クライアント仮想化で激変するワークスタイル仮想化インタビュー(5)(1/2 ページ)

クライアント仮想化はOSやアプリケーションの一元管理を実現するほか、デスクトップの使い勝手を大幅に高める。シトリックス・システムズ・ジャパンの今野氏も、「数ある仮想化技術の中でも即効性が高く、メリットを実感しやすい技術」として、積極的な活用を勧める。

» 2008年12月08日 12時00分 公開
[内野宏信,@IT]

コスト効率と企業としての信頼性を高めるために

 サーバ仮想化に続くトレンドとして、「クライアント仮想化」が注目を集めている。OSやアプリケーションをサーバ側で一元管理できることから、ユーザーはメンテナンスの行き届いたデスクトップで、あらゆるアプリケーションを常に快適に使えるようになるほか、運用管理コスト削減、セキュリティの向上にも大きく寄与するとされている。

 特に近年は企業間競争の激化により、企業はいっそうのコスト削減、業務効率向上が求められている。また、企業がその社会的責任やコンプライアンスを果たすことの重要性も増し、情報システムのセキュリティ対策も不可欠となった。クライアント仮想化は、まさしくこうした課題解決に貢献するものとして、すでに多くの企業が導入に乗り出している。

 現在、「クライアント仮想化」と呼ばれるものには、大きく分けて2つある。

 その1つ目は、「アプリケーションの仮想化」だ。多数のユーザーにアプリケーションソフトを配布する場合、問題になるのが各ユーザーのクライアントPCの環境に差異があることだ。OSのバージョン違いだけではなく、パッチの適用などによってもクライアントPCの環境が変わり、そのためにアプリケーションが動作しなくなる場合がある。この問題をユーザー自身が解決できない場合、システム管理者が対応せざるを得ず、ユーザー数が多くなると管理者の負担は膨大なものとなる。

 そこで、アプリケーションとその実行に必要なDLLファイルなどを1つにまとめ(パッケージ化)、それをクライアントPCにインストールした仮想マシンやランタイム環境で動作させるという方法が登場した。仮想化技術をクライアントPCに導入することにより、クライアントPC側の物理マシンやOSの環境からアプリケーション実行環境を切り離すというわけだ。

 ユーザーは、アプリケーションごとにインストールやレジストリ変更といった作業を行うことなく、アプリケーションを自由に利用することができる。同じ環境での共存を許さないバーション違いの同一アプリケーションを同時に使うといったことも可能だ。

シトリックス・システムズ・ジャパンのプロダクトマーケティング担当部長 今野尚昭氏 シトリックス・システムズ・ジャパンのプロダクトマーケティング担当部長 今野尚昭氏

 Windows Serverのターミナルサービスを拡張することで、サーバ側でアプリケーションを稼働、クライアントPCから操作可能とする、「Citrix XenApp(旧Citrix Presentation Server」も、アプリケーションの仮想化をサポートする。むろん、MetaFrameの流れをくむ本製品は、サーバ側で実行したアプリケーションの画面イメージをクライアントPC側に転送する「サーバベースド・コンピューティング」も使える。Citrix XenAppは1997年に提供が開始され、現在のところ、国内だけで導入企業数は1万5000社を超えるという。すでに多くの企業が活用している点で、クライアント仮想化の手堅い方法といえる。

 シトリックス・システムズ・ジャパンのプロダクトマーケティング担当部長 今野尚昭氏も、クライアント仮想化のトレンドについて、「OSやアプリケーションが、通常のPC同様に稼働しているように“見せ掛ける”クライアント仮想化は、ユーザーの使い勝手を確保しながら、情報漏えいのリスク低減、運用の効率化を図れる点で、実にメリットが大きい」と語る。

 「例えば、アプリケーションの仮想化なら、ユーザーは随時、必要なアプリケーションを使える一方、管理者はアプリケーションのインストールからバージョンアップ、パッチ適用まで、すべてサーバ側で一度に行える。さらにユーザー管理やアクセス制御、アクセスログ管理なども一元管理できるため、運用管理はより少ない人数で、より確実・効率的に行えるようになる。さらなるコスト削減、効率化が求められているいま、クライアント仮想化の流れは、今後いっそう加速していくことだろう」(今野氏)

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