MS、“絶好調製品”中堅向けERPの新版発表：機能追加した「Microsoft Dynamics AX 2009 日本語版」

[垣内郁栄，＠IT]

　マイクロソフトは1月29日、中堅企業向けのERPパッケージの新版「Microsoft Dynamics AX 2009 日本語版」を2月2日に提供開始すると発表した。Dynamics製品は「マイクロソフトの中でも数少ない絶好調製品」（マイクロソフトの執行役 専務 ゼネラルビジネス担当 窪田大介氏）といい、今後年間100社の導入を目指す。

　Dynamicsはマイクロソフトの業務アプリケーションシリーズで、ERPのAXは2007年6月に「4.0」を日本市場に投入した。ERPではほかに「Dynamics NAV」などがあるが、「AXはマルチ言語、マルチ通貨に対応し、グローバルに横展開しやすい」（マイクロソフト Dynamics事業統括本部 ソリューション推進部 シニアアカウントエグゼクティブ 鹿山剛彦氏）ことから日本で展開している。想定する企業規模は年商50億〜500億円規模。4.0は国内でこれまで30社以上が導入。英語版を合わせると国内で70〜80社が使っているという。

　AXは会計や生産管理、人事管理、サプライチェーン管理、CRM（Dynamics CRMとは別機能）など「ERPで必要とされる基本機能を備える」（同本部 マーケティング部 プロダクトマネージャ 青山瑞佳氏）。2009では新たに「経費管理」機能を搭載し、さらにOffice 2007などが採用しているリボンインターフェイスを取り入れた。業務の流れに沿った操作が可能といい、生産性を向上させるという。

　また、新たな機能として情報が配信されるポータル画面を役職別に開発できる「ロールセンター」を用意した。CEOやCFOのほか経理業務担当、営業担当、人事管理責任者など32の役職があらかじめ設定されていて、役職別に見るべき情報が表示される。この情報は標準で23種の経営指標と155種のレポートを組み合わせて作成されるが、SQL Serverのビジネスインテリジェンス機能と連携して、エンドユーザーが独自の指標やレポートを作ることもできる。

　部門内や部門間の業務連携ができるワークフロー機能も強化。標準的な業務について25種類のワークフローテンプレートを用意し、すぐに使えるようにした。また、変更履歴やログ管理など内部統制機能も強化した。

　Dynamicsシリーズはマイクロソフトのパートナーが独自ソリューションを追加して販売するケースが多い。AXは国内33社のパートナーがいて、2009については横河ソリューションズ、テクトラジャパン、日立製作所がソリューション提供を表明している。

　AX 2009は基本機能を備えた「アドバンスト マネージメント」と、会計管理機能に絞った「ビジネス エッセンシャルズ」の2つのエディションがある。アドバンスド マネージメントのファウンデーションパック（サーバライセンス）は47万7545円（推定小売価格）。ユーザーに対する課金は同時使用ライセンスで課金され、1ライセンス当たり21万5025円〜47万7545円（ユーザー数により割引される）。

　ビジネス エッセンシャルズはサーバライセンスが27万10円。同時使用ライセンスは、1ライセンス当たり12万1450円〜27万10円。

　マイクロソフトはAX 2009について顧客企業のライセンス購入額を2000万円から2500万円程度と見積もっている。年間100社の導入を目指すので、年間の売り上げ規模は20億円から30億円規模になる計算。この売り上げ規模が実現すれば国内の中堅向けERP市場で5％程度のシェアを獲得できるといい、早期達成を目指す。長期的には10％のシェア獲得を目標としている。