HPがブレードPC新製品、ジャンプアップに必要なことは「相当アグレッシブな価格」を設定

» 2009年03月04日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 日本ヒューレット・パッカードは3月4日、ブレードPCの新製品2種を発表した。ブレードPCはCPUやメモリなどの演算装置を内蔵し、サーバラックに格納。その演算結果の画面イメージをネットワーク経由でシンクライアントに転送する機能を持つ。HPはブレードPCの低消費電力化、低価格化を押し進め、市場全体の拡大を図ろうとしている。

 HPなどが提供するシンクライアントソリューションは、「1つのPCの機能をモジュール化して分解し、管理の統合やセキュリティ管理を容易にする」(日本HP クライアントソリューション統括本部 リモートクライアントソリューション本部 製品部 部長 九嶋俊一氏)ことができる。ブレードPCはその中で演算部を担当し、シンクライアントは表示部となる。画面を転送するネットワーク部では、マイクロソフトのRDP、シトリックスのICA、HPが独自開発したRGSなど複数の通信プロトコルが使われている。

シンクライアントソリューションの概要。大きく4つのモジュールに分かれる

 HPが発表したブレードPCは「HP BladeSystem bc2200 Blade PC」と「HP BladeSystem bc2800 Blade PC」。bc2200はローエンド向けの製品で、AMD Athlon プロセッサ 2200(1.3GHz)を搭載。ブレード1枚当たりの消費電力を25Wに抑えるなど低消費電力を実現した。従来製品のbc2000と比較するとパフォーマンスが24%向上しているという。価格はWindows Vista Businessがバンドルされて、1枚当たり6万5100円(税込)。

 HPはWindowsやLinuxをバンドルしないbc2200のFreeDOSモデルも3月中旬に受注開始する。サービスプロバイダなどにホワイトボックスのサーバ代わりとして提供する。予定価格はブレードPCが20枚とエンクロージャのセットで126万円。

ブレードPC「HP BladeSystem bc2200 Blade PC」

 bc2800はAMD Turion 64 X2 デュアルコア・モバイル・テクロノジ(2.3GHz)をプロセッサとして搭載するハイエンド向けの製品で、高度な計算アプリケーションやグラフィックスアプリケーションを動かすようなシンクライアント環境で使う。bc2000と比べて2.5倍のパフォーマンスを発揮するという。Windows Vista Businessがバンドルされ、価格は1枚当たり9万8700円。

ブレードPCは1台のエンクロージャに20枚搭載できる

 HPはまた、bc2200、bc2800にシトリックス・システムズ・ジャパンのデスクトップ仮想化製品「XenDesktop 3.0」のライセンスをバンドルする。「Citrix Desktop Delivery Controller」と呼ぶサーバを経由して、利用するアプリケーションに応じて適切なブレードPCがシンクライアントに割り当てられるようになる。日本HPの九嶋氏は「負荷の低いアプリケーションはXenDesktopを利用し、高負荷なアプリケーションはブレードPCを使うなどの使い分けが可能になる」と説明した。HPとシトリックスは今後1カ月以内に戦略的な協業について発表する予定だ(関連記事:HPがシトリックスとブレードPCで組む理由)。

ブレードPCとXenDesktop 3.0を組み合わせた場合の構成イメージ。Citrix Desktop Delivery ControllerでブレードPCの割り当てを行う

 日本HPの執行役員 パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション統括本部 統括本部長 松本光吉氏は「PCの利用体験が得られれば、PCの実体がどこにあるかは気にしないというユーザーが増えてきた」と話し、HPが提唱する「PCクラウド」の世界が近づきつつあることを強調する。シンクライアントソリューションはこれまで情報漏えい対策や運用管理の統合などで伸びてきた。HPが示したIDC Japanの予測によると2012年までの年平均成長率は36%。2008年はビジネスPCのうち、シンクライアントの割合は1.9%だったが、2012年には5.4%になると予測している。

 だが、松本氏はシンクライアントがさらに市場を広げるためには「価格が障壁になっている」と話す。シンクライアントはその初期導入コストが高い、というイメージが市場で持たれている。実際にそれなりの投資が必要で、松本氏も「100台以上のPCを運用する企業でないとメリットを出すのは難しい」という。「導入コストは高くても、運用管理コストの削減によって3年で元は取れる」(松本氏)が、不況のいまでは新規投資に足踏みする企業が多い。

 HPは価格という障害を乗り越えるために「相当アグレッシブな価格」(松本氏)に改定した。既存のブレードPCやシンクライアントを最大34%値下げ(平均30%)したのだ。さらに初期導入コストを低減できるように、顧客のPCを買い取るサービスや予算時期に合わせた支払いモデルなどのフィナンシャルサービスも、HPフィナンシャルサービスを通じて提供する。

発表会見は教職員向けにHPのブレードPCを約700台、シンクライアントを約1000台導入した学校法人モード学園の「コクーンホール」(上)で開催。写真は東京・西新宿の「コクーンタワー」

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