ソフトテストに必要な「産業化」―ASTA'09 in Japan開催中国、韓国、マレーシアが参加

» 2009年01月27日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 ソフトウェアの品質向上についてのNPO団体、ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER:Association of Software Test EngineeRing)は1月27日、海外のソフトウェアテスト関連団体との交流イベント「ASTA'09 in Japan」(ASTA:Asia Software Testing Alliance)を都内で開催した。中国、韓国、マレーシアの取り組みが紹介されたが、各国とも政府を挙げてソフトウェアテストの支援を行っているようだ。

 ホストとなった日本のASTERは2006年6月に設立。ソフトウェアテストに関する資格認定である「JSTQB」(Japan Software Testing Qualifications Board)の運営、ソフトウェアテストシンポジウムの主催、セミナー開催などの教育事業のほかに、ASTAのような国際連携も重要な事業として捉えている。

ASTER代表の西康晴氏

 ASTA'09 in JapanであいさつしたASTER代表の西康晴氏は、世界標準を率先して取り入れるアジア各国の取り組みは日本のテスト技術者にとっても参考になるといい、国際的な技術者の交流の重要性を説いた。ASTAは現在、日本のほかに中国、韓国、マレーシア、ベトナムが参加し、情報交換のほかに、ソフトウェアテストについての標準化活動などを行っている。

 景気後退の影響を受けてソフトウェアベンダがソフトウェアの検証やテストの工数を減らすことも予想されるが、西氏は「テストはコスト削減のノウハウの宝庫である」と話し、効率的なテストが開発コストの抑制につながると強調した。

 ASTA'09 in Japanは中国のソフトウェアテスト団体の代表であるリュウ・チン氏、韓国のテスト団体の代表、ウォニル・クォン氏、マレーシアのテスト団体代表のマストゥーラ・アブ・サマー氏が登壇し、各国の取り組みを説明した。韓国のウォニル・クォン氏は韓国政府がテスト技術者の育成を支援していることや、韓国のメーカーが中国の検証企業にテストをアウトソースするケースが増えていること、景気後退でオープンソースのテストツールに注目が集まっていることなどを紹介した。

IT検証産業協会(IVIA) 副会長の朱雀二朗氏

 国内ソフトウェアテスト業界の現状を説明したのは、ASTERと連携するIT検証産業協会(IVIA) 副会長の朱雀二朗氏。朱雀氏は日本の組み込みソフトウェア開発費のうち、34.7%(1兆2200億円)が外部委託されていると指摘(経済産業省資料から)。さらにその1兆2200億円の68%は開発元のグループ企業以外に開発が委託されていると説明した。グループ企業以外に開発が委託されている額は8300億円の計算で、ソフトウェアテストを行う検証企業はこの市場の中で活動していることになる。「いずれにせよソフトウェアテストの市場は大きい」(朱雀氏)のだ。

 だが、世界的な景気後退でそのソフトウェアテストの依頼が減る可能性がある。朱雀氏は「不況に負けないためには検証の産業化が必須」と強調した。具体的には品質管理体制が未整備な顧客メーカーに対する検証サービスの提供や、他社製品との接続性試験、高価ながら高品質なテストが可能な専用検証ツールの利用、顧客メーカーに常駐する形での検証サービスの継続的な提供などが、「顧客メーカーが独自で行う検証と、専業企業が提供する検証サービスとの差別化になる」と話した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ