こんな行為はパワハラですよ!読めば分かるコンプライアンス(5)(1/4 ページ)

本連載では、あるコンサルタント企業を舞台にして、企業活動とは切っても切れない“コンプライアンス”に関するトピックを、小説の随所にちりばめて解説していく。

» 2008年05月20日 12時00分 公開
[鈴木 瑞穂,@IT]

転職後の送別会で近況報告

 東京・神楽坂のちゃんこ屋「若潮」の一室。ちゃんこ鍋がいい具合に煮えていた。

神崎 「再会を祝して、かんぱーい!」

 神崎亮太の差し上げたジョッキに、岡田公男と磯崎良子がジョッキを合わせた。

 磯崎が岡田をグランドブレーカーから引き抜いてから3カ月がたっていた。そして、磯崎も11カ月前にハイパーシステムに転職するまではグランドブレーカーの社員だった。神崎と岡田にとって磯崎は2年先輩の姉御的存在であり、仕事も教えてもらい、酒も鍛えてもらったものだ。

磯崎 「あ〜、仕事の後のビールはおいしいわぁ!」

神崎 「いやぁ〜、磯崎さんの飲みっぷりは相変わらずですね。女にしておくのはもったいない」

磯崎 「何いってんのよ! 私が女でなかったら、男どもにとって大きな損失よ」

神崎 「はいはい、そうですね。でも磯崎さん、今日は一応遅ればせながらの岡田の送別会なんですから、主役は岡田ですからね」

磯崎 「分かってるわよ。それにしても、グランドブレーカーで岡田くんの送別会ができなかったっていうのは、上司の鬼河原さんが部下の岡田くんに辞められていじけてしまったからだっていうじゃない。ほんと、そんな肝っ玉の小さな男がよくマネージャなんかになれたもんだわ」

岡田 「神崎、鬼河原さんは相変わらずなのか? 何だか、パワハラがますますひどくなったっていううわさが聞こえてきたりしてるんだけど……」

神崎 「そうなんだよね。あんたらも覚えているだろうが、グランドブレーカーにはクラス別トレーニングプログラムがあるだろう? 実は来週の月曜日、マネージャクラスに対して通常のプログラム以外の臨時トレーニングがあるんだけど、それが『パワハラ研修会』なんだ。1カ月前にマネージャは全員参加することっていう社内通知があったんだけど、そのころから、『岡田公男は鬼河原マネージャのパワハラが原因で辞めた、会社は鬼河原さんのパワハラをなくするために臨時トレーニングを組んだんだ』とかいううわさが流れていてな……。鬼河原さんもそのうわさを耳にしたらしくて、『おれのどこがパワハラなんだ』ってなもんで、最近ちょっと荒れ気味なんだよね」

磯崎 「まったく、なんて男なのかしら! いつでも『自分は正しい間違ってない!』と思ってるのよね。いい年こいた大人のくせに、自分を省みるってことを知らないのよねぇ。何とかに付ける薬はないっていうけど、その『パワハラ研修会』も鬼河原さんにとっては何の役にもたたないわよ、きっと」

岡田 「おれが辞めるとき、鬼河原さんには直接、あなたはパワハラといわれても仕方ないことをしてるんですよっていったんだけど、伝わってなかったのかなぁ、やっぱり……」

神崎 「磯崎さんも覚えてると思うけど、おれのグループに1年先輩で成瀬さんているでしょ」

磯崎 「覚えてるわ。成瀬真治くんよね。彼、優秀だし正義感も強いけど、気が弱いタイプよね」

神崎 「確かに。その成瀬さんがね、岡田が辞めたすぐ後に、岡田の抜けた穴を埋めるために、うちのチームから鬼河原チームに移籍したんだ」

岡田 「へぇ、おれの穴埋め……。何だか気の毒だな」

神崎 「それで成瀬さんは、気が弱いくせに正義感が強いもんだから、お前と同じように、鬼河原さんの仕事の進め方に意見をいうんだよね。だから、いまじゃ成瀬さんが鬼河原さんのパワハラの標的みたいになってるんだよね」

磯崎 「……。ますます気の毒だな……」

岡田 「さぁさぁ、鬼河原氏の話をツマミにしてたんでは、せっかくのビールがまずくなっちゃうわよ。そんな辛気臭い話は終わりにして、パァっといきましょ、パァっと!」

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