サンフランシスコで膝がかくんWeekly Top 10

» 2008年09月29日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 先週の@IT NewsInsightのアクセスランキングの第1位はインターネットのトラフィックの今後について解説した「“帯域食い”はP2Pから動画サービスに?」だった。ISPは従来、PtoPアプリケーションによるトラフィックの圧迫に長く悩んできたが、最近は利用者が増えている動画サービスが悩みの種になりつつあるようだ。

NewsInsight Weekly Top 10
(2008年9月21日〜9月27日)
1位 “帯域食い”はP2Pから動画サービスに?
2位 クラウド対応はOracle Database 11gを勢い付けるか
3位 Android端末とSDKが正式リリース
4位 「一生懸命仕事しようとして情報流出」の悲劇を防ぐ
5位 IT系職種が2カ月ぶりに2050円割る、派遣社員の8月平均時給
6位 ミッションクリティカルの基盤をUNIXからLinuxへ
7位 シスコが叫ぶ「コラボレーション」はどういう意味?
8位 オラクルが高パフォーマンス・ストレージ発表
9位 オラクルがクラウド参入 Amazon EC2、S3対応へ
10位 競合に蜂の一刺し、新コラボツール「Oracle Beehive」登場

 先週はオラクルの年次カンファレンス「Oracle OpenWorld 2008」が米国サンフランシスコで開催された。記者は取材する機会を得て、いくつかの記事を執筆した。ランキングの2位と8〜10位に入った記事などだ。Oracle OpenWorldはこれまで何回か取材しているが、今回ほど、うわさが飛び交ったカンファレンスはなかった。

 ブロガーとして参加された谷川耕一さんが書かれているようにOracle OpenWorld会場のモスコーンセンターには「The X is coming 09.24.08」の巨大なバナーが掲げられていた。9月24日はオラクル CEOのラリー・エリソン氏が基調講演する、Oracle OpenWorldの実質的な最終日だ。エリソン氏が何か重大な「X」を発表することは明白だ。

 オラクルはエリソン氏の講演に向けて情報を小出しにする戦略だったようだ。9月22日には米オクラルのサーバ技術担当 シニア・バイス・プレジデントのアンディ・メンデルソン(Andy Mendelsohn)氏が講演の中で「X」について「Extreme. Performance.」と説明した。講演の最後に、ふと漏らしたという表情だったが、プレゼンテーション資料を用意するなど意図的なのは間違いなかった。メンデルソン氏の講演後、プレスルームはこの「Extreme. Performance.」の話題で持ちきりになった。オラクルのティザーは成功したわけだ。

 うわさに踊らされることについては人後に落ちない記者は、多くの人と話をすると同時に関連のWebサイトで情報を確認した。分かったのはオラクルが長い期間をかけて「Extreme. Performance.」関連の話題を振りまいてきたということだ。今年に入ってからの決算会見などで、Oracle Database関連の大きな発表をOracle OpenWorldで行うと予告していた。記者は情報を総合して「クラウド対応はOracle Database 11gを勢い付けるか」の後半部分を書いた。「Extreme. Performance.」の内容を断定することは難しく、さまざまな予想を列挙するにとどめた。

 エリソン氏の発表がOracle Databaseのストレージ関連の機能強化ではないか、というのは多くの人で共通する予測だった。記者はさらにSSD(ソリッド・ステート・ドライブ)対応ではないかという情報を海外メディアのサイトから得ていた。エリソン氏の基調講演の直前にヒューレット・パッカードが講演するため、ハードウェアとOracle Databaseを組み合わせた何かで「Extreme. Performance.」を実現。そのハードウェアの中核技術がSSDではないかと思ったわけだ。

 記者の確信は、9月23日のデータベース担当バイスプレジデント マーク・タウンセンド(Mark Townsend)氏の会見で深まった。タウンセンド氏はSSDについて「5〜10年前のデータベースの限界はCPUとメモリだったがいまはI/Oが問題だ」として、「パフォーマンスを今後、10〜100倍速くするには新しい技術が必要。われわれはSSDに非常に関心を持っていて、研究所で将来の技術として研究している」と話したのだ。この話を聞いて思わず、「エリソンCEOがOracle DatabaseのSSD対応を強化、性能が最大100倍に」という記事を書こうとしたが、さすがに軽率かと思い自粛した。結果的には自粛してよかった。

 今回のOracle OpenWorldは「Extreme. Performance.」のほかに「クラウド・コンピューティング」も柱だった。Amazon Web Servicesへの対応がその内容だが、これまた製品開発担当 エグゼクティブ・バイスプレジデント チャック・ロズワット(Chuck Rozwat)氏が「アマゾンは現在のパートナー、アマゾンだけではない」と話すので、「もしかしてエリソンCEOとグーグル幹部が握手か」「オラクルがSalesforce.comをごにょごにょするのか」と想像したものだ。オラクル日本法人周辺からもクラウドではないかという情報があり、記者は勝手に色めき立っていた。

 そして9月24日。モスコーンセンターの一番広い会場を満員にしてエリソン氏の講演が始まった。発表されたのは記事にあるようにHPと共に開発した「Oracle Exadata Storage Server」と、同製品とOracle Databaseサーバを組み合わせたアプライアンス製品「HP Oracle Database Machine」だった。記者はSSDという言葉をプレゼンテーションや資料から必死に探し出そうとしたが、なかった。膝から崩れ落ちるというほどではなかったが、膝がかくんとなった。

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