鍵はリーダーの力量と気になるお姉さまの魅力(第4話)目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(4)(1/4 ページ)

» 2007年02月28日 12時00分 公開
[三木裕美子(シスアド達人倶楽部),@IT]

第3回までのあらすじ

「新生産管理システム構築プロジェクト」担当となった坂口。まず現状の課題を把握するために各部署のヒアリングを計画したものの、部門長の反応は冷たく落ち込むのだった。しかし、豊若との会話の中であらためて現場の重要性を思い知り、決意を新たにヒアリングを実施。予想以上の反響にやりがいを感じていた……。



課題整理のテクニックとは?

伊東 「すごい数になりましたねぇ」

坂口 「そうだな。まぁ、それだけいまのシステムにみんな満足していないってことだ」

 ここは、東京の汐留にあるサンドラフトビールの本社。

 「新生産管理システム構築プロジェクト」のスタートに当たり、坂口と伊東は各部署へのヒアリングをこなしていた。その結果、用意した課題整理シートは100枚以上に上り、2人はこれらの整理を始めようとしていた。

伊東 「しかしこれ、どうやって整理すればいいんですか? 2人じゃとてもできませんよ……」

坂口 「うん。まずは内容をカテゴライズして、課題が集中している業務やサービス、システムのエリアを見てみよう」

伊東 「へ、エリアですか?」

坂口 「そう。どの部分に課題や問題が多いのかを把握する。それが終わったらメリット/デメリットやリスクなどを考慮して優先順位付けだ。もっとも、この部分は俺たちだけではなくて、各部署の協力が必要になるけどね」

伊東 「はぁ……。メリット、デメリット、リスク、ですかぁ……」

坂口 「伊東君も買い物をするときは、自分の懐具合とか欲しい程度とかあれこれ考えるだろ? それと同じさ」

 坂口はこういって笑ったが、伊東はクエスチョンマークが顔に書かれたような情けない表情だ。

 そんな伊東に坂口は1時間ほどかけて、整理の方法や考え方をレクチャーし終えると「とにかく、まずは各シートの課題を一覧にして、部署やシステム、業務で区分してまとめておくように」といい残して席を立ってしまった。

伊東 「(うーん、困ったなぁ……。坂口さんはあぁいったけど。まぁでも、やるしかないよな……)」

 伊東はパソコンの画面に向かい、課題整理シートの整理に着手した……。

チッ!

 舌打ちをしながらぶぜんとした表情で受話器を置いたのは、情報システム部主任の八島だ。

 18階の情報システム部はいつもと変わらぬ光景だった。

 フロアの半分以上は空席で、在席しているメンバーもパソコンの画面に向かって黙々とキーボードを打っている。

 八島の電話の相手は情報システム部長だった。

 「プロジェクトに対して情報システム部は積極的な協力をすること」とし、八島には「その取りまとめとしてマネジメントをするように」との指示だった。しかも指示は、CIOでありIT企画部長である佐藤専務からの直々の要請であることも伝えられた。納得のいかない八島だったが、部長の業務命令と強い口調にはサラリーマンとしても、しぶしぶ承諾せざるを得なかった。

八島 「(まったく……。坂口とかいうやつ、本当に面倒なことしてくれるよなぁ)」

 伊東へのレクチャーの後、坂口が情報システムの現状把握に関する打ち合わせのために主任の八島の元を訪れたのは、ちょうど八島が電話を終えた直後だった。

坂口 「八島主任、今日は現行システムのヒアリングの件で伺いました」

八島 「あぁ、その件ならメンバーに適当に声を掛けてっていったはずだけど」

坂口 「えぇ。ですので、今日はその基礎資料として現行システムの構成図と担当者の情報をいただきに来たんです」

 「仕方ないなぁ」といいつつ、八島は内線電話を取り上げどこかに電話をかけた。そして二言三言、電話の相手に告げると、坂口に向き直った。

八島 「生産管理システムと営業支援システムの担当者、いまからここに来るから。あ、でも僕はこれから会議でいないから、2人に適当に話聞いといてよ」

坂口 「ありがとうございます。あ、そうそう。先日、うちの伊東がリサーチした『RFIDを用いたシステムを導入している他社事例』です。可能であれば実際にシステムを見せていただこうと思っています。八島主任もぜひご同行していただけないでしょうか?」

八島 「他社っていっても、うちとは違う業種だろ。あまり参考にはならないとは思うけどなぁ……。まぁ、一応考えとくよ」

 あまり興味のない表情で八島は部屋を出ていった。

 そして、しばらくして2名のメンバーが坂口の元にやって来た。

 生産管理システム担当の谷橋章介と、営業支援システム担当の小田切要だ。ミーティングデスクに資料を広げ、現状のシステムについて説明を始めたが、慌てて準備したせいか説明は通り一遍の内容で、すぐに終わってしまった。

坂口 「ユーザー部門に現状のヒアリングを実施した中で、ほかのシステムや部署の連携が悪いという声が多数あったのですけど、それについてはどう認識していますか?」

谷橋 「どう……、といわれてもなぁ。私の担当する生産管理システムのユーザーは、製造部門と配送センターがメインで、他部署の方と話をすることはほとんどないから」

小田切 「営業支援システムもそうですよ。営業部や営業企画部とは打ち合わせしますけどね」

坂口 「それぞれに関連する要件が出てきたときは、どうやって調整するんですか?」

谷橋 「うーん、まぁ……。その時々に応じてなんとかやってますけどねぇ」

 坂口はその後も質問を繰り返した。

 情報システムがあまりにも急激に広まった結果として、社内に複数のシステムが乱立し、その後のビジネスや業務の変化に対して、迅速に対応できなくなっている状況は他社にも見られることだ。2時間近いミーティングの結果、サンドラフトもその事例に漏れず、システムとユーザー部門同士が業務エリアで分断されていることを坂口は実感していた。

坂口 「ありがとうございました。細かい点はまた別途、場を設定させていただいて、お伺いします。それと、これは当室でリサーチしたRFIDを活用した他社のシステム事例に関する資料です。八島主任にご参考としてお渡しください」

 組織が大きくなるほど、関係者は広がり、問題は複雑化していく。そのためには幅広い視点や柔軟な発想と忍耐力が必要になることは分かっていた。

 だが、いまの坂口には分断された組織を結ぶための糸口が見つけられず、消化不良の思いを抱えて情報システム部を後にするしかなかった。

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