Pro*CやPL/SQLに完全互換対応したインメモリデータベース新製品スタンドアロンとキャッシュ型の2種類を用意

» 2009年08月04日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 日本オラクルは8月4日、インメモリデータベース製品「Oracle TimesTen In-Memory Database 11g」とOracle Database 11gのデータベースキャッシング機能オプションである「Oracle In-Memory Database Cache 11g」を8月7日に提供開始すると発表した。

ニーマット氏写真 米オラクル リアルタイム&エンベデッド データベース製品開発担当 バイスプレジデント マリーアン・ニーマット氏

 今回の新製品は、Oracle Databaseのないスタンドアロン環境でもインメモリデータベース機能を提供できる「Oracle TimesTen In-Memory Database 11g」と、Oracle Database 11gのデータベースキャッシングとして機能することでインメモリデータベース機能を提供する「Oracle In-Memory Database Cache 11g」の2種類。価格は、両製品ともプロセッサ当たり451万900円。

 通常、アプリケーションがデータベースと通信する際、アプリケーションはネットワーク越しにデータベースへアクセスし、メモリ上にデータがない場合にはデータベースのハードディスクにアクセスしてデータを取り出す。一方、今回発表された両製品は、アプリケーションサーバ上の物理メモリにデータベースを配置。メモリ上で処理されるので、高速化が可能だという。

 In-Memory Database Cache 11gはOracle Databaseのキャッシュとして動作し、Oracle Databaseを高速化させるためのオプションツール。アプリケーションとOracle Databaseの間に設置することで、頻繁にアクセスするテーブルなどをすべて物理メモリ上に展開しキャッシュとして保持することで、データベースへのアクセス頻度を減らして高速化する製品だ。In-Memory Database Cache 11gの新機能は主に「キャッシュグリッドに対応」「Pro*C、OCI、PL/SQLに対応」「Oracle Clusterwareに対応」の3点。

 キャッシュグリッドとは、インメモリデータベース上に複数のグリッドノードを構築。各グリッドノード間はPtoP形式で通信を行い、それぞれがキャッシュデータを持つ。キャッシュデータは状況に応じてグリッドノード間で再配置され、データを更新した際にはOracle Databaseにデータをプッシュする仕組み。例えば、アプリケーションからグリッドノードAに対してデータBの要求が来た場合、そのノードAにデータBがあればそのまま返す。しかし、ノードAにない場合には、そのほかのノードに探しにいく。そして、それでもない場合にOracle Databaseへデータを取りにいく。このように、できる限りグリッドノード間でデータ取得を完結させるため、非常に高速なデータ取得が可能になるという。

 米オラクル リアルタイム&エンベデッド データベース製品開発担当 バイスプレジデント マリーアン・ニーマット(Marie-Anne Neimat)氏は、「キャッシュデータは利用状況に応じて自動的に再配置されるので、常に最速でデータを取得できる状態になっている。ノード間はPtoPで通信しあっているので、データの一貫性や可用性も担保した。この機能を採用したカスタマーサポートセンターは、In-Memory Database Cache 11gを採用したことでユーザーからのコールに対して非常に迅速に回答できるようになり、顧客満足度が向上した」と説明した。

 また、TimesTen In-Memory Database 11gとIn-Memory Database Cache 11gの両製品では新たにPro*C、OCI(Oracle Call Interface)、PL/SQLに対応した。PL/SQL対応では、Oracle TimesTenデータベース内にOracle Databaseと同じPL/SQLエンジンを実装し、完全互換を実現した。日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長 三澤智光氏は、「従来もOCIなどに対応していたが、若干違いがあって多少のカスタマイズが必要だった。今回はこれらに完全互換対応したので、カスタマイズがほとんど必要ない。これでOracle TimesTenへの移行の敷居がかなり下がったはず」と語り、この変更の重要性を強調した。

 また、オラクルの無料クラスタソフトウェアである「Oracle Clusterware」と連携したことで、障害検出時に自動的にフェイルオーバーする機能を搭載。問題発生時には、スタンバイノードを自動的にアクティブノードへ切り替えるほか、Oracle Databaseとのデータ連携を持続し、アプリケーションを止めずに運用できるという。

 今回発表の2製品に関する日本における製品戦略は、まずNECや日立製作所などとのパートナー協業を強化して、In-Memory Database Cacheを推進するほか、アセスメントサービス「Roadmap to Extreme Performance」(OLTP)を積極展開していくという。OLTPは、「現在のシステムを査定して、インメモリ型へ移行することでどの程度高速化し、コスト削減できるのかを理解してもらう無料サービス」(三澤氏)。このアセスメントサービスで、ユーザーにメリットを理解してもらい、In-Memory Database Cacheを推進していきたいという。

 一方、オラクルはインメモリ型のデータグリッド製品「Oracle Coherence」を持つ。このOracle Coherenceと今回製品とのすみわけについてニーマット氏は、「アプリケーションデザインがオブジェクト指向の場合にはCoherence、リレーショナル型でSQLを利用するのであればTimesTen」だと説明。三澤氏は「日本は旧来の基幹系システムを引きずっているのでいまだにSQL型が多い。従って、日本では今回の製品がマッチする企業が多いだろう」と補足した。

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