日本IBM、“Yamato Lab”を訪ねてグローバル研究所への変容

» 2008年07月24日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 神奈川県大和市の中央林間駅から徒歩10分、日本IBMの大和事業所が見えてくる。東京基礎研究所、大和システム開発研究所、マイクロエレクトロニクス事業、ソフトウェア開発研究所が所属する施設で、総称として「大和研究所」と呼ばれている。その大和研究所がIBM全体のグローバル化を受けて、「Yamato Lab」に変容しようとしている。

 大和研究所を統括する日本IBMの執行役員 開発製造担当 IBMディスティングイッシュト・エンジニアの坂上好功氏は「IBMでは場所に関係なく、世界中で1つの研究開発組織になっている」と話す。「大和研究所には2つの顔がある」。1つはIBMがグローバルで展開する研究開発活動の1拠点であるYamato Lab。もう1つは日本市場に直接的に貢献する従来の大和研究所だ。

日本IBMの大和事業所

  Yamato Labが最近進めているのは、IBMのほかの研究所や他社とのコラボレーションだ。最新のTOP500でトップを獲得したスーパーコンピュータ「ロードランナー」の開発に、米国ポケプシー、ラーレー、オースチンの研究所のほか、ドイツ、中国、インドの研究所と共に参加した。Yamato Labは主にIBM PowerXCell 8i Cell Broadband Engineプロセッサを搭載したブレードサーバである「IBM BladeCenter QS22」のシステム統合を担当した。また米国医療機関の画像診断システムの開発プロジェクトにもIBMワトソン研究所と共に協力した。

IBMの世界各地の研究所

 IBMはグローバルな研究開発を効率的に行うために、開発プロセスと開発ツールの統一を進めてきた。開発プロセスは統合製品開発(Integrated Product Development)と呼ぶ手法を使っている。新製品の構想、計画、開発、評価、発表とフェイズごとに顧客視点に基づくチェックポイントを設けて、製品の市場性や質、リスクなどを確認する。

 開発ツールでは「RationalとEclipseが主要な開発環境」(坂上氏)。経営層のほか、プロダクトマネージャやアーキテクト、開発者、テスターなどがRationalの各ツールを使って、効率的で高品質な製品開発を進める。製品開発にかかわるメンバーは地理的に1カ所に集まっている必要はなく、「優れたアーキテクトがいる地域、優れた開発者がいる地域、市場がある地域の研究所が協業する」(坂上氏)という。

  Yamato Labのもう1つの顔である日本市場への貢献では、日本が得意とするモノづくり向けに「モデル駆動型システムズ・エンジニアリング」(MDSE)の研究を進めている。顧客要求や設計要求をモデリングし、人とコンピュータが同時に理解できる言語に変換する開発メソッドとツールを提供、組み込み開発の効率や品質の向上を支援する。開発要素をモデリングすることで、組み込み開発の設計、検証をコンピュータ上でシミュレーションできるようにする。「モノをつくらないモノづくり」(坂上氏)を可能にする手法だ。

日本IBMの執行役員 開発製造担当 IBMディスティングイッシュト・エンジニアの坂上好功氏

 坂上氏は「日本は優れたモノを作っている。その設計の仕方や開発の仕方をIBMのスタンダードにできないかと考えている」と話し、「日本IBMの社内プロジェクトとして顧客と実際に行っているモノづくりのプロジェクトが3つ、4つある」と明かした。

大和研究所が開発を進めている「三次元温度測定装置」。垂直方向30センチごとに設置した9つの温度センサーを使って、データセンター内の3次元温度分布を高速に測定する。温度分布や冷気流路、冷却器運用の最適化につなげることができる
針金状の温度センサー。1面ごとに9つのセンサーを設置する。この三次元温度測定装置は現在、世界に5台しかないという

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