TV会議システムを導入する前に考えること運用管理者のための知恵袋(8)

TV会議システムは、うまく使えばコスト削減につながる有用なツールだ。しかし、その設置や運用ではさまざまな問題が発生しがちだ。今回は、TV会議システムを導入する前に考えるべきことを紹介する

» 2006年10月17日 12時00分 公開
[sanonosa,@IT]

 TV会議システムは、複数拠点を持つ企業における強力なコスト削減ツールである。しかしその導入にはいくつか注意すべき点があり、それらを考慮しないとむしろコストが増える可能性がある。そこで今回は、TV会議システムを導入する前に考えるべき事項をまとめてみた。

TV会議システムを選ぶ際の注意点

 TV会議システムにはさまざまな製品が存在し、価格も千差万別だ。TV会議システムの導入を考えるとき、まずはどのようなシステムを導入するのかを決める必要がある。

 大まかに分けて、TV会議システムにはハードウェアタイプとソフトウェアタイプが存在する。ハードウェアタイプは各拠点に1セットあれば完結するタイプであり、初期導入や日常的なメンテナンスが容易である。一方、ソフトウェアタイプはPCにインストールするもので、初期導入や日常的なメンテナンスが厄介なことが多い。ハードウェアタイプは概して導入費用が高い(数十万円〜数百万円)反面、管理コストが低い(障害発生頻度が低く、障害が発生しても利用者自身で直せる場合が多い)。これに対して、ソフトウェアタイプは導入費用は低い(数千円〜数万円)ものの、管理コストが高い(障害発生頻度が高い、また障害が発生すると利用者自身で直せないことがある)ことが多い。

 どちらのタイプを選ぶべきかは導入目的によって異なってくる。例えば幹部レベルの会議、複数支店との会議、海外本支社との会議などであればハードウェアタイプ、担当者間での情報共有程度であればソフトウェアタイプという判断基準はいかがであろうか。

導入に備えた基本インフラの準備

 TV会議システムの導入には、TV会議システムに加え、基本インフラとしてこれを設置する場所とネットワーク回線が必要である。

 まず、どの部屋にTV会議システムを設置するかが重要だ。よく使われる会議室にTV会議システムを設置してしまうと、いざTV会議をしようとした場合の調整が面倒なので、理想をいえばTV会議専用に会議室を用意したいところだ。しかし、ただでさえ会議室が足りないのに、新たにTV会議室専用の会議室を用意するなど不可能だという企業も多いと思われる。そんな場合はTV会議システムを可動式の机に設置し移動できるようにして、どの会議室でもTV会議ができるようにしておくといいかもしれない。

 また、会議室の広さも重要である。会議参加者数を十分カバーでき、かつプロジェクターが十分な大きさで映ることは当然として、TV会議システムにおいてはハウリングが起こらない配置ができることが非常に重要である。また、外国人相手のTV会議を行う機会が多い場合は、会議参加者が普段の会議より緊張していることが多いで、議論を充実させるために広くゆったりした空間を確保することをお勧めする。

 それからネットワーク回線の品質も重要だ。品質の悪いネットワーク回線を用いると接続切れが頻発する。そのような場合はネットワーク回線品質を簡単に調べる方法がある。それは接続しようとする拠点まで長時間pingを打ち続ける方法である。pingを打ち続けた結果パケットロスが多発するようであれば、ネットワーク回線品質に問題があるといえる。もしインターネット回線品質に問題があるが、何らかの事情で代替の回線を引けないようであれば、通信の度に電話代がかかるがISDN回線を利用するという手段もある。ISDN回線を使うとインターネット接続よりも安定的に通信できる場合が多い。

運用における想定外のトラブル

 TV会議システムを運用してみると想定外の出来事がよく起こる。筆者のこれまでの経験についてご紹介しよう。

その1 配線や設定がユーザーによって勝手に変えられている

 相手先拠点につながらないと、ユーザーは配線や設定をいじることで解決しようとする場合が多い。いくら頑丈に配線をし、さらに管理者権限パスワードを設定しても、なぜかユーザーはいろいろいじくり回してしまう。従って、ユーザによっていろいろ変えられてしまうことはやむを得ないという前提で、たまに見回りに行くとか、重要な会議の前には機器担当者が接続テストを行うようにすると良い。

その2 相手先と接続できない場合の障害切り分けは困難

 TV会議システムがほかのシステムと違う点は、自分の側と接続先のどちらが障害原因となっているかが判断しにくい点である。相手に問題がある可能性が高くても、そうとは断言できない場合も多く、そういった場合は双方のシステム管理者が障害原因を探すことになる。しかし概して双方のシステム管理者とも、自分の側は特に何も変更していなかったので相手先が障害原因だと思い込むことが多く、このことが障害切り分けまでに長時間かかる大きな要因となっている。そういったことを避けるためには、あらかじめ障害発生時対応マニュアルを整備し、そのなかで接続できない場合のチェックリストを作成しておくのが良い。チェックリストに沿ってテストした結果を接続先のシステム管理者に示せば、自社側が問題である可能性が低い点を理解してもらえると思われる。

その3 相手先のシステム管理者が外国人の場合、障害切り分けはさらに困難

 日本人同士でも難しいのに、相手先が外国人の場合はコミュニケーションにおいて大変苦労する。筆者はTV会議システムの管理者ではないのだが、社内で韓国とのTV会議接続トラブルが発生すると、多少韓国語が分かるために対応の依頼を受けることがある。もし社内に外国語ができる人がいない場合は、システム管理者が相手先のシステム管理者と何らかの手段でコミュニケーションするしかなさそうである。最終手段としては、世の中には無料の翻訳サイトが充実しているので、そういったサイトを利用しながらチャットでコミュニケーションするという手段はいかがであろうか。

コスト削減効果をどう考えるか

 最後に、TV会議システム導入後のコスト削減効果について簡単に述べることにする。

 TV会議システムを導入することの最大のメリットは、何といっても出張回数の削減であろう。企業により出張回数が大きく異なるので何ともいえないが、これだけでもTV会議導入コスト以上の経費削減が行えることだろう。

 また、TV会議システムを導入すると、遠距離の相手と手軽に会議が行えるようになり、情報共有がより深くなるという目に見えないメリットがある。情報共有があいまいなまま進行した失敗プロジェクトの後始末にかかる費用が必要なくなるという意味では、その部分も十分なコスト削減効果があるといえそうである。

 一方、TV会議では相手先と接続できないトラブルが頻発する。トラブル発生時に失われる時間は重大なロスである。特に時間給が最も高い幹部の時間を無駄にすることは大きなコストにつながる。この点はぜひ気を付けたいものである。

著者紹介

▼著者名 sanonosa

国内某有名ITベンチャー企業に創業メンバーとして携わる。国内最大規模のシステムを構築運用してきたほか、社内情報システム業務を経験。韓国の交友関係が豊富なことから、韓国関連で多数のシステムインテグレーションを行ってきた。


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