仮想化技術は、長期的な視点で活用すべき仮想化インタビュー(3)(1/2 ページ)

仮想化の対象はサーバだけではない。経営目標の実現に向けて、仮想化技術をより有効に生かすためには、ストレージ、ネットワークなど、ITインフラ全体を見渡し、バランスよく仮想化環境を整えるとともに、それを確実に運用・管理できる体制を築くことが大切だ。

» 2008年12月02日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]

ITインフラの運用・管理を効率化する“魔法の杖”

 近年、ビジネスの環境変化に合わせた、柔軟なITインフラ整備が求められている。しかしそうした傾向は、サーバ台数の増加をはじめ、複数のOSやバージョンの異なるアプリケーションを混在して使うなど、ITインフラの複雑化と管理コストの上昇を招く結果となった。

 こうした中、1960年代からメインフレームで使われてきた仮想化技術を、x86サーバでも利用可能としたのがヴイエムウェアだ。特にハイパーバイザ型仮想化ソフトウェア「VMware ESX」が企業におけるサーバ統合のトレンドを一気に加速。いまでは「VMware ESXi」に加え、マイクロソフトの「Hyper-V Server 2008」など、無償の仮想化ソフトウェアも提供されており、サーバ統合はもはや“当たり前”の取り組みとなっている。

 日本IBM ハイバリュー・ソリューションセンター デザインセンター ICP-シニアITA 濱田正彦氏は、こうした状況について次のように語る。

 「サーバ仮想化には、1つのサーバを複数のサーバのように機能させる“リソース共有”と、複数のサーバを1台のサーバにまとめる“リソース統合”という2つのアプローチがある。メインフレームの時代には、少ないリソースを有効活用する目的で前者の考え方を取っていたが、現在はあり余るリソースを集約して、1台1台の能力を最大限に生かすことを目的としている。物理リソースを減らして導入・管理コストを大幅に削減できることや、グリーンITに対する世界的なトレンドも、サーバ仮想化の波を後押ししたといえよう」(濱田氏)

 また、サーバ仮想化は、ITインフラ運用の柔軟性を高められるメリットも大きい。例えば、システムによる業務処理量が急激に増加しても、新規に物理サーバを用意することなく、いまあるサーバの空いているリソースを迅速に割り当てることができる。基幹業務のようにトラブルがあってはならない機能を担うシステムでも、専用のリソースを論理的に隔離するため、高い安定性を確保することができる。

 また、仮想化ソフトウェアによって、従来は密接に結び付いていたハードウェアとOSの関係を切り離せる。このため、1つの物理サーバで、種類の異なる複数のOSを同時に稼働させることも可能となる。

 「運用管理のポイントは、いかにユーザーの使用環境を変えずに、運用効率を上げてコストを下げられるかにある。その点、仮想化とは“見せ掛ける”ということ。ユーザー側には普段とまったく変わらない使い勝手を確保しながら、その裏では柔軟にリソースの調整ができる。仮想化は、ITインフラ全体の運用管理を効率化する“魔法の杖”だ」(濱田氏)

日本IBM ハイバリュー・ソリューションセンター デザインセンターのICP-シニアITA 濱田正彦氏 日本IBM ハイバリュー・ソリューションセンター デザインセンターのICP-シニアITA 濱田正彦氏

 濱田氏はこう述べたうえで、コスト削減ばかりがフォーカスされがちなサーバ仮想化のトレンドについて、「サーバ仮想化は、仮想化技術を利用するための入り口に過ぎない」と指摘する。

 「コスト削減に寄与するのは当然として、サーバのワークロード管理や、激しく変化するリソース要求への対応など、あらゆる管理を柔軟かつ容易に行えるようになる。今後はそうした仮想化環境を、どう確実にコントロールしていくかが、ユーザーとベンダ、双方にとって大きな焦点となっていくことだろう」(濱田氏)

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