なぜ、PC資産管理は失敗するのか?勉強会リポート:クラウド時代のIT資産管理(2)(1/2 ページ)

2009年9月29日に東京・大手町で開催された@IT情報マネジメント勉強会「PCから仮想サーバまで ― クラウド時代の運用管理」の模様をお伝えする。勉強会ではプライベートクラウド構築の基礎となるIT資産管理について、講演とパネルディスカッションが行われた。今回はそのパネルディスカッションの前半部分を掲載する。

» 2010年01月14日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

 パネルディスカッションには講演を行った第一生命情報システム株式会社の石井氏、株式会社コアの武内氏、マイクロソフトの花岡氏に加え、インテルの下野氏と日本CAの奥村氏がパネリストとして参加し、現在のIT資産管理が抱える課題、成功する方法、経営への貢献などについて討論を行った。

 PC資産管理は単純に社内のPC台数を把握するだけではなく、内部統制やセキュリティ、コンプライアンス、会計(業務コストなど)とかかわるだけに、広範な議論が戦わされた。

パネリスト

第一生命情報システム株式会社 基盤システム第一部 オープン技術グループ チーフSE 石井仁氏

マイクロソフト株式会社 ライセンシングソリューション本部 ソフトウェア資産管理ソリューショングループ グループリーダー 花岡悟史氏

インテル株式会社 マーケティング本部 ソフトウェア・エコシステム・マーケティング総括部長 下野文久氏

日本CA株式会社 ソリューション営業本部 サービスマネジメント・ソリューション営業部 テクニカル・ソリューション・グループマネージャー 奥村剛史氏

株式会社コア プロダクトソリューションカンパニー ネットワークソリューション事業部 武内烈氏


モデレーター

新野淳一氏


I - 資産管理を行う本当の理由、課題、悩み

ALT Moderator:
Publickey運営者
(元@IT発行人)
新野淳一氏

新野 モデレーターを務める新野です。パネルディスカッションの第1部は、PC資産管理とソフトウェア資産管理の有効性について現状の課題や悩みを確認して、資産管理を成功させる方法を考えていきたいと思います。

 最初は『資産管理を行う本当の理由、課題、悩み』をテーマに話を進めていきます。まず、ユーザー代表として第一生命情報システム株式会社の石井さんにお伺いしますが、PC資産管理システムを導入した目的は何ですか?

石井 第1にはPC資産の棚卸し作業を楽にしたいということですね。それからハードウェア資産に加えて、ソフトウェアの保有ライセンスを正確に把握することです。

新野 PC資産状況がリアルタイムに判明するような仕組みですね。そのほかに便利になった部分はありますか?

ALT Panelist:
第一生命情報システム株式会社
基盤システム第一部
石井仁氏

石井 基本的に標準構成のPCを使うことにしたので、サポートが楽になりました。PCのトラブル時に予備機を配置するのも、ごく短時間で行えます。

新野 同じ質問をベンダの皆さんにもしてみましょう。株式会社コアの武内さん、PC資産管理についてお客さまからどんな声が寄せられていますか?

武内 PC資産管理システムの導入は、内部統制やISMSへの対応といった義務的なものを目的とすることがメインのようです。ただし、失敗しているケースがすごく多いんですね。ほとんどのお客さまはここ数年の間で資産管理ツールを1回??、下手をすると2回買っています。だけど、なぜかうまくいっていないのです。

新野 そもそもの悩みが解決されていないのですね。

武内 部分的な解決はあります。IT資産管理には、情報セキュリティ管理やライフサイクル管理、ソフトウェア資産管理といろいろな側面があります。「うまくいった」と評価されているケースは、ISMSの観点からセキュリティポリシーを策定・管理している、ログ管理をできるようにした??というあたりまでができたというものです。しかし、まだやり残しているところがある、最初の課題として「ここまでやりたい」という範囲をすべてカバーできているケースは少ないようです。

新野 資産管理ツールを導入しても解決されないというのは、どこに問題があるのでしょうか?

武内 資産管理はマネジメントの問題なので、ツールだけでは実際には解決しないのです。つまり、基本となる管理ポリシーがあって、それに沿った業務フローやプロセスが整備され、これを実施するためにツールをうまく利用するという形になっていないと、「管理ができていない」ということになってしまうわけです。

新野 マイクロソフトの花岡さんにもお聞きましょう。お客さまの課題にはどういうものがありますか?

ALT Panelist:
マイクロソフト株式会社 ライセンシングソリューション本部 ソフトウェア資産管理ソリューショングループ
グループリーダー
花岡悟史氏

花岡 私がお客さまからお聞きする課題は、コンプライアンスとコスト削減です。この2つでご相談を受けます。前者の課題は具体的にいうと、ライセンス証書をなくしてしまったであるとか、ソフトウェアの不正利用といったコンプライアンスリスクを費用を掛けずに低減する方法はないかとか、そういうお話です。後者は多くの場合、ソフトウェアのコストです。例えば、一度にたくさんの製品を購入すると1本当たりのコストが安くなるんじゃないかというようなご相談ですね。

新野 お客さまからの問い合わせとしては、そういった課題を解決するための管理製品はないのかというニーズなんでしょうか?

花岡 われわれも管理製品を持っておりますが、私がご相談いただくときはライセンス契約についてよいやり方はないか、あるいはライセンスで問題があったときにこういったルールでよかったのかといった内容ですね。

新野 やはり、管理のやり方を教えてほしいということでねす。続けて同じ質問を日本CAの奥村さんにもしましょう。

奥村 私どもがお客さまを訪問したときによくある悩みというのが、資産管理ツールはすでに入れてインベントリは収集している、リストも出力できる??、ただし、そのリストをどう使ったらいいのか分からないというものです。そういったお客さまは、ある製品を導入して3年ぐらいすると「もっといいツールがあるんじゃないか」と新製品を探し始めるという傾向が見られるように感じています。

新野 ありがとうございます。同じ質問をハードウェアベンダ代表として、インテルの下野さんにもおうかがいしましょう。

下野 管理製品がうまく使いこなせないという問題の根本には、IT部門が社内ですみに追いやられてしまっている状況があるのではないかと思います。IT部門の方々は、言われるままやることをやったけれど、本当の旗振り役がいないので、それを経営につなげられないという構造が問題としてあると感じるのです。パッケージ製品というのは、個別の会社に最適化されて作られたものではありませんので、うまく消化しきれていないというのが現状ではないでしょうか。

新野 なるほど。ベンダの方々から「製品を入れただけではうまくいかない」というご発言が相次ぎましたが、ユーザー代表の石井さんはどう思われますか?

石井 強く同意します。製品選定だけではなく、製品を使って何をどう実現するかを含めて考えていかないといけないと思います。資産管理であれば、何を目的にしてそのためにどんな業務フローにするのか、そしてそれを実現するために利用者に理解してもらう点が重要です。

新野 業務プロセスやルールを現場に定着させるというのは、それ自体が難しい仕事ですね。日本CAの奥村さん、何かよい方法はありますか?

奥村 確かに協力しない部署、チームが出てくることもあるので難しいところはあります。一例ですが、構成管理・IT資産管理の情報を登録したことに対するメリットを用意するというやり方があります。インセンティブですね。会社から表彰されるというようなものでも構いません。そのような人間の心に訴えるような制度も必要ではないかと思います。

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