XenServerの勝機はどこにあるか仮想マシン環境最新事情(5)(1/2 ページ)

シトリックス・システムズは、2008年に入ってサーバ仮想化関連ビジネスの本格的な展開を開始した。先行するヴイエムウェアと、2008年中にこの市場に参入するマイクロソフトとの間で、シトリックスはサーバ仮想化関連ビジネスをどのような切り口で、どう伸ばしていこうとしているのか。シトリックス・システムズ・ジャパンに聞いた

» 2008年02月18日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 2007年にXenSourceを買収したシトリックス・システムズは、2008年に入ってサーバ仮想化関連ビジネスの立ち上げを積極的に進めている。1月下旬にはマイクロソフトとのサーバ仮想化に関する包括的な提携を発表、2月中旬にはハイパーバイザである「XenServer」(旧Xen Enterprise)の新バージョン4.1を発表するとともに、同社の既存製品と統合した新ブランドを立ち上げた。

 XenServerを手に入れたことにより、シトリックスは「Citrix Presentation Server」(「XenApp」に改称された)で提供してきた画面転送型のシンクライアント・ソリューションに加え、サーバ仮想化技術を活用した新たな選択肢を提供できることになった。これを実現する製品群をシトリックスは「XenDesktop」と命名。XenDesktopはXenServer、仮想マシンの配備を支援する「Citrix Provisioning Server」、そしてサーバ上で稼働する仮想デスクトップとユーザーとを結び付けるコネクション・ブローカー・ソフトウェアで構成されている。XenServer上でデスクトップOSを仮想マシンとして動かし、XenAppでも使われているICAプロトコルにより、ユーザー端末に届けることができる。

 シトリックス・システムズ・ジャパンによると、画面転送型とデスクトップ仮想化型の2つのシンクライアント・ソリューションを、ICAという同一のプロトコルで提供できるということは、エンドユーザー側の端末を統一しながら、各ユーザーの必要とするデスクトップ環境に応じて、2つの技術を臨機応変に適用できることを意味する。特にデスクトップ仮想化では、各ユーザーがどの端末を使っても、各人固有のデスクトップ環境を利用できるようになり、シンクライアント・ソリューションの使い勝手が大きく改善される。

 ただし、同種のデスクトップ仮想化ソリューションは、ヴイエムウェアがすでに商品化していて、特段目新しいものとはいえない。シトリックス・システムズ・ジャパン マーケティング本部 プロダクトマーケティング担当部長の竹内裕治氏は、ヴイエムウェアよりも使いやすく、安価で、パフォーマンスに優れたデスクトップ仮想化を提供していくと話す。

 「ヴイエムウェアとシトリックスは視点が違っている。ヴイエムウェアはハードウェアからの視点で、シトリックスはアプリケーションをデリバリするという視点だ。当社の場合、ユーザーが何を欲しているのか、それをどう便利にしていくかを考えた結果、仮想化が必要になった」(竹内氏)。

 これを販売チャンネルの話に置き換えれば、シトリックスの場合は、既存販売パートナーが画面転送型のソリューションを補完する形で、すでに自らの開拓した顧客に対してXenDesktopを売り込んでいけることになる。展開としては非常に自然で、早期の立ち上がりも期待できる。

物理サーバも含めたデータセンター自動化を目指す

 では、シトリックスはデスクトップ仮想化以外のサーバ仮想化関連ビジネスを考えていないのだろうか。

 「(デスクトップ仮想化の)バックエンドとしてのサーバ仮想化は、第1に推進すべき分野だと思っている。だがそれ以外にもデータセンターそのものを仮想化するメリットはたくさんあり、これらの切り口でXenServerを展開することも考えている。機能やパフォーマンスの強化を、ほかのシトリックス製品より速いサイクルで進める一方、パートナーとの関係をさらに強化し、サーバ仮想化に関するエコシステムを作り上げようとしている」と竹内氏はいう。

 XenServerというハイパーバイザを生かしたツール/機能として、これまでシトリックスが提供してきたのは、ヴイエムウェアの「VMotion」に相当する「XenMotion」のみといってもよかった。しかし2008年1月には、これに加えてProvisioning Serverの提供が明らかにされた。

 Provisioning Serverを使うと、あらかじめ作成しておいた単一の仮想マシンイメージを基に、必要に応じて固有情報をその場で適用し、各種のサーバに展開できる。仮想サーバとして展開できるだけでなく、物理サーバとしても展開できるのがこのツールの大きな特徴。これはヴイエムウェアも実現していない、業界初の機能だとする。

 竹内氏によると、「ガートナーの予測では、2010年時点で仮想化されているサーバは全体の14%。この時点でも80%以上は物理サーバのままであり、仮想サーバと物理サーバの管理負荷を同時に削減するという視点で」このツールを提供することになったという。

 物理サーバを含めたデータセンター全体を対象とする運用の自動化で、シトリックスはヴイエムウェアに先んじているとも表現できるのだという。シトリックスはさらに、XenAppなど、同社のほかの製品を含めた管理作業の自動化ツール「Workflow Studio」を2008年中に提供開始すると発表している。このツールを通じ、一定の条件に基づいて仮想サーバと物理サーバを自動的に使い分けて、データセンター全体のリソースを調整するような機能を実現していくことが考えられる。

 「単純に比較すれば、先行しているヴイエムウェアのほうがたくさんの機能を持っているのは認める。しかし、ユーザーがいま必要なものを、価格の面を含めて使いやすく提供できるのは当社だ」(竹内氏)。

 価格面での優位性は、現在の時点でもアピールしやすい要素の1つになっているようだ。バーチャリゼーション&マネージメント部 システムエンジニアリング部長 平谷靖志氏によると、「ヴイエムウェアの場合、VMotionだけを使いたいユーザー企業が多いが、そうしたユーザーも(VMware HAやVMware DRSなど高度な機能を備えた)『VMware Infrastructure Enterprise』パッケージを買わなければならない。XenServerとXenMotionの組み合わせだとVMware Infrastructure Enterpriseの半額程度になる」。

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