ペルソナとシナリオを用いたソフトウェア開発──体感編ユーザビリティ研究会より(3)(1/2 ページ)

2005年1月28日(金)、第3回 ユーザビリティ研究会が@ITセミナールームで行われた。今回の目的は、ペルソナ/シナリオ法をワークショップ形式で体感すること。24名の参加があった。

» 2005年02月22日 12時00分 公開
[生井俊,@IT]

ペルソナ/シナリオ法の基本

Speaker

株式会社アプレッソ 代表取締役副社長 CTO

小野和俊氏

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)環境情報学部卒業後、サン・マイクロシステムズ株式会社にてJava、XML関連の技術を担当。2000年にはSun Microsystems,Inc(米国本社)にてサイジング自動化ツール「Tahoe」を開発。現在、株式会社アプレッソ代表取締役副社長CTOとしてデータ連携プラットフォーム「DataSpider」を開発。



 まず、講師の小野和俊氏がペルソナ/シナリオ法について簡単に説明した。

 ペルソナについて、「ペルソナ=アクター+生活感のある個人情報」という式を提示。アクターだけではユーザーよりも機能中心になってしまうと指摘し、会社のポジションや個人のプロフィール、スキルセットなどを盛り込んだ個人情報の必要性をあらためて説いた。

 シナリオはいわば「ペルソナの日記」のようなもので、時間経過を含めペルソナの行動を細かに記載していく。このようにしてペルソナとシナリオを設定するのは、生身に限りなく近い仮想ユーザーを作り上げることでユーザーへの感情移入が促進されるからだ。そのことが操作デザインに反映され、ユーザビリティに優れた商品開発へ結び付く。

ワークショップではシナリオを作成

 続いて、ワークショップで使用する主要ペルソナ・神尾みかさんのプロフィールと、交通費計算ツールのシナリオ「みかさんの交通費精算日記」の説明があった。

 まず、小野氏があらかじめ作成した2005年1月5日と6日のシナリオを紹介。それを参考に、ワークショップでは、1月25日のシナリオとポイント、31日のポイントを作成することとなった。

ALT 会場で配られた「シナリオ:みかさんの交通費精算日記」の一部

グループに分かれ情報の補充、精査を行う

 ワークショップでは参加者3、4名でグループを組み、1月5日、6日のシナリオの読み込み、そして25日、31日ですべき作業の洗い出しを行っていた。

ALT ワークショップの様子

 1月5日のシナリオのポイントは、経費精算の徹底管理により月末を過ぎた経費精算が一切認められなくなること。ここでは、経費精算、特に交通費計算のスピードアップが求められていることが読み取れる。

 1月6日のシナリオのポイントは、Webアプリ使用による不満があること。戻りの解消や効率化、単純作業をより簡略化することがキーになる。

 これらを参考に1月25日と31日のシナリオ作成に取り組むのだが、あまりに前提条件が少なく、参加者の戸惑いの声があちこちから上がる。小野氏は傍観することに徹し、にこにこするのみ。程なくして、参加者は少ない情報を補うことと疑問点をクリアしていく作業を始め、グループでの議論も熱を帯びてきた。

 あるグループは、まず各自でシナリオを書き、それを発表し合う形式を取っていた。ほかのグループでは、よく行く場所が優先的に出る路線検索システムができるか、一部に定期券を持つ区間を乗車した場合はどうするか、などさまざまな場面を出し合い、それを基にシナリオを作成していた。

 参加者の多くは実際にこのようなプロジェクトに参加しており、アイデアをポストイットに書き留めそれをぺたぺたと机に張る人、アイデアをツリー形式に書き込んだり、やるべき作業をフローチャートにまとめる人がいるなど、得意な手法を使いながら情報の追加と整理を行っていた。

 ワークショップが残り20分になったところで、「画面デザインまでやると時間がなくなりますよ」と小野氏の声が飛ぶ。慌てて、1月31日のポイントの洗い出しを始めるグループがいくつかあった。

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