コスト管理の「ABC」をソリューションで実現、SAS原価計算をより精緻に

» 2008年12月11日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 SAS Institute Japanは12月11日、原価の計算方法である活動基準原価計算(ABC)と、ABCを生かした管理手法である活動基準管理(ABM)を実現するソリューション製品の最新版「SAS Activity-Based Management 6.4」(SAS ABM)を提供開始すると発表した。多品種少量生産や流通チャネル数の増大などでコスト構造が見えづらくなる中、SAS ABMを使うことで、コストの見える化をし、経営上の次の意思決定を適切に行うことができるという。

 ABCとは企業の人、モノ、金というリソースを各業務活動で必要となる消費量、活動量とひも付けることで、商品や顧客、チャネルなど個別項目ごとの原価を明確にする考え方(用語解説)。原材料費などの直接費に対して、業務プロセスを回すための間接費の比率が1990年代以降に高まり、その間接費を明確に把握するために生まれた。伝統的な原価計算方法である標準原価計算や直接原価計算と比べて、より精緻に間接費を管理できるとされている。また、ABM(用語解説)はこのABCで明らかになった商品、顧客別の損益を元に戦略的な意思決定やコスト低減策を行う管理手法である。

SAS Institute Japanの執行役員 ビジネス開発本部長 兼 プロフェッショナルサービス本部長 宮田靖氏

 SAS Institute Japanの執行役員 ビジネス開発本部長 兼 プロフェッショナルサービス本部長 宮田靖氏は、「1990年代までの業務プロセスは比較的単純でコストも単純化して考えることができた。しかし、現在は込み入った業務プロセスや流通チャネルのために、コストの把握が困難になっている」と話した。

 宮田氏は清涼飲料水の例を挙げた。清涼飲料水は同じ商品であってもコンビニエンスストアに卸す場合と、自動販売機で販売する場合ではそのコスト構造がまったく異なる。コンビニでは1次、2次の卸を経て、そのコンビニの流通センターに納められることが多いが、自動販売機ではサプライチェーンが短い代わりに、その自動販売機を置き、維持するためのリベートや維持費が必要になる。流通チャネルによって1つの商品でもかかるコストが変わってくるのだ。1つの商品をコンビニ別にパッケージを変えるなどの多品種化も進んでいて、複雑さは増している。こうした経営環境の変化から宮田氏は「まさにいまこそABC、ABMをはじめとする経営管理手法で収益を最大化することが重要だ」と強調する。

SAS ABMの利用画面。コストの配賦フローを確認、設定できる
SAS OLAPを使った多次元分析機能
レポート機能。コスト構造を分解し、分かりやすく示す

 SAS ABMはサプライチェーン全体からコストに関するデータを収集、一元管理することで、生産から販売までのトータルのコスト構造を把握し、分析できるようにする。顧客別や商品別、チャネル別などさまざまな角度からコストを分析でき、予実管理や為替レート変動の影響分析などの経営管理に使うことができる。最新版では、コストの流れをビジュアルに表現する機能を追加し、どのリソースがどの業務、コストにひも付くかが簡単に分かるようにした。コストを割り付ける作業も例示を用意することで容易にした。また、SASのほかの製品とのデータ連係機能を強化し、「ほぼ100%の統合ができるようになった」(SAS)という。さらにSASのOLAP(多次元分析機能)をバンドルした。

 SASのビジネス開発本部 PMビジネス開発部 部長の森秀之氏によると、SAS ABMは世界で1000社が導入。国内では金融を中心に20社が採用、最近は流通の導入も増えているという。最新版SAS ABM 6.4の価格は最小構成で1000万円から(OLAP、ETL機能なしの場合)。来年度に5社の採用を目指す。

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