設や移設などの処理を行っている。

 職場は飯田橋。実は三好さんにとって勤務地は重要な要素だった。保育園に娘を送り届けてから出勤して間に合う場所、退社後19:00までにお迎えにいける場所でなければならない。飯田橋は自宅に近く、三好さんにとって好立地だったのだ。

 しかも以前に勤務していた職場で、当時リーダーを勤めていたこともあり、仕事の内容も、職場の雰囲気もよく分かっている。一緒に働く部署の人も三好さんの状況を把握し、残業しない働き方を理解している。

 三好さんのイクメンライフが安定軌道に乗り始めた。

 そんな三好さんに、育児についての苦労を尋ねると、意外な答えが返ってきた。

 「よく、周囲からイクメンといわれるのですが、自分ではその自覚はありません。毎朝の登園準備も、保育園への送り迎えも、日々の習慣の一部に組み込んでしまえば、特別に『育児をしている』という感覚はなくなります」

 確かに、起床して顔を洗い、歯を磨く毎朝の習慣に対して、いちいち出勤準備をしているという特別な意識は持たない。三好さんは、そうした当たり前の行動に娘の登園準備を組み込んでいるのだ。保育園への送り迎えも、三好さんにとっては毎日行う習慣の1つとなっている。

 本物のイクメンとは、育児に参加していることをこれ見よがしに周囲にアピールする人ではなく、三好さんのように、日常の一部に組み込み、ごく自然にこなす人のことなのだ。そういう意味で、三好さんは『本物のイクメン』と呼ぶにふさわしいだろう。

イクメンになり寛容な性格に

 育児をするようになって、三好さん自身に変わった部分はあるのだろうか?

 「子どもができる前は、どちらかというと好戦的な性格でした(笑)。職場でも、理不尽なことがあれば、すぐにかみつくタイプでした。しかし、育児をするようになってからは、寛容になった気がします。心にバッファができたといえるでしょうか。子どもがぐずっているからといって、理詰めでどうこういっても仕方がありません。0〜1歳のころはそもそも言葉も通じませんし、寛容にならざるを得なかったのかもしれません」

 かつては職場の保守的な人たちと衝突することも珍しくなかった三好さんだが、最近ではそうした人たちの気持ちが理解できるようになってきたという。育児をするうちに、三好さんの仕事に対する考え方も少しずつ変わり始めているのかもしれない。

 定時で退社するために、就業時間内の時間の使い方も意識するようになった。育児休業中に実践してきた、1つ1つのアクションを「タスク」と考え、段取りを考えて効率的に行う習慣は、仕事でも生きているという。

 「いかに効率的にこなすか。育児も仕事もその観点で考えるようになりました」

 娘が成長するにつれ、育児による仕事選びの制約も次第に少なくなっていくだろう。そのとき三好さんは、どのような基準で仕事を選んでいくのだろうか。

 「まだまだ先のことなのでハッキリと定まっているわけではありませんが、ハードウェアもソフトウェアも好きなので、最新の機材と最新のソフトウェア技術に触れられるような仕事を選んでいきたいと考えています」

 一億総活躍の構想が実現すれば、三好さんのようなイクメンも珍しい存在ではなくなるのかもしれない。リクルートスタッフィング情報サービスが傘下に入っているリクルートホールディングスの「iction! (イクション)」は、育児と仕事の両立を応援するプロジェクトだ。三好さんが1年間の育児休業を取得したり、残業をせずに働くワークスタイルを貫けたりするのも、会社や同僚にイクションの理念が浸透しており、職場の理解と支援があってこそだ。

 育児や介護、勉強との両立など、仕事とライフのバランスが一時的に変わる時期が訪れることは、ままあることだ。そういうときに、職場や社会が多様な働き方を認め、キャリアを諦めることなく働き続けるビジネスパーソンが、今後もっと増えてくるだろう。


提供:株式会社リクルートスタッフィング
アイティメディア営業企画/制作:@IT自分戦略研究所 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月30日

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