マイクロソフト、環境への取り組みを発表Hyper-V活用で88%の電力削減した事例も

» 2009年07月28日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 マイクロソフトは7月23日、環境への取り組みに対する説明を行った。同社 政策企画本部 竹原正篤氏は「マイクロソフトは、経営が高いプライオリティで環境保護へ取り組んでいる。ソフトウェア企業として、世界中の企業や個人の環境保護活動を可能な限り支援していきたい。当社自身も環境保護に取り組み、当社の売上高に対するCO2排出量を2012年までに2007年比で少なくとも30%削減するという目標を設定した」と語り、同社の環境保護への姿勢を示した。

加治佐氏写真 マイクロソフト 最高技術責任者
加治佐俊一氏

 マイクロソフトの環境保護活動の柱は、「ITを活用したエネルギー効率の向上」「技術的進歩の礎となる研究開発」「環境に対する責任ある企業活動」の3つ。「ITを活用したエネルギー効率の向上」では、ITを活用することで急増するIT機器の消費電力を抑制しようという取り組み。グリーンIT推進協議会の試算によると、IT機器の消費電力量は2025年までに約5.2倍になると予測している。このような事態を緩和すべく、マイクロソフトでは、次期OS「Windows 7」や次期サーバOS「Windows Server 2008 R2」に省エネ機能を搭載したという。

 例えば、Windows 7では、新しい電源管理機能を提供するほか、ポリシー管理製品を活用することで電源設定の標準化を実現。Wake On LANなどデスクトップの電源管理機能を強化するなど、各種機能を追加したことで省エネ機能を強化したという。また、動作中の消費電力も削減。Windows Vista SP1と比較して、DVD再生時のバッテリ持続時間を平均13.1%改善したという。そのほか、電源設定を分析するための機能として「電源効率の診断レポート」機能を提供。Windows 7の電源設定が効率的なものになっているかを自動的に分析してレポート化する機能も提供する。

 マイクロソフト 最高技術責任者 加治佐俊一氏は、「省電力の前提として、『使う必要のないときにいかにPCを休ませるか』を考えた機能を提供する。Vistaではスタンバイとハイバネーションを組み合わせることで省エネ効果を上げたが、Windows 7ではこれをさらに進化させる」と説明した。

 Windows 7ベースの次期サーバOS「Windows Server 2008 R2」でも、省エネ機能を強化する。具体的には「Core Parking」や「プロセッサ周波数管理」「SANブート対応によるローカルディスクレス」などの各種機能を提供する。Core Parkingは、論理コアのワークロードをトラッキングし、使用されていないコアはスリープさせることで消費電力を抑制する技術。プロセッサ周波数管理は、サーバの負荷に応じてCPUコアの周波数を管理する機能。また、SANブートに対応し、ローカルディスクレスとなったことでも消費電力削減に貢献できているという。

 また、Windows Server 2008 R2の特徴である仮想化ソフト「Hyper-V 2.0」を活用した仮想化機能によるサーバの省電力事例を紹介した。新潟ポリマー株式会社は、環境対策の観点からHyper-Vを導入し、サーバ台数を10分の1に削減。サーバの消費電力が従来は1400W使っていたものを160Wにまで削減し、88%の削減効果を出したという。そのほか、エネルギー削減率を可視化するツールを提供し、CO2排出量の試算をできるようにする。

画面イメージ Webサイト上で提供しているエネルギー削減率を可視化するウィジェット

 マイクロソフト自身の取り組みとして、同社データセンターにおけるグリーン化を促進するという。同社は現在、さまざまなサービスを提供している。例えば、「Live Searchの検索件数は月間20億件」「MSNのページビュー月間100億」「Live IDの認証件数、月間300億回」「インスタントメッセージの処理数、月間2400億回」にのぼり、毎月1万台のサーバを増強している状態だという。そのような状況下、同社ではデータセンターのグリーン化を促進。具体的には水力発電だけを使用し、CO2を排出しない「カーボンニュートラルデータセンター」を米国ワシントン州に開設したり、外気を利用した冷却装置や再生可能エネルギーを活用することで50%のエネルギー削減を実現するデータセンターをアイルランドで開設中だとした。

 加治佐氏は、「移動可能なコンテナ式データセンターや、Atom 330を採用したデータセンターなど、グリーン化を促進するためにさまざまな取り組みを行っている。また、データセンター内の複数個所にセンサーを設置し、温度湿度管理する調査なども実施中だ。これらの取り組みによって、グリーンITの技術的進歩となる基礎研究に役立てたい」と説明した。

 3つ目の柱となる「環境に対する責任ある企業活動」では、ボリュームライセンスプログラムソフトウェアの受け取りを従来のCD/DVDからダウンロード中心にしていく「Digital by Choice」や、中古PCにWindows OSのセカンダリーライセンスを提供する「MARプログラム」などを実施。社内における活動では、PCのスリープモードの利用促進や、ゴミ分別、オフィスエリア空調標準設定の導入など、さまざまな取り組みを実施しているとした。

 また、現在調布や新宿にある研究施設などを、2009年10月をめどに「マイクロソフト大手町テクノロジーセンター」に集約。同所では、顧客にグリーンITソリューションを提案するほか、エンタープライズ関係の検証なども実施するとした。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ