読者調査結果発表〜いま解決すべきビジネス課題と求められるITソリューションとは?〜Business Computing(3)

» 2003年01月25日 12時00分 公開
[小柴豊,@IT]

 IT不況の実態はハードウェア不況。これからはソリューション・ベンダをめざす──2001年度の決算が出そろった昨春、多くのベンダから異口同音に聞かれたセリフだ。しかしその半年後には、早くもその前途に暗雲が漂い始めた。ITソリューションの中核を担う受注ソフトウェア開発業(SI含む)の売上高が、2002年7月を境に前年割れを続けているからだ(経済産業省「特定サービス産業動態統計」平成14年11月分より)。

 果たしてITソリューション市場も、このまま不況の波にのまれてしまうのだろうか? Business Computing フォーラムが実施した第3回読者調査から、ソリューション・ニーズの現状を探ってみよう。

経営/組織面の“旧くて新しい”課題

 ソリューションの需要性を調査するにあたって、今回は “CRM” “ERP” といったIT分野別の投資意向ではなく、読者が関わるビジネス現場で「現在解決が急務となっている課題」を明らかにするアプローチを取った。3文字略語の魅力度よりも、事業遂行上の問題意識の中にこそ、ソリューション・ニーズの本質があると考えたからだ。

 まず「経営/組織」の観点から、現在のビジネス課題を聞いたところ、「ビジネスプロセス/業務フローの効率化」「社内外に分散した情報/知識の共有と管理」および「環境変化に対応する柔軟な組織/情報システム作り」の優先度が高いことが分った(グラフ1)。

グラフ1 解決急務なビジネス課題【経営/組織面】(複数回答 n=336)

 「業務フロー改革」や「情報/知識共有」については、1990年代半ば以降、グループウェア/ナレッジマネジメント/EIPといった各種ソリューション・メニューが提供されてきた。にも関わらず、これらは未だに多くの企業で課題として残されているようだ。最近のグループウェア製品を見ると、インスタント・メッセージング(IM)やeラーニングなどを統合する多機能化が進んでいるが、逆にこうした基本ニーズの充足に立ち返った解決こそ、多くのユーザーに望まれるのではないだろうか。

 一方「柔軟な組織/システム作り」は、変化の激しい今日のビジネス環境に相応しい課題だ。思えば、Webサービス/Agileプロセス/グリッド・コンピューティングなどの最新技術は、すべて“変化への対応”という共通目的を持っている。しかしいくらシステムが柔軟になっても、それを活用する組織が硬直化していたら、宝の持ち腐れで終わってしまうだろう。これからのソリューション・ベンダには、システム構築と同時に顧客の経営/組織をも変えていく力が必要になりそうだ。

事業活動面:“顧客の顧客”を見よ

 次に、企業の本業である事業活動面の課題を見てみよう。ここでは「顧客満足度の向上/顧客との関係強化」の優先度合いが、他を引き離して高く挙げられた(グラフ2)。ITソリューション的には「CRM」が該当するテーマだが、この突出ぶりを見ると、ツール導入だけで解決できる課題ではなさそうだ。ソリューション・ベンダには、“顧客の顧客”が現在何を求めているか把握し、その満足度を最大化するような解決策を提案する姿勢が求められるだろう。

グラフ2 解決急務なビジネス課題【事業活動面】(複数回答 n=336)

 

システムインフラはコスト優先……だけではダメ

 続いてシステムインフラ面の課題を聞いた結果が、グラフ3だ。経済環境の影響か「情報システム管理の効率化とコスト削減」や「オープン技術による基幹システム構築/再構築」が重視されていることに加え、「情報セキュリティ管理の強化」のポイントが高いのが特徴だ。ウイルス感染/情報漏洩などの事態が、ビジネス遂行上クリティカルな意味を持つようになった状況が表れているようだ。ベンダとしてはむやみに最低コストを追うよりも、“値ごろ感がありつつセキュリティで差別化を図る”提案が有効と思われる。

グラフ3 解決急務なビジネス課題【システムインフラ】 (複数回答 n=336)

 ここまで見てきたように、企業のビジネス課題解決ニーズは、決して衰えたわけではない。提案内容や方法によっては、ITソリューション導入が進む余地は充分にありそうだ。後半では、今後のソリューション導入に向けて、どのような取り組みが有効であるのか考えていこう。

 

今後のITソリューション導入形態:パッケージ+カスタマイズが主流

 まず今後主流となるソリューションの導入スタイルについて、主に独自開発とパッケージ導入を比較して尋ねたところ、読者に最も支持されたのは「特定用途向けパッケージを導入し、カスタマイズを施す」形態だった(グラフ4)。「導入先のビジネスプロセスや要件に合わせて、独自に開発する」との回答も2割を超えてはいるが、変化の時代に求められる短期開発に応えるためには、パッケージの有効活用を進める必要が強まりそうだ。

グラフ4 今後主流になるITソリューション導入形態(n=336)

いま選ばれるベンダの条件:コスト/柔軟性/スピード

 ではITソリューションを構築するベンダの選択にあたって、現在どのような要素が重視されているのだろうか? 最後にその要件を聞いた結果、「システム構築費用が安いこと」、「要求/仕様変更への柔軟な対応」および「システム構築が迅速であること」がトップ3となった(グラフ5)。

 ここで注目すべきは、グラフ1で見たユーザー企業のビジネス課題(環境変化に対応する柔軟な組織/情報システム作り)と、ベンダに求められる要件(要求/仕様変更への柔軟な対応)が一致することだ。自身変化への対応に迫られているユーザーが、ベンダに柔軟な対応を求めるのも、無理はないだろう。ここでソリューション・ベンダにお勤めの方は、自問してみて欲しい。あなたの会社は顧客の要求変化に対応できているだろうか?

充分に迅速だろうか? 答えがNoなら……まず自社へのソリューション提案を検討すべきかもしれない。

グラフ5 ソリューションベンダー選択時の重視点(n=336:3つまでの複数回答)

調査概要調査概要

  • 調査方法:Business Computing フォーラムからリンクした Webアンケート
  • 調査期間:2002年11月11日〜12月6日
  • 回答数:394件(うちシステム導入関与者336件を集計)

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