ネットワークにおけるエコのいまジュニパーネットワークス担当者に聞く

» 2009年06月26日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 ここ数年、環境への関心が高まっている。燃料費の高騰や洞爺湖サミットの開催なども一因だが、地球温暖化の影響を肌で感じている人が多いのも大きな要因だろう。IT業界においても、温室効果ガスの排出削減を目指す“グリーンIT”への需要が高まっている。現在は、PCやCPUなどのハードウェアベンダや仮想化ベンダが中心となってグリーンITを推進しているが、昨今動画コンテンツの普及などによって急激にトラフィックが増えているネットワーク業界でも、グリーンITへの対応が注目されている。今回は、米ジュニパーネットワークでグリーンITを担当しているサービスレイヤ技術(SLT)事業グループ アーキテクチャ・バイスプレジデント オリバー・タバコリ(Oliver Tavakoli)氏に話を聞いた。

タバコリ氏写真 米ジュニパーネットワーク サービスレイヤ技術事業グループ アーキテクチャ・バイスプレジデント オリバー・タバコリ氏

 タバコリ氏はまず、ユーザーニーズの高まりについて「米国では、通信大手のベライゾンが通信業界としては世界初となるエネルギー効率基準を発表し、2009年1月から新規に購入する機器の電力消費量を20%抑えると発表した。また、『35%の企業がグリーンITに積極的だ』という調査結果も出ている。このようにユーザーもグリーンITへの注目が高まってきている。ベンダはこれに応える義務がある」と現在の状況を説明した。

 現在のネットワークにおける課題については、「データ量の急増とグローバル化によってネットワークへの依存とニーズが急増している」と分析。一方で、グリーンITの観点から「トラフィックの急増に比例して消費エネルギーも増やすわけにはいかない」という事情もある。このため、ネットワーク機器に対しては、「高いエネルギー効率性」と「機器の長寿命化」が求められているとした。

 ただし、ネットワーク機器のエネルギー効率に関する測定基準は、現在のところ不明確だ。同社では、「最大負荷時のエネルギー消費量」「アイドル時のエネルギー消費量」「負荷が変動する際のエネルギー消費量」の3つの状態におけるエネルギー効率を測定する方法が必要だと主張している。同氏は「各社がそれぞれ異なった測定方法で測っているのが現状だ。ユーザーに公平に比較してもらうためには、業界全体で測定方法を策定しなければならない。また、ピーク時におけるエネルギー消費量だけでなく、アイドル(待機)時の消費量も重要な指標だ」とコメントした。

 このようなユーザーニーズに応えるための同社の戦略は、大きく分けて「ハードウェアの再利用」「省スペース、省エネ、冷却コスト削減」「場所や時間を問わないリモートアクセス」の3つ。ハードウェアの再利用では、前述のようにハードウェアの長寿命化や部品のリサイクルを目指す。例えば、梱包の簡易化や紙マニュアルの廃止、スイッチのフレームはそのまま利用して中のカードを入れ替えるだけで最新機能を提供する手法などを実施していくとした。省スペースや冷却コスト削減では、配置機器数を最小化するソリューションの提供や、オーバースペックを強制しないなどの取り組みを行うとしている。そして、リモートアクセスを充実させることで自宅通勤や出張の廃止など、移動に伴う環境汚染の抑制を目指すという。

 ジュニパーの今後のグリーンITへのアプローチとして、タバコリ氏は「業界標準規格策定の推進」や「負荷レベルに応じたエネルギー効率改善への取り組み」などを挙げた。特に負荷レベルに応じたエネルギー効率の改善については、低トラフィック時においてはCPUコアのクロック数を下げたり、使っていないサービスPICの電源をOFFにするなどの取り組みが考えられるという。また、デバイス間で相互通信し、使っていないときは機器の電源を落とす規格「IEEE 802.3az」などにも取り組んでいくとした。

 そして、より難易度の高いチャレンジとして挙げるのが「負荷に応じた処理」で、この点に関して同氏は「トラフィック量とエネルギー量を比例しないように、機器の消費電力を抑えるのが目標だが、それを実現するためにはリアルタイムの処理が必要になる。少なくともトラフィック量をミリ秒以下で分析し、それに応じた処理能力を提供し、エネルギー量を抑えなければならないため、実現までにはまだ3〜5年程度はかかるだろう」と予測した。

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