それは仕様です〜ユーザーvs.システム部門開戦目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(17)(1/4 ページ)

» 2008年03月25日 12時00分 公開
[三木裕美子(シスアド達人倶楽部),@IT]

第16回までのあらすじ

前回、システムテスト段階でバグが大量に見つかったものの、システム部門が連日連夜徹夜でバグ修正に取り掛かり、何とかリリースにこぎ着けたものの、CIOの佐藤専務が不穏な動きをし始めていた。



システム引き渡しのとき

八島 「はい、みんなごくろうさんでした! これにてシステムテストおしまいねー!」

 ここはサンドラフトの情報システム部。八島の声にフロアにはホッとした空気が一瞬流れ、その後拍手がわいていた。飲みいくぞーとの声もちらほら上がっている。

 新システムでのシステムテスト、すべてのテスト工程を終え、途中出たバグも何とか修正し、晴れてユーザーへの引き渡しが可能な品質に仕上がった。八島はテスト結果の報告書をすべてチェックし、先ほどそれを終えたのだ。

谷橋 「いやぁ、今回もキツかったですね〜!」

小田切 「おれ、何回徹夜したかな。ホント、年を感じたよ」

八島 「な〜に言ってんの〜。これで終わりじゃないんだからさ〜。来週っからユーザー部門でのテストでしょ。またあれこれ言われるんだなぁ、これが」

小田切 「いや、今回はそんなことはないですよ。しっかり要件も確認していますし」

谷橋 「そうです。おれら、自信持って作ってますから」

八島 「ま、とにかく飲みいこうよ。ガソリン補給、ガソリン補給〜!」

3人は机のPCの電源を落とすと、そのまま連れ立って夜の街に繰り出していった。

 週明けの月曜日、開発環境が置かれたテストルームでは、ユーザー部門のメンバーが情報システム部門のメンバーからシステムの操作内容、テスト実施方法の説明を受けていた。

 もちろん坂口や伊東の姿もある。

坂口 「情報システム部からの説明は以上になります。各部署とも事前に計画していただいたスケジュールに沿って、テストを進めてください。なお、見つけたシステムのバグや、改善要望事項については、お送りしているフォーマットに入力の上、IT企画推進室の伊東までメールで送付してください」

 ユーザー部門のテストに当たり、坂口は伊東に課題管理フォーマットの作成を指示していた。初級シスアドこそ不合格だったが、この半年間の勉強の成果か、大体必要な項目がそろった管理フォーマットに仕上がっていた。

 プロジェクトは新たな工程に入ったのだ。坂口はまた気が引き締まる思いだった。

それは仕様です

 ユーザー部門のテストが始まって1週間が経過した。坂口は課題状況を把握するため、伊東に確認をする。

坂口 「課題一覧を送ってくれるかな」

伊東 「はい」

 送られたファイルを開くと、数十件のレコードが登録されている。カテゴリ項目を見た瞬間に坂口は眉をひそめた。ほぼすべての項目で「バグ」が選択されているのだ。

坂口 「伊東、これ本当にみんなバグなんだよね?」

伊東 「は、は、はい。情報システム部に確認はしていませんが、送られてきたものをそのまま反映していますから」

坂口 「分かった。ちょっとテストルームに行ってみよう。八島さんのところにもこれは送ってあるな?」

伊東 「はい、毎日最新状態を送ってます」

 2人が連れ立ってテストルームに行くと、ドアの向こうから何やら口論しているのが聞こえる。

 部屋に入ると、情報システム部のメンバーとユーザー部門の代表者が激しいやりとりをしていた。

 そばには八島や小田切、谷橋の姿もある。

坂口 「八島さん、課題一覧のことでちょっと確認が」

八島 「分かってるよ、バグの件でしょ。でも、それ全部がバグじゃないよ〜。うちらは仕様どおりに作っただけなんだから」

 ほかのマシンの前でも、同じようなやりとりがちらほら聞こえる。

「だから、これは仕様通りなんですよ!」

「そんな要件を出した覚えはないですよ。例えそうだとしても、業務のことを考えたら、普通こうは作りませんよね? 配慮が足りないですよ、配慮が!」

といった感じだ。

坂口 「課題管理表に上がっているもの、ほとんどがバグだという指摘なんです。情報システム部で確認をしていただいて、結果を連絡してください」

八島 「ユーザーのワガママが入ってるんだよ。坂口ちゃんも分かるだろ? やれ使い勝手が悪いとか、あれこれいうけど、結局は慣れの問題なんだよね〜」

坂口 「別にユーザー側の肩を持つわけではないんです。本当にバグであれば、修正が必要ですし、何より業務に支障が出ます。そういったリスクは、いまのうちに摘み取っておく必要がありますし。もちろん、ワガママな要望については切り分けてユーザー側には取り下げてもらう対応もします」

 八島ら情報システム部のメンバーは、いかにもやれやれといった表情でテストルームを後にしていった。

 テストをしていたユーザー部門のメンバーが坂口に話し掛けてくる。

メンバー 「いつもああなんです。これでは使えないって機能を指摘すると、仕様通りって。確かに仕様には入っていなかったかもしれませんが、僕らだって最初から全部の要件を出し切れるわけないじゃないですか。使ってみて初めて分かることもあるし。何とか修正してもらうように、お願いできませんか?」

坂口 「全部に対応するのは難しいですが、少なくともバグと改善要望の切り分けはしましょう。皆さんにもあきらめていただく部分が出てくると思います」

 ユーザー部門のメンバーからは不満の声が上がった。

坂口 「とにかく、テストを続けてください。引き続き課題事項はIT企画推進室まで送付をお願いします」

 テストルームを後にした坂口は伊東に言った。

坂口 「現時点で上がっている課題をチェックしよう。少なくとも緊急度の高いものだけでもピックアップしないとカットオーバーに支障が出る」

伊東 「は、はい、分かりました」

 その夜、IT企画推進室の明かりは深夜まで消えることはなかった。

 伊東は終電で帰したものの、坂口は引き続き作業に没頭した。情報システム部とユーザー部門の調整は始まったばかりなのだ。

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