グローバル最適経営を実現している企業はゼロアビームコンサルティングが調査結果を発表

» 2008年08月06日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 アビームコンサルティングは8月6日、報道関係者向けの説明会を実施。同社が行った調査結果から「グローバル最適経営」と「ワールドクラスIT」に関する考察を、同社 経営戦略研究センター ディレクター 木村公昭氏が発表した。

強力なトップダウン形式でグローバル最適化を実現しつつあるオラクルやP&G

 調査は、アビームコンサルティングが2008年2月から4月にかけて、日系グローバル企業13社と外資系グローバル企業4社の計17社に対して、主にCIOかIT部長を対象に1社ごとのインタビュー形式で行った。対象企業は、東証一部上場で海外売上比率が比較的高い企業で、17社中14社が製造業(エレクトロニクス4社、輸送機器3社、産業機械2社など)、3社が非製造業。

木村氏写真 アビームコンサルティング 経営戦略研究センター ディレクター 木村公昭氏

 木村氏は、なぜいまグローバル最適経営が求められるのかという点について「“郷に入れば郷に従え”という拠点分散の考えは、柔軟ではあるが重複や無駄が多く統制上の問題もある。一方、グローバル統合は効率的ではあるが、柔軟性を欠く。両者の良いとこ取りがグローバル最適化だと考えられる。しかし、グローバル最適は難しいというのも現実だ。グローバル最適に向けて、どのように組織やプロセス、ITを変えていくかがポイントだ」と説明した。

 そして木村氏は、グローバル最適経営の先進事例として米オラクルと米P&Gのケースを紹介した。オラクルの場合、真のグローバル企業を目指すためにグローバル最適を追求するマネジメントに変革することを決定。各拠点にあったIT部門は集約され、中央集権的にコントロールすることに。国や地域ごとのプロセスを標準化するために、グローバルプロセスオーナーを置いて、強い権限を付与。共通業務はシェアードサービスセンター化し、3個所あったものをインド・バンガロールの1個所にまとめた。また、世界各地に分散していたシステムを統合し、グローバルシングルインスタンスを実現したという。

 P&Gも、グローバルで標準化できるプロセスは極力標準化し、全社共通の間接業務は標準化してまずはグローバルで一括提供し、その後アウトソースした。基幹システムはSAPを導入してIT基盤を統合し、人事やSCMなどでシングルインスタンスを実現しているという。

 これらの事例について、木村氏は「両社で共通なのは、まず強いリーダーシップを発揮し、トップダウン形式で改革を遂行している点だ。そして、ビジネスプロセスを標準化・集約化し、シングルインスタンスに統合している。しかし、日本企業に同じやり方ができるかどうかは未知数だ。日本企業に適した方法もあるはずだ」と分析した。

日系グローバル企業はまだ「リージョン集約」止まり

 一方、日系グローバル企業を調査した結果からは、製薬会社や自動車会社などの単一事業型グローバル企業の場合、比較的グローバル最適化を追求しやすく、総合商社など複数事業型の場合には、「地域」「プロセス」「事業」の3軸で最適化を考える必要があるので難しいということが分かった。

 また、日系企業の場合は単一/複数事業体を問わず、コーポレートのIT部門以外に地域HQや機能HQ、事業部門ごとにIT担当者を配置しているケースが多いという。このことから、ITに関する責任者(CIO)が複数に分散しているため、グローバル最適の意思決定を行うためには、部門や地域の枠を超えて関係部門が連携する仕組みが不可欠であり、かなり経営層に近い権限が必要になってくるとした。

 さらに日系企業の場合、「現地のことは現地に任せる」という考え方が強く、国や地域ごとにプロセスが異なるケースが多いため、近年はプロセスの標準化に取り組むケースが増えているとした。その場合、事業部門共通プロセスを一気にグローバル標準に統一するのではなく、まずは日本などで試してから少しずつグローバル化していく方法も考えられる。この場合は、グローバル展開の前段階である、「リージョン集約まで進んでいる段階」だとした。

 これらの調査を分析した結果、グローバル化が進んでいない「拠点分散」レベルの企業は17社中3社、「リージョン集約」までができている企業が10社、「グローバル統合」までできている会社が4社、「グローバル最適」ができている会社は0社だった。なお、グローバル統合までできている4社はすべて外資系企業だったという。木村氏は、「調査結果から、グローバル最適ができている企業がまだないことが判明した。やはりグローバル最適化は難しいということが証明されたともいえる。いま、グローバル最適経営に一番近いのはP&Gだろうが、まだ課題があるだろう。日本はトップダウン形式が難しいと思われるので、ボトムアップ形式で浸透させるケースがよいのではないかと考えている」と分析した。

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