富士通、非定型業務も含めてBPM実践を支援ビジネスプロセス管理ソフトウェアの最新版を発表

» 2009年11月09日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 富士通は11月9日、ビジネスプロセス管理ソフトウェア「Interstage Business Process Manager V11」を発表した。バージョン10までは定型業務のプロセス管理に重点を置いていたが、今回は人のスキルや判断に負う傾向が強い「非定型業務」の管理機能も装備した。これまで“見える化”されていなかった業務プロセスを把握・管理可能とすることで、業務効率向上を強力に後押しするという。

非定型業務が業務全体の8割を占める!?

 昨今の厳しい経済状況を受けて、多くの企業が業務効率化に取り組んでいる。一方で透明性の高い企業会計、情報セキュリティ対策などCSRへの配慮も欠かせない。こうした課題解決のカギになるとして、いま多くの企業が最優先課題としているのが無駄のない、より合理的な業務プロセスへの変革だ。

 ただ、その実現のためには、業務プロセス全体の可視化が不可欠となる。しかし現実には、「人のスキルや判断に負う“非定型業務”の占める割合が大きく、これを正確に把握・管理できなかった点が、BPM(ビジネスプロセス・マネジメント)や支援製品の1つの課題とされていた」(富士通 ミドルウェア事業本部 アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長の矢作毅彦氏)という。

 非定型業務とは、例えば流通業において「営業スタッフが顧客企業に見積もりを出すために、社内の関係部門のスタッフとコストや納期などを交渉する」、出版業のカタログ制作において「商品ごとに取引先や修正指示が変わるため、マネージャが臨機応変にスタッフに指示を出す」といった業務を指す。富士通の顧客企業へのアンケートによると、こうした非定型業務が「業務全体の81%を占める」という調査結果もあるという。

 そこでInterstage Business Process Manager V11では、従来から提供してきた定型業務のプロセス管理機能に、非定型業務の管理機能を追加した。具体的には「納期相談」「修正指示」といった非定型業務も含めた業務プロセスの全体像と、各業務の内容、その担当者など、業務プロセス管理に必要な全情報をシステムに定義することで、その進ちょく管理を支援する。また、各業務の実行記録をログとして蓄積することで、業務プロセスの可視化、分析も実現するという。

写真 現場の非定型業務を明確化し、ITの力で確実に管理、効率化する

 例えば、現場を統括するマネージャ用の管理画面では、「プロセス全体のうち、どのフェイズにあるか」を示すマップや、自分が統括すべき「業務一覧」「各スタッフの作業件数」をグラフ化したデータなどが表示される。

 各データから詳細データまでドリルダウンすることもできる。例えば「業務一覧」のうち「カタログ修正指示」をクリックすると、「26ページの写真差し替え」「34ページのデータ差し替え」といった具合に、修正個所・内容の一覧表が表示される。各スタッフの作業状況についても、作業件数を示すグラフをクリックしてデータをドリルダウンすれば、各担当者・各作業の進ちょく状況など、さまざまなデータを視覚的に把握できる仕組みだ。

写真 マネージャ用の管理画面。各スタッフの業務状況をひと目で把握できる。詳細データへのドリルダウンや、各スタッフへの指示出しも可能だ

 また、日々蓄積されていく業務遂行データを基に、「各スタッフが日ごろ担当している業務内容」を「かかわった時間」単位でグラフ化するなど、各スタッフの経験やスキル特性を知ることも可能だ。

 「すなわち、マネージャはこの管理画面1つで、統括すべき業務を把握し、各担当者の業務状況、スキル特性などを見ながら、最適な担当者を決められる。さらに、この管理画面上から望んだ担当者に業務をアサインすることもできる。非定型業務も含めた管理により、これまで寸断されがちだった業務プロセスの流れ全体の管理を確実化するほか、現場業務のとりこぼしやミスの削減、各スタッフの作業平準化にも大きく寄与する」(富士通 ミドルウェア事業本部 アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部 吉澤庸一氏)

 また、各現場業務には“効率的に行うためのコツ”など、その業務を普段担当している者にしか分からない暗黙知が存在する。「そうしたナレッジを日常的に入力してもらい、各プロセスとひも付けて蓄積・管理することで、第三者がすぐに使えるよう配慮した情報共有機能も装備した」(吉澤氏)という。

 ただ、各業務を細かく定義し、シビアに管理する方法は、ある種のあいまいさを重んじてきた日本企業には馴染みにくい側面もある。人に負う部分が大きい非定型業務では特にその傾向が強いのではないだろうか。

写真 富士通 ミドルウェア事業本部 アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部 事業部長の矢作毅彦氏

 この点について矢作氏は、「確かに欧米の企業に比べるとそうした傾向にあるが、昨今のような経済状況の中、企業が勝ち残るためには、合理的な業務体制に変革するBPMが重要なカギとなっている。その点、Version10までは“効率的な業務基盤の確立”を主目的としてきたが、Version11では“改善へのさらなる気付き”を得てもらうことを重視して開発した。つまり、非定型業務も含めた管理は日本企業にとってハードルとなるかもしれないが、日々そうした“気付き”を得ることが、自ずとプロセスの継続的改善、すなわちBPM実践を促していくはずだ」と解説する。

 価格は600万円から。データを柔軟に分析できるInterstage Business Process Manager Analytics V11は300万円からで、ともに2010年1月下旬に発売する。なお、北米ではInterstage Business Process Managerをパブリッククラウドサービスとして提供してきたが、2008年からは米セールスフォース・ドットコムと連携し、“Interstage Business Process Managerを含めて必要なサービスを必要なときに選んで利用できる”新しいパブリッククラウドサービスも実験的に展開している。これを受けて、今後は日本でのクラウド展開についても積極的に検討していきたいという。

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