現実的だが最適ではない電子メールによるコラボレーションITRがホワイトペーパー公表

» 2009年01月06日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 民間調査会社のアイ・ティ・アールが1月6日に公表したホワイトペーパーで、企業内外のコラボレーションが依然として電子メールに依存していることが分かった。コラボレーションツールとして企業向けのブログやSNSが注目集めているが、ほとんど使われていないのが実状のようだ。

 調査は企業の文書作成、管理ソフトウェアの選定に関わる人を対象に2008年10月に実施。有効回答は700件だった。

 社内で使用するコラボレーション方法では電子メールにファイルを添付する方法が圧倒的に多い。複数回答では81%の回答者が使っていると答えた。社外とのやりとりでは87%が利用と回答。電子メール本文だけのコラボレーションも社内で61%、社外で69%と幅広く使われている。電子メールに次いで使われているコラボレーションツールは電話で、社内では63%、社外とのやりとりでは72%が使っていた。ファクスも社内41%、社外59%と依然として利用率は高い。

 ITシステムを使ったコラボレーションでは共有フォルダを使った利用が比較的に多い。社内では65%が利用と回答している。対して、社外とのやりとりでは24%にとどまる。

企業でのコラボレーションツールの利用状況(複数回答、ITRのホワイトペーパーから)

 コンシューマレベルではコミュニケーションツールとして定着したといえるブログやSNSは企業ではほとんど使われていないようだ。調査によると、ブログやSNS、Web会議、Wikiの利用率は社内、社外とも1割以下。ITRは「(ブログやSNSの)採用には慎重な姿勢を崩してはいない」としている。経済情勢の悪化で企業のIT投資が冷え込むことも予測され、「こうした次世代ツールが急速に普及していくことは考えられにくい」と指摘する。

 ただ、従来の電子メールを中心としたコラボレーションでいいのかという問題は残る。電子メールはファイル添付が増えるなど、「コミュニケーション手段という機能範囲を超えて、コラボレーション機能としての役割も背負わされている」(ITR)。だが電子メールは基本的に1対1の非同期コミュニケーション手段であり、多対多のコラボレーションに利用すると「並行作業が困難」「返信待ちに時間がかかり作業が滞る」「情報漏えいのリスクがある」などの問題があるとITRは指摘する。

 ITRは特に電子メールのファイル添付機能について、セキュリティ面でのリスクを問題視する。調査によると、全体の3割はデータ保護対策を何も行っていないという。データ保護対策を行っているという回答でも、アプリケーションのセキュリティ機能(パスワードによるアクセス制限)の利用が最多(社内41%、社外34%)で、ほかに「オリジナル文書ではなく、そのPDFを作成して共有する」などが挙がった。印刷や編集など細かなアクセス制限で保護しているとの回答は2割未満だった。

 ITRはこれらの調査結果から「長期的には、Web2.0やNGNなどの最新技術を利用した高度なコラボレーション環境を実現することが望ましい」としながらも、「短期的には、最も利用されている電子メールの利用環境の強化が現実的なソリューションとなる」と指摘。「電子メールにコラボレーションの構成要素である情報の整理と統合、情報の共有と伝達、セキュリティに関する機能の強化を行うことが、コラボレーションを促進し、企業の競争力を高めうる最も現実的なソリューションである」と提言する。

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