運用管理の未来はどこへ?目指せ! ネット時代の幸せな管理者(15)(1/2 ページ)

現在の運用管理は、ブロードバンド環境が当然となりつつある。そのような中で、今後の運用管理はどのような変化を遂げるのだろうか。その点を考えてみたい。

» 2009年08月20日 12時00分 公開
[川村 聖一,@IT]

技術環境の変化

 運用管理者が利用する装置やネットワーク環境は、10年ほど前と比較すると飛躍的に進化しています。

 その要因の1つとして挙げられるのは、ブロードバンド環境が一般にも普及したことで、運用管理もブロードバンド環境が当然のようになってきたことです。ほかにも、OSの安定性向上(特にWindowsは実務で利用するにも十分なほどに安定したと思います)、CPUを含めマシン性能の向上、仮想化技術の進化、ソフトウェア開発手法の革新、Webの進化、などが挙げられます。

 さまざまな恩恵により、端末に不具合が起きても、ほかの端末から復旧する環境がひと昔前に比べて比較的容易に整ってきましたし、複数拠点の運用管理もかなり楽に行えるようになってきました。

 その一方で、運用管理すべき項目・対象は増大の一方をたどるばかり。システム管理者が責任を持たなければいけないリソースの規模は増える一方なのです。

 肥大化するシステム管理をいかにシンプルに、オートメーション化するかが、今後の運用管理の大きな課題となるでしょう。

 また、運用管理のフレームワーク化も考えるべきかもしれません。これについては、多くの人がITIL(Information Technology Infrastructure Library)を思い浮かべるかもしれません。

 ITILは有効ですが、手間が掛けられないのであれば、簡易なものからスタートしてもいいと思います。まずはある程度のフレームワーク、運用フローを確立することが大切でしょう。

重要なのは見極める力 

 こうした状況下で重要なのは、見極める力です。現在利用しているツールが最適かどうか、そうでなければより優れたツールなど代替可能なものがあるか、あるとしたらそれは何か、このようなことを常に頭の片隅にでも置いておく必要があります。今後の運用管理には、独自性の強い応用技術を用いている製品や、特許に守られているような製品(類似するような製品がなく、比較検討できないこともあります)は、汎用的な用途よりも、限られた用途で使われるようになるかもしれません。

企業環境の変化

 10年前と比べ変化したのは、技術環境だけではありません。企業環境も劇的に変化しました。

 例えば、企業のコンプライアンス、情報セキュリティ対策は、10年前も重要でしたが、現在ではそのときよりもはるかに重要になっています。運用管理の現場でも、コンプライアンスや情報セキュリティ対策は、常に目を配らなければいけないものになっています。データの保護、企業秘密の漏えい対策、法令を順守する業務を外部に委託しているかのチェックなどは、企業の一般の業務フローに完全に組み込まれているのではないでしょうか。

 にもかかわらず、情報漏えいや情報の不正利用に関するニュースは後を絶ちません。企業の本来の活動ではないため、重要になっているといっても、情報セキュリティの分野はどうしてもほかに比べて優先順位が低くなってしまうためでしょうか。しかし、情報セキュリティの優劣が、企業の土台であるビジネスを脅かすことがあることは、例を挙げるまでもありません。つまり、情報セキュリティをどうするのかを、きちんと見極めておかないと、企業の存続の危機に陥ることもあり得るのです。

 情報セキュリティに関しては、法令などでしなければならないものも数多くあります。ただし、一般的には、コストとその効果とのバランスで対策を考え、実施するものです。

 これは今後の運用管理にも大きなヒントにもなります。運用管理も同じように、コストと効果とのバランスで考えるべきです。が、現在のような不況期には、運用管理コストの削減額の目標を与えられる企業も多いでしょう。だからこそ今後の運用管理は、工数を掛けずにしっかりと守るべきところは守る(しかもなるべく低コストで)のが重要になってきます。工数を掛けずに守るべきものを守るためには、先述したようにオートメーションが重要な位置付けになります。

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