データセンターの生産性を表す新指標「DCP」を発表グリーングリッドが現状を報告

» 2009年07月08日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 グリーングリッドは7月8日、記者会見を開催し、グローバルや日本における活動を報告した。会見では、新設されたエグゼクティブディレクターの職に就任したローレンス・バータル(Lawrence Vertal)氏が現況と今後の抱負などについて語った。

バータル氏写真 グリーングリッド エグゼクティブディレクター ローレンス・バータル氏

 グリーングリッドはデータセンターやIT機器の省エネを推進する団体で、日本では2008年5月に設立された。バータル氏は冒頭、「私がエグゼクティブディレクターに就任して最初の仕事がこの記者会見だ。就任最初の仕事に日本を選ぶほど、グリーングリッドは日本に期待しているし、重要な拠点だと考えている」とコメント。現在、グリーングリッドが注力している点として、「データセンターデザインガイド」と「PUEやDCiEなどの指標の強化」を挙げた。

 データセンターデザインガイドは、エネルギー効率の高いデータセンターの運営と構築するための指針。指標はPUEやDCiEなどが有名だが、これの精度を上げる取り組みを行っているという。「PUEやDCiEなどは世界中で採用が広がっており、影響力を強めている。ただし、まだ定義があいまいだという意見もあるので、定義がしっかりすればユーザーが選択する際に重要な指標になるだろう」(バータル氏)とコメントした。

 2009年にグリーングリッドが特に注力するのは「指標」「ツール」「トレーニング」「協力関係」の4分野。指標では、前述のPUEとDCiEの精度を上げていくほか、新しい指標として「DCP(Data Center Productivity)」を策定するとした。DCPはデータセンターの生産性を測る指標で、データセンターの「有効作業量」を「設備全体の消費電力」で割ったもの。グリーングリッド 技術委員会副代表 ジョン・ハース(Jon Haas)氏は、「DCPは『設備全体において、IT機器がどの程度稼働しているのか』を測れる指標でもある。この有効性をアピールできれば、採用も増えていくはずだ。PUEやDCiEは認知度が向上し、国の当局が採用しているケースも出てきている」と説明した。

DCP指標 開発中のDCPの指標の算定イメージ

 続いて、日本技術委員会代表 田口栄治氏が日本におけるグリーングリッドの活動を報告。日本では2008年5月に本格始動を開始した後、主に現状分析を実施。国内10のデータセンターを対象に行った「データセンターベースライン調査2008」や、経済産業省と共同で行った指標調査などを実施したという。

 データセンターベースライン調査2008によると、データセンターの熱・冷却・電力は課題の上位を占めており、データセンターの約70%が総電力消費量、温度・湿度を計測していることが分かった。また、PUEの認知度は69%で、PUEを活用している割合は40%(グローバルでは69%)だった。この点について、田口氏は「日本ではPUEが広がりだしたのが2008年なのにもかかわらず40%も普及している点は評価できる。また、日本では高品位のデータセンターの割合が他国より多い点も注目できる。また、一般的に良いデータセンターほど、冗長化などをきちんとやっている結果、PUEは高い傾向があるのだが、日本では逆にPUEが低かった。このことから、まだまだ一般のデータセンターにおけるエネルギー効率は改善の余地が大きいことが分かる」とコメントした。

 今後の日本における活動予定では、8月初旬にデータセンターの所在地を入れると「外気を入れて有効活用することで、データセンターの消費電力削減の目安を示す」ことが可能な「フリークーリングマップ日本版」をリリースする予定だ。具体的には、日本国内42箇所のデータを収集し、利用者はデータセンターの郵便番号を入れるだけで消費電力削減の目安を知ることができるという。また、9月にはオンラインスクールである「グリーングリッドアカデミー日本語版」を公開する。このオンラインスクールでは、データセンター改善ポイントなどを無料で利用可能だ。

 そして、「データセンターデザインガイド」の日本分科会を発足したという。同分科会では、「日本の法律の影響を受けやすい、電源や空調、構造などの施設関係について、日本独自のアレンジを加えて対応させていく。また、運用やデータセンター事業者の視点も取り入れていく。2010年のTech Summitまでにドラフトを作成し公開する予定だ。今後は日本データセンター協会や地方自治体との連携も強化していく」(田口氏)と語り、今後の方針を示した。

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