BCP策定に当たって検討すべきこととは事業継続に真剣に取り組む(2)(1/2 ページ)

BCPの策定と準備の作業とは、BCPを策定するに当たっての規定、体制、方法を検討し、実施、評価、見直しをすることだ、今回は、このBCP策定のステップを紹介する。

» 2006年11月01日 12時00分 公開
[喜入 博,KPMGビジネスアシュアランス株式会社 常勤顧問]

 第1回では、「事業継続をどのように考えればいいか」というタイトルで、BCPとBCMの違い、BCM構築の基本方針、BCM構築のポイントなどをご紹介しました。今回の第2回は、企業でBCPを策定し、それをBCMとして日常的な活動の仕組みを構築するに当たって検討、実施する事項の概要をご説明します。事業影響度分析および実際にBCPを策定、構築する体制等に関する詳しい説明は、次回以降に行います。

 BCPを策定し準備する企業では、人、物、コストなどを掛けて、場合によっては2〜3年の期間をかけてBCPを完成させます。この作業には、どのような作業と準備をしなければならないのでしょうか。これらの作業は、社内、あるいは企業グループ内でBCPを策定するに当たっての規定、体制、方法を検討し、実施、評価、見直しをするBCP策定のステップを確立する作業となります。BCP策定のステップは、図1のようなPDCAサイクルに基づいて実施します。

ALT 図1 BCP策定のステップ

 なお、本稿では、BCPの策定とBCMの構築の作業全体を、便宜的に「BCPの策定」と表現します。

ステップ1 BCP策定の計画(Plan)

 このステップは、企業として不測の事態に責任を持って対応する事業、活動を選定し、その事態への対応計画を策定するステップであり、BCPの策定に当たって、最も重要なステップといえます。BCP策定の計画は、(a)情報収集(b)基本方針の決定(c)プロジェクトチームの編成(d)プロジェクト計画の策定(e)事業影響度分析の実施(f)BCP戦略の決定、の作業からなります。

(a)情報収集

 BCPの策定に当たって、最初に実施する作業です。すでに社内には、人事規定、労務規定、業務規定などがあり、緊急時の対応策や代替策などが存在しているでしょう。これらの規定や、これまで事業活動に重大な影響を与えた障害やトラブルなどの事例を収集し整理することが必要です。これから策定するBCPは、既存の社内規定や業務に関する規定類と大きな関係があります。従って、現状の規定類で定められている事項が適用できるもの、変更が必要なもの、新たに策定する必要があるもの、などに整理します。

 また、BCPの策定に関する社外の情報を収集し参考にするとともに、同業他社のBCPの策定状況、あるいは取引先の緊急時対応計画などを整理し、自社の計画策定の参考とします。

(b)基本方針の決定

 この作業は、「(a)情報収集」の作業結果を基に、BCP策定に当たっての経営レベルでの基本方針を決定します。BCPの策定においては、全事業分野、全業務範囲に対して事態発生時の影響分析や対応費用の試算などの作業を行うこともありますが、そのための要員、期間などの対応コストは高額なものになります。従って、このステップの作業として、経営層の判断により、BCPの策定の対象を自社の重要な事業分野への絞り込み、グループや関連企業の範囲の特定などを行うことが、効率的なBCPの策定につながります。また、基本方針として、事態発生時に重要な事業分野の製品の製造やサービスの提供を、どの程度の時間で復旧させるかのおおよその目安を示すことも必要です。

(c)プロジェクトチームの編成

 BCP策定の作業は、企業の多くの部門に関係することから、一般的にプロジェクトチームを編成して作業を推進します。チームの編成に当たっては、BCP策定の責任者とリーダを選出するとともに、策定作業に必要な作業項目を検討しこの作業にふさわしい部門からメンバーを選出します。また重要な事項として、プロジェクトチームの作業を円滑に進め、それぞれの作業間の調整と整合性を保つ事務局の編成があります。プロジェクトチームのメンバーは現職との兼務でも構いませんが、事務局の構成員は専任体制が望ましく、また多くの企業では総務部門などに組織を置いています。

(d)プロジェクト計画の策定

 プロジェクトチームが編成されたら、最初に作業することはプロジェクト計画書の策定です。プロジェクト計画書は、これから策定するBCP全体の作業およびその成果物の大枠を示すものです。またプロジェクト計画書では、BCPの策定における現場部門の役割、スケジュール、およびコストを可能な範囲まで明示します。策定したプロジェクト計画書は、経営層による承認を得て、正式な計画として発効することになります。BCP策定の組織作りに関しては、また回を改めてご紹介します。

(e)事業影響度分析の実施

 BCP策定において重要な作業は、事業影響度分析(BIA:Business Impact Analysis)の実施です。多くのリスクや想定される被害状況の中から、限られたコストで、最も重要な分野に対して効果的なBCPを策定するために、このBIAは重要です。BIAの実施は、次の作業からなります。

  • BIAの方法と手順を決定する
  • リスクシナリオを決定する
  • 重要業務を特定し、業務停止時の影響度を評価する
  • 重要業務に関連するリソースを特定する
  • BIAの結果をまとめる

 これらのBIAの作業の詳細は、また回を改めてご紹介します。

(f)BCM戦略の決定

 この作業は、経営層による基本方針や事業影響度分析の結果報告を受けて、最終的に策定するBCPを決定します。同時に、重要業務の可用レベル(全業務時間に対して、製造作業やサービス提供を実施する時間の割合。重要業務ほど100%を目指すことになる)や障害発生時の目標復旧時間、複数業務が影響をこうむった際の業務回復の優先度付け、なども行います。

 以上の作業を実施することにより、BCP策定の計画が立案でき、これ以降はBCPの実装のステップとなります。

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