ディザスタリカバリの復旧作業は4回に1回は失敗シマンテックが調査結果発表

» 2009年07月02日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 シマンテックは7月2日、報道関係者向けの説明会を実施し、「企業の災害対策に関する調査結果」を発表した。調査によって、日本と世界における災害対策(ディザスタリカバリ)に対する考えの違いなどが浮き彫りになった。

小林氏写真 シマンテック グローバルコンサルティングサービス リードプリンシパルコンサルタント 小林啓宣氏

 調査は米Applied Researchが担当し、2009年5月から6月にかけて実施。全世界1650社(うち日本企業50社)から回答があったという。回答企業の業種は、テクノロジ/インターネット関連企業が最も多くグローバルで32%、金融サービスが同25%、サービスプロバイダーが同14%と続く。回答者の役職はグローバルではCIO/CTOが32%で一番多いのに対して、日本は最も多いのがIT管理者の54%、CIO/CTOは8%とグローバルと比較して極端に低かった。

 これまでに経験したことのある災害の種類では、コンピュータシステムエラーが最も多く日本で88%、グローバルで79%、ウイルスやハッカーなどの外部からの脅威が同78%/71%、停電や電力障害が同68%/59%と続いた。

 ディザスタリカバリ委員会への参加者では、CIO/CTO/ITディレクタが最も多く日本が70%、グローバルも70%だった。2番目に多かったのは、部門または部署のIT管理者で同64%/49%だった。シマンテック グローバルコンサルティングサービス リードプリンシパルコンサルタント 小林啓宣氏は、「ディザスタリカバリ委員会への参加者は、年々経営陣が増えている。今年は日本で44%、グローバルで40%のCEOが参加している。CIOに関してはここ数年で30%から70%まで急増した。これは経営陣の関心がかなり高まっている証拠だろう」と分析した。

これまでに経験したことのある災害の割合。システムエラーやウイルス被害が多い
ディザスタリカバリ委員会への参加者。近年CIOやCEOなどの経営層の参加が急増しているという
ディザスタリカバリの予算配分。ローカルにおけるバックアップやアーカイブが一番多く、継続的な保護やデータリプリケーションが続く

 ディザスタリカバリへの投資額は、日本が10万ドル、グローバルが50万ドルとかなりの差が出た。また、ディザスタリカバリの予算は、日本において今後6カ月は減少が14%、横ばいが36%、増加するが50%だが、今後12カ月以降は徐々に増えていく傾向になった。この点について「ディザスタリカバリへの投資は、日本、グローバルともに依然増加傾向だが、2010年に頭打ちし横ばい傾向になっている」(小林氏)とコメントした。

 IT予算に対するディザスタリカバリへの割合は、日本が22.5%、グローバルが30%で、日本がグローバルに比べて低い数値となった。予算の内訳は、ローカルリカバリへのバックアップやアーカイブが一番多く日本で15%、グローバルで20%、ディザスタリカバリ用のバックアップが同10%/15%、継続的なデータ保護が同10%/14%となった。また、ディザスタリカバリにかかる時間は、基幹業務の復旧が日本が6時間、グローバルが3時間、大部分のバックアップと実行が同6時間、4時間、通常業務の100%の回復が同6時間、4時間とすべての項目で、日本はグローバル平均より2時間以上多くかかることが分かった。この点について小林氏は、「ディザスタリカバリの予算が、グローバルと比較して日本は全体的に少ないのが顕著になっている。米国では二重ではなく三重の冗長化を行っている企業があることなどがその背景にある。時間に関しては日ごろのテスト不足や、SIerに依存していることも一因ではないか」と解説した。

 また、ディザスタリカバリのテストに関しては、クリティカルなデータやアプリケーションを目標復旧時間や目標復旧ポイント内に回復できる確率が、日本が77.5%、グローバルが70%となり、日本・グローバルともに3〜4回に1回は失敗していることが判明した。失敗の理由は、「担当者が想定どおりに実施できなかった」が一番多く、日本は54%、グローバルが44%、「プロセスが不適切だった」が同50%/36%、「DRサイトのITインフラが十分でなかった」が同46%/29%となった。「テストの成功率が予想以上に低いという印象を受ける。経営陣の関心が高まっているのに反して、3〜4回に1回失敗しているのは問題だ。テストツールの導入など、見直す点は多い」(小林氏)とコメントした。

 昨今、導入が増えているサーバ仮想化については、「サーバの仮想化実装によってディザスタリカバリ計画の見直しが必要になった」と答えた企業は、日本が60%、グローバルが64%だった。仮想マシンにおけるバックアップの課題は、「人員や予算、容量などのリソース不足」が一番多く日本が46%、グローバルが51%、「効率的な技術やハードウェア/ソフトウェアの不足」が同30%/33%、「時間がかかり過ぎる」が同24%/16%となった。

 小林氏は総括として、「今回の調査結果で一番強く感じた点は、目標時間やその達成度がグローバルと比較して日本がかなり低い点だ。これでも数年前に比べると目標は高くなってきているが、グローバルはもっと高い目標を持って、それを実行しようとしている。この点に代表されるように、日本とグローバルではディザスタリカバリに対する温度差を感じる。一方で、経営層の関心が高まっているのも事実なので、今後の日本はディザスタリカバリに対する高い目標とその実現を課題にしていくべきだろう」と述べた。

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