この1年、EIP(企業情報ポータル)構築ツールは急速に増え始め、現在では各ベンダから40種近くのEIP構築ツールが提供されるまでになった。そして大手企業を中心にEIP導入は加速している。ベンダのEIP構築ツールを概観すると、それぞれのベンダのバックグランドや持ち味を活かした内容になっているのが大きな特徴だ。さらに、ベンダ同士でアライアンスを組み、相互補完することによってEIPソリューションをより高めようとする傾向も見られる
前回、EIPを表示・検索型、統合型、業務型、コラボレーション型の4つに分類した。これはEIP構築ツールから見た分類でもあるのだが、こうしたEIP構築ツールは、それらを提供しているベンダのバックグランド、言わば“血筋”のようなものを背景にしている。
例えば日本IBMのWebSphereやIBM Content Manager Multiplatformは、DB2をはじめとする日本IBMの中核となるソフトウェアをファミリー化しているといった具合だ。マイクロソフトのデジタルダッシュボードも、Office2000や BackOfficeといったマイクロソフトの中核となる製品を組み合わせたEIPソリューションである。それぞれの持ち味を活かせるという意味で、これは当然の帰結であり、EIPを導入する企業はこうした点を理解し、選択する際の判断基準とすべきであろう。
表示・検索型のEIP構築ツールは種類が豊富だ。このタイプの代表的なEIP構築ソリューションとして、ロータスのKnowledge Navigatorがある。これはドミノの機能を活用し、ドミノと組み合せて利用するEIP構築用のテンプレートとドキュメントで、シングルサインオンは他社と連携、アクセス管理や検索はドミノと連携して機能を活用するといった内容になっている。
統合型の代表的なEIP構築ツールは、先に紹介した日本IBMのWebSphereやIBM Content Manager Multiplatformがある。 WebSphereソフトウェア・プラットフォームはファウンデーション、 Webアプリケーションの基本サービスおよびインテグレーション、e-ビジネス・アプリケーションの基礎となる機能を提供しており、あらゆる種類のトランザクション処理、既存ビジネス・データおよびアプリケーションのインターネットへの拡張、さらに35以上の異なるプラットフォーム上のアプリケーション間統合を実現している。「あらゆるサイズのフレキシブルなeビジネス・アプリケーションを統合・開発・実行する環境を提供する」というのが、日本IBMのEIPの戦略である。
ナレッジマネジメントの実現を目指したEIPがマイクロソフトの「デジタルダッシュボード」である。 これもKnowledge Navigator同様に、“製品”ではなくて、マイクロソフトの Office2000や BackOfficeなどの製品を組み合わせたソリューション。企業経営やナレッジワーカー(社員)の生産性向上が企業価値や競争力を高めていくというのがデジタルダッシュボードの考え方で、「それができる企業は競争優位に立つだけではなく,株主からの期待や市場の評価でも非常に有利なポジションを得ることができる。逆に、できない企業は苦戦を強いられることになる」とマイクロソフトは考えている。
デジタルダッシュボードは、ナレッジマネジメントの中でも特に重要な位置付けとなる「ナレッジワーカー」に対して、業務を遂行する上で必要な情報をどのように提供するのが効果的であるかを提示し、「情報を必要とする人が、容易にそれらの情報を入手できる環境」を提供することによって、さまざまなメリットを得ることができる。またマイクロソフトは、 Microsoft SharePoint Portal Serverによって価値ある情報の共有、検索を、カスタマイズ可能なポータルを通して実現するとしている。
いま、コラボレーション型のEIPはとくに重要視されており、こうしたEIP構築ツールもまたこれから注目されていくことになろう。
■表示・検索型 | |
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ActiveGlobe BusinessPortal | NEC |
コーポレートgoo | NTT-X |
EasyPortal | 大塚商会 |
CleverPath Portal Release 3.5 | コンピュータ・アソシエイツ |
OptimalView | 日本コンピュウェア |
Plumtree Corporate Portal | プラムツリー ソフトウェア |
Knowledge Navigator | ロータス |
■統合型 | |
iPlanet Portal Server | iPlanet |
StarOffice21 | NEC |
WonderPortlet | NTTデータポケット |
IONA iPortal Suite | アイオナ・テクノロジー |
Oracle 9i/Application Server Potal | オラクル |
BEA WebLogic Portal | 日本BEAシステムズ |
WebSphere Portal Server | 日本IBM |
Viador E-Portal Suite日本語版 | ビーエスアイ |
Cosminexus Portal Framework | 日立製作所 |
INTERSTAGE PortalWorks | 富士通 |
Yahoo!ポータルソリューション | ヤフー |
■コラボレーション型 | |
mySAPエンタープライズ・ポータル | SAP |
Enterprise Potal | サイベース |
POWER EGG | ディサークル |
INSUITER One | ドリーム・アーツ |
INSUITER enterprise | ドリーム・アーツ |
BroadVision InfoExchange Portal | 日本ブロードビジョン |
Hummingbird Enterprise Information Portal | ハミングバード |
デジタルダッシュボード (SharePoint Portal Server) |
マイクロソフト |
■ASP/アウトソーシング | |
VPOナレッジポータル | 富士通 |
B-Front | 富士通 |
日高 俊明(ひだか としあき)
1952年1月生まれ、長崎県出身。OA、コンピュータ関連の雑誌、新聞記者を経て1987年からフリー。コンピュータ、科学技術関連、経営関連雑誌などに多数寄稿。著書:『ソフトウォーズ!』『続ソフトウォーズ!』(以上、コンピュータ・ニュース社)、『オラクルマスター・オフィシャルガイド』(IDGジャパン)、『VR革命』(オーム社)編著:『AIビジネスの布石』(コンピュータ・ニュース社)、『開放特許で儲ける法』(日本実業出版社)
メールアドレスはhidaka27@mb.infoweb.ne.jp
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