“社内銀行”で資金の凸凹を解消するGCMSとはオラクルとシティバンク銀行が金融ソリューションの協業強化

» 2008年07月11日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 日本オラクルとシティバンク銀行は6月に発表した 「Global Cash Management System」(GCMS)に関する協業を強化する方針だ。従来のソリューション提供、セミナー開催に加えて、営業資料やROI算定サービスなどを開発し、顧客への売り込みを支援する。オラクルでは100人以上のERP営業担当者がシティバンク銀行の営業担当者と共に顧客にアプローチするという。

 GCMSとは世界各国に拠点、工場、取引先を持つグローバル企業の「資金の凸凹をならすこと」と日本オラクル 製品戦略統括本部 アプリケーションビジネス推進部 ディレクター 桜本利幸氏は語る。グローバル企業では仕入れや販売、取引先とのやりとりなどで多数の通貨を使うのが一般的。進出する国によって金利が異なったり、商慣習が異なるのが普通で、グループ内であっても拠点ごとに資金が過剰になったり、資金が不足する事態に陥ることがある。拠点間で資金を移動すればこの凸凹をならすことができるが、送金手数料が負担になる。

 GCMSでは拠点、グループ間で預金残高を移動するプーリングや、債務・債権を相殺するネッティング、金融統括会社をグループ内に設立して行う支払い代行などの仕組みをITシステムで実現し、グローバル企業で発生する「資金の凸凹」を平準化することができる。いわば、“社内銀行”を作るイメージだ。

 日本オラクルとシティバンク銀行が提供するGCMSソリューションは、銀行とのインターフェイスとなり、支払い代行などを行う「Financial Gateway」(Oracle Peoplesoft)と、プーリングやネッティングの機能がある「Treasury/Cash Management」(Oracle E-Business Suite)、シティバンクの法人向けインターネット・バンキング・サービス「CitiDirect」(シティダイレクト)およびファイル伝送システム「Citi File Xchange」(シティ・ファイル・エクスチェンジ)で構成する。

 GCMSの利用企業は、社内システムで資金移動や決済指示の入力を行うと、指示内容がシティバンクに自動的に送信され、グループ間での決済や資金移動が可能になる。「オラクルでの操作がシティバンク銀行に飛んでいく」(桜本氏)という仕組みを作ることができる。

 桜本氏は「資金の凸凹で一番困っているのは日本企業」という。基幹通貨の米ドルで統一できる米国企業と異なり、日本企業が国内で決済するには円通貨が必要。しかし、日本の製造業が工場を設立することが多いアジア諸国では現地の通貨を扱う必要があるからだ。桜本氏は「マイナー通貨を扱わざるを得ない製造や流通などの中堅・中小企業もターゲットにしたい」と話す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ