中国人ブリッジSEの意外な落とし穴オフショア開発時代の「開発コーディネータ」(14)(1/3 ページ)

中国オフショア開発において、日本語が堪能で日本の商習慣にも明るい中国人ブリッジSEの存在は頼もしい。しかし実際には、ブリッジSEとしての要件を完ぺきに備えていると思われる人物でも、上手に現地スタッフを管理できないことが多い。中国オフショア開発を円滑に進めることができる中国人ブリッジSEの条件とはどのようなものだろうか。考えてみる。

» 2005年11月01日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]

 日本語が堪能で日本の商慣習に明るい中国人であっても、実際のオフショア開発では苦労する場面が絶えない。優秀だと思っていたブリッジSEが、中国ベンダと大声でけんかする姿を目の当たりにすると、周りの日本人はつい動揺してしまうものです。

 ところが、中国企業で働いた経験のない中国人ブリッジSEは、最初のうちは中国の現地メンバーとなかなか意思の疎通が図れません。経験の浅い技術者をブリッジSEとして採用する際には、同じ中国人同士であっても、入念に異文化コミュニケーションの基礎を作りたいものです。

 日本の商慣習に明るい中国人ブリッジSEであれば、時間が経過するにつれて、中国側への影響力も徐々に増してくるはずだからです。

日本を知り尽くした中国人ブリッジSEの落とし穴

 現在でも、多くの中国オフショア開発で活躍するブリッジSE。その名のとおり、両国の橋渡し役が期待されるオフショア開発では最も大切な人材です。今回は、中国人のブリッジSEに求められる条件を考えてみます。

 当然、中国人のブリッジSEに求められる第1の条件は「日本語ができる」ことです。そして、第2の条件は「両国のビジネス慣習を理解している」ことです。日本語が話せることと、日本文化を理解していることは、似て非なる能力なのです。

 日本に住む中国人は10万人強ともいわれていますが、その中には、日本的感覚を熟知するSEも少なからず存在します。ところが、実際にオフショア開発の現場に入ると、日本的感覚を熟知したSEがいるのにもかかわらず、苦労することがあるのです。

 その理由の1つとして、「日本国内の中国人ブリッジSEは、意外にも中国事情に疎い」という事情が挙げられます。ブリッジSEの要件について、筆者が主宰しているオフショア開発メールマガジンで議論したところ、かなり大勢の読者から反響をいただきました。真っ先に届いたご意見を紹介します。

-----Original Message-----

こんにちは、○○○です。

いつもオフショア開発専門マガジンを拝見しています。また、上海で何回かお会いしています。ありがとうございます。

メールマガジン「中国ビジネス入門〜日本を熟知したブリッジSEの落とし穴」を見ましたが、さらに原因を検討する必要があると感じました。

個人的な考えですが、「日本標準」で選ばれたブリッジSEが中国事情に疎いのは当然です。日本語ができることは、ブリッジSEにとって必要条件ではありますが、十分条件ではありません。中国人開発者を管理できるかどうかも、非常に重要な条件になると思います。

(上海の日系企業に勤める中国人マネージャ)

-----Original Message-----

 いつも、ご意見をありがとうございます。現場の視点から、ブリッジSEを定義していますね。筆者も的確な意見だと思います。

「ブリッジSEが機能しないのは、日本企業の選択基準が悪いから!」

 という意見は、経験に基づく爽快な主張だと思います。中国をよく知らない日本人マネージャには、人材調達に際して、以下のような“ある種の思い込み”がみられるようです。

「あなたは中国人なのだから、中国の開発者を管理できて当たり前でしょう」

 思わずニヤリと笑った読者もいるでしょう。失敗するオフショア開発の現場では、このような、お決まりの思考パターンがはんらんしているのです。

 前出の日本人マネージャはお気の毒ですが、これは大いなる勘違いです。だから、日本人から見て“優秀”な中国人が担当するオフショア開発が失敗するのです。心当たりのある人もない人も、いま一度自社のブリッジSEの選定基準を見直してみましょう。

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