なぜ、ビジネスモデリングなのか?実践! UMLビジネスモデリング(1)(1/2 ページ)

ビジネスの世界で「見える化」という言葉を頻繁に耳にするようになった。一方、ソフトウェア開発の世界では、昔からプログラミングの前にビジュアルなスケッチを作ることが強く推奨されてきた。この交点にある「ビジネスモデリング」に関する基本的な考え方と具体的な取り組み方を、7回にわたって解説していく。

» 2007年04月23日 12時00分 公開
[内田功志,システムビューロ]

 「見える化」が求められています。従来、システム開発の分野では事業や業務(そしてその写像としてのシステム)を記述するためにビジネスモデリングを行ってきました。近年、ビジネスの領域でもビジネスモデリングの考え方を取り入れた経営手法などが提唱されています。

 私たちはビジネスとITシステムの2つの領域をブリッジする「(4+1)×1ビュー」という技法を推進しています。これはビジネスに必要なシステムを見つけだし、ビジネスをより活性化させるという観点から、ビジネスを見える化するというものです。

 本連載は、この考え方を解説した「戦略マップによるビジネスモデリング」(翔泳社、2007年6月刊行予定)の内容をベースにして、そこでは書き切れなかったことを中心に、ビジネスモデリングの方法を紹介していくものです。書籍とは補完し合う関係になりますので、ぜひ書籍も参照してください。

 また、2007年2月に開催されたデブサミ2007でも共著者である株式会社 豆蔵の羽生田氏と講演形式で説明しています。その模様は@IT情報マネジメントの記事「見えるビジネスモデリング」でも紹介されています。こちらも参考にしてください。

なぜ、「見える化」が必要なのか?

 ビジネスを見える化する、つまり視覚化する目的はさまざまです。

 新規ビジネスを立ち上げるときに、そのビジネスの仕組みや狙いをともに働く事業参加者と共有して意識合わせをするため、ということもあるでしょう。また既存のビジネスを見える化して、多くの人々にそのもうかる仕組みを理解してもらい、賛同を得て資金を調達したり、フランチャイズを展開したりすることもあるでしょう。はたまた決して好調とはいえないビジネスを見直して、システムも含めたイノベーションを行うためということもあるでしょう。

 それ以外にもビジネスを見える化する必要性は多岐にわたります。しかし目的がどうであろうと、どのようなビジネスなのかを分かりやすく表現したいということに変わりはありません。多くの人々が見て「ああ、こんなビジネスなのか」と、理解できることが最も重要です。

 もちろん言葉で表すこともできるでしょう。しかし言葉の場合、聞く人によって別々の解釈が生まれてしまうことが珍しくありません(そのため、専門用語や業界用語が生まれます)。話し手が意味を限定したり、聞き手との間で前提となる共通了解が作られていない限り、イメージにバラツキが生じることは必至です。

 それに対して、図や表で見える化できれば、情報の受け手の自分勝手な余計なイメージを払拭(ふっしょく)して、ストレートにビジネスのありさまを伝えることができるはずです。まさに「百聞は一見に如(し)かず」です。

 いわゆるシステム開発の分野でも、“ビジネスの見える化”は重要です。大規模な全社統合システムや、企業をまたがったシステムが増えており、ビジネスのありさまを無視してシステムを開発したり、利用したりすることができなくなっているからです。

 さてここでお断りですが、本連載はこのようなシステム化ありきのビジネスモデリングに焦点を当てています。従って表記法としては、最近ではシステム作りで当たり前になりつつあるUML(Unified Modeling Language)を利用します。モデリング手法はRUP(Rational Unified Process:IBM)をベースに、カスタマイズをしてシステム開発現場で使えるようにしたものです。

何を「見える化」するのか?

 では、どのようなものを見える化すれば、「ビジネスを表現した」ことになるのでしょうか? 一般にビジネスの流れ、すなわちワークフローを記述すればビジネスを表現できると考えられている節が強いのですが、流れだけでは決して十分とはいえません。

 実際には、「ビジネスがそのように流れるためには、組織はどんな構造になっていなければならないか?」とか、「組織やその構成員の役割をどうすべきか?」とか、そもそも「流れにはどのようなものがあるのか?」とか、見えない(ビジネスの現場で暗黙知となっている)ルールや約束事が多々あって、ビジネスが成り立っているのです。「見える化」という以上は、それらも見えるようにしなければなりません。こう考えれば、見える化しなければならないものが1種類ではないことが分かるでしょう。

 どのように視覚化すればビジネスが見えるようになるのか──。その視点や切り口は、この連載の中でおいおい解説していきますが、まず大前提となる切り口として、“全体と部分”があります。

 ビジネスを俯瞰(ふかん)的に見ることができれば、ビジネスの全体像をとらえることができるはずです。全体をしっかり把握して部分相互の関係を知り、それからその1つ1つを詳細に見ていきます。つまり、「鳥の目」「虫の目」を使い分けるのです。

ALT 図1 「鳥の目」による視界(bird's-eye view)と「虫の目」による視界(worm's-eye view)
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