富士通、シスコと戦略提携、「コミュニケーションに変革を」国内ユニファイドコミュニケーション市場でトップを狙う

» 2009年04月16日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 富士通は4月16日、シスコシステムズと2004年に締結したルータ・スイッチ分野での戦略提携を、ユニファイドコミュニケーション(以下、UC)分野まで拡大すると発表した。固定電話やモバイル機器、テレビ会議など、各種コミュニケーションツールを統合するUCの実現基盤となるソフトウェア、「Cisco Unified Communications Manager」と、日本国内で使われているモバイル端末や、富士通の既存業務アプリケーションを連携させる製品を、両社の開発部門が連携して開発・提供していくという。

 その皮切りとして16日、スマートフォンやPHSと、Cisco Unified Communications Managerを接続するアクセスユニット「VJ-110シリーズ」を発売した。5月中旬には、富士通のCRMアプリケーションと連携するミドルウェア製品を提供予定だという。今後、富士通がリードして日本におけるUC市場の創造に努め、2012年度には40%のシェア獲得を目指す。

写真 両社の強みを生かして、本格的に国内UC市場に進出する。

 近年、国内ではWiMAXや無線ブロードバンドなど、通信環境がますます整いつつあるほか、次世代PHSやスマートフォンなど、モバイル端末も多様化している。富士通の経営執行役常務の川妻庸男氏はこうした状況を指して、「いつでもどこでもコミュニケーションが取れるUCを実現するうえで、いまの日本は非常にいい環境。富士通は国内PBX市場で約750億円、2割強のシェアを持つなど、ICT分野での技術・製品開発力に強みを持ち、シスコシステムズはUCや通信技術といったコミュニケーション分野にアドバンテージがある。そうした両社の強みをつなぐ製品を開発すれば、日本のUC市場を拡大、牽引していけるはずだ」と提携の経緯を解説した。

 提携は3つのステップで展開する。2009年度上期のステップ1では、Cisco Unified Communications Managerと国内企業で多く使われているPHSやスマートフォンを連携させるアクセスユニット「VJ-110シリーズ」を提供する。このほか、Cisco Unified Communications Managerと、富士通のグループウェア「TeamWARE」やCRMと連携させるミドルウェア製品を開発・提供する。顧客企業の要望を聞きつつ、既存のPBXからCisco Unified Communications対応IPトランクへのマイグレーションを推進するという。

 2009年度下期のステップ2では、Cisco Unified Communicationsと連携する業務アプリケーションの拡充を図る。当面は情報共有アプリケーションや、医療業界向け、ホテル業界向けパッケージを展開予定だという。そして2010年度以降のステップ3では、ユーザー企業のネットワークの企画・設計から運用管理まで全面的にサポートする「ネットワーク─LCMサービス」やクラウド型サービスを展開し、より手軽にUCを活用できる環境を提供していくという。

 シスコシステムズの社長 兼 最高経営責任者のエザード・オーバービーク氏は、「企業におけるコミュニケーションは音声だけではなく、テレビ会議、Web会議、電子メールなど、さまざまな手段で行われている。こうしたツールを統合し、コミュニケーションを活性化させれば、ナレッジの有効活用により新たなビジネスの創出につなげられるはずだ。今回の富士通との提携により、顧客企業のコスト削減、生産性向上、ビジネスの変革に大きく寄与できると信じている」と述べた。

写真 左からシスコシステムズ UCマーケット ディベロップメント バイスプレジデントのリック・マッコーネル氏、オーバービーク氏、富士通の川妻氏、ネットワークサービス事業本部 プロダクト企画事業部 事業部長の鍋田政志氏

 日本国内ではUCの有用性が認識されていながら、企業文化の問題などで、なかなか浸透しない状況にある。その点、富士通は今回、国内UC市場について「2500億〜3000億円規模の市場がある」と見込んでいるほか、「今後1年間で300名のUC技術者を育成し、国内最大規模の体制で企業のUC環境構築・活用を支援する」としている。今後の展開についても「2012年度に40%のシェア獲得を目標に、提案力と技術力でユーザーに気付きを与えながらUC市場を創り出していきたい」(川妻氏)とするなど、非常に意欲的な姿勢を見せている。

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