アスペクト、「顧客対応品質は、通話記録だけでは測れない」2000席規模のコンタクトセンターに品質管理製品を導入

» 2009年04月16日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本アスペクト・ソフトウェアは4月15日、コンタクトセンターの品質最適化ソリューション「Aspect Quality Management」を、ソフトバンクBBの2000席規模のコンタクトセンターに導入したと発表した。同製品の大規模な導入案件としては国内初のケースとなるが、現在ほかに5件の大規模案件の引き合いがあり、これを皮切りに積極的な拡販を図っていくという。

 Aspect Quality Managementは、ワークフォース・マネジメント、アウトバウンド最適化など、コンクタトセンターのパフォーマンスを管理、改善するための製品群「Aspect Performance Edge」の1製品。通話録音、画面キャプチャ、レポーティングなど、エージェントの対応品質管理にフォーカスした機能を持ち、日本国内では昨年6月にバージョン2.8.2をリリース。ソフトバンクBBは今回、その日本語版を導入した。

 ソフトバンクBBの執行役員 情報システム・CS統括 カスタマーサービス本部 本部長 品質管理部 本部長の彦坂昌彦氏は、導入経緯について次のように解説する。

写真 ソフトバンクBBの執行役員 情報システム・CS統括 カスタマーサービス本部 本部長 品質管理部 本部長の彦坂昌彦氏 

 「昨年秋口からの厳しい経済情勢も手伝い、企業はいちだんと厳しい市場競争にさらされている。こうした中、コンタクトセンターもさらなる効率化と対応品質、CSの向上が求められているが、弊社では積極的にセンターのIT化を推進してそれに対応している。Aspect Quality Managementを導入した理由も、IT化した労働環境の中でエージェントの業務効率、対応品質を測るうえでは、同製品が最適と判断したためだ」

 ポイントとなったのは、「通話録音と画面キャプチャ機能を併せ持ち、エージェントの稼働状況を総合的にモニタリングできる点にあった」という。

 同社では業務効率、CSの向上を目的に、コンタクトセンターの完全ペーパーレス化を推進している。一般に、エージェントはデスク周りに資料類を常備し、それらを閲覧しながら対応する例が多いが、同社では、エージェントが高品質な顧客対応をするための台本であるコールスクリプトをWebアプリケーションとして用意し、必要な資料類をすべてデスクトップで瞬時に閲覧・利用できる環境を整えている。これにより、効率的な対応と対応品質の向上、安定化を図っている形だ。

写真 ソフトバンクBBのコンタクトセンター。資料類のペーパーレス化により、エージェントのデスク周りに紙類は一切存在しない。

 Webアプリケーションも対応品質向上のための機能を追求。操作画面中央には対応すべき流れをフローチャートで表示する「フローチャートエリア」、右カラムには案内すべきスクリプトを表示する「トークエリア」、案内すべき補足事項を表示する「レクチャーエリア」を設け、必要な情報を常に閲覧できるUIを備えている。

 さらに、顧客から聞き出した情報を対応しながら素早く入力できるよう、プルダウンを多用した情報入力画面を持つほか、対応後にはそれらの情報をコピー&ペーストで即CRMに入力できる仕組みを整えている──すなわち、通話状況だけではなく、Webアプリケーションの使用状況も対応品質を左右する大きな鍵となっている。

写真 コンタクトセンターで使用しているWebアプリケーションのUI。エージェントの通話状況とともに、この機能をきちんと使えているか、両方を記録することが対応品質を測るポイントとなる。

 「IT化によって効率的な環境を実現した半面、エージェントがフローチャートに沿った対応をしているか、トークエリアに表示した内容をきちんと伝えているか、システムの各機能を正しく使えているか──通話内容とともに、システムを使うエージェントの振舞いすべてをモニタリングしなければ、対応品質を正確に測りきれない状況となっていた」(彦坂氏)

 その点、Aspect Quality Managementでは通話録音、画面キャプチャ、レポーティングといった機能が揃い、通話と画面操作を同期して記録できる。既存システムに画像キャプチャ機能だけ後付けするという選択肢もあったが、「既存システムの複雑性が高まるのを避けたかったことと、中長期的な視点からAspect Quality Managementの投資対効果を見極めて」導入に踏み切ったという。

 なお、システムインテグレーションは日本アスペクト・ソフトウェアの販売パートナーである伊藤忠テクノソリューションズが担当し、検証から導入まで約半年で完了した。現在すでに稼働しており、彦坂氏は「既存システムへの悪影響なく導入できた。その効果も着実に見えつつある」という。

写真 日本アスペクト・ソフトウェアの代表取締役社長 小枝逸人氏

 

 日本アスペクト・ソフトウェアの代表取締役社長 小枝逸人氏は、「コンタクトセンターは企業の社会的信用を担う重要な部門でありながら、エージェントの離職率が高いことが課題となっている。その点、評価基準が明確になれば、エージェントのモチベーションは確実に向上する。そして定着率が高まれば、知識・スキルの蓄積によって教育コスト低減はもとより、対応品質、CS向上に確実につながっていくはずだ。エージェントの対応状況を総合的に記録できるAspect Quality Managementは、モチベーション向上、対応品質向上の両面に大きく寄与できる」と力説した。

 なお、Aspect Quality Managementを含めた品質管理製品群、Aspect Performance Edgeの具体的な販売目標は非公開だが、メーカーやコンタクトセンターのアウトソーサーなど、現時点で5件の大規模案件の引き合いがあるという。小枝氏は「厳しい不況の中、企業はいっそうの効率・品質向上が求められている。弊社としてはコンタクトセンターの品質管理製品群、Aspect Performance Edgeの拡販に注力することで、企業のCS向上を支援していきたい」と話している。

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