現場感覚を生かした予算編成で、収益とやる気を向上日本インフォア、予算管理製品「Infor PM 10」の説明会を実施

» 2010年06月15日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本インフォア・グローバルソリューションズが6月11日に開催したセミナーで、同社の予算管理製品「Infor PM 10」を採用した中堅スーパーマーケット・チェーンのエコスが講演を行った。従来、手作業で行っていた予算編成業務の効率化により予算編成サイクルを短縮、週次単位で予実を見える化して予算編成の精度を高められるとともに、経費のコントロールも強化できる見込みだという。

Excelを使った手作業の予算編成では、市場とのタイムラグが……

 一般に予算編成は、経理部などが各拠点から業務実績データを収集し、それをまとめたレポートを基に経営層が予算計画を立案、そのうえで各拠点に目標予算を通達する仕組みとなっている。ただ、この各拠点とのデータのやり取りを、Excelと電子メールなどを使って手作業で行っているために、経理部が実績をまとめる際に一定の手間や時間がかかり、市場状況との間にタイムラグが生じてしまう、といった問題は多くの企業で指摘されてきた。また、この方法では、客足の流れなどを見極める“現場感覚”を目標予算に反映させにくいため、拠点側にとっては「現場の実感」が十分に反映されない“一方通行の戦略”になりがちという課題もあった。

 これを解決するためには、2つのポイントがあるとされている。1つは現場と経営層の間で、極力短いスパンで目標予算のすり合わせを行うこと。もう1つは、全社目標を起点にKPI(重要業績評価指標)を設定し、それに基づいて中間管理層、現場層など、各職級に応じたKPIを詳細に定義しておくことだ。それを指標として実績値を分析し、次の改善に役立てるPDCAサイクルを回すことで、全組織を全社目標という1つの方向に向けてリードしつつ、継続的な改善を狙う。

写真 予算編成業務の考え方。経営層と現場層で予算案をすり合わせ、実績に基づいて短いスパンでPDCAサイクルを回す

 日本インフォアが販売している「Infor PM 10」はこれらの実現を支援する製品であり、流通・小売業をはじめ、すでに多くの採用実績があるという。「戦略管理」「予算計画」「予算編成」「連結管理」「分析・レポーティング」という機能別にモジュールをそろえた一連の製品群となっており、これらを連携させることで、予算管理のPDCAサイクルをスピーディに運用できる仕組みとしている。

 中でも、核となるのは「戦略管理」「予算計画」「予算編成」だ。まず「戦略管理」は、全社目標やあらかじめ定めたKPIなどを設定することで、「全社戦略から現場層まで」各KPIの因果関係をツリー状のマップで可視化できるという。一方「予算計画」は、過去実績などのデータに基づいて、事業計画を任意にシミュレーションできるモジュール。「予算編成」は通知された目標予算を基に、各拠点側が目標予算を入力・申請・承認する機能を提供する。これらにより、予算収集作業を迅速化・確実化するほか、収集したデータを単一のデータベースに蓄積することで、本社で容易に一元管理できる仕組みとしている。

写真 Infor PM 10の構成イメージ

 こうした各モジュールの組み合わせにより、現場と経営層の目標予算のすり合わせを短いスパンで行えるほか、「全社目標に対して何がボトルネックとなっているのか」KPIと実績データを基に、関係者が随時把握・共有できることが特徴だという。

予算編成の効率化で「“全員参画型”の経営理念を一層強化できる」

 西東京地区、茨城県を中心に拠点展開するスーパーマーケット・チェーン、エコスでは以上の機能に着目し、約半年でInfor PM 10の導入を完了、この6月から本格稼働に乗り出している。同社 取締役 経営企画部長の三吉敏郎氏は導入した経緯について、「やはり予算編成業務の迅速化、効率化を考えたことがきっかけだ」と解説する。

 従来、同社ではガイド予算策定から編成作業を終えるまでに約3カ月を要していたほか、完成後も現場からの頻繁な修正依頼があった。また、エコス単体の66店舗(グループ連結では101店舗)からの予算データは例によってExcelと電子メールで収集していたため、データ集計に一定の時間がかかっていた。そこで「予算データの収集、配布、管理などをExcelや電子メールに頼ることなく、一連のモジュールを通じて、スピーディかつ確実に遂行できる点に着目した」という。

写真 エコス 取締役 経営企画部長 兼 情報システム部管掌 三吉敏郎氏

 ただ、三吉氏は「真の目的は、弊社の経営理念の一つである“現場参画型”の経営を一層強化することにある」と強調する。

 「流通/小売業界にとって、収益を上げるうえでは、“現場スタッフの感覚”が非常に重要なポイントとなる。例えば各店舗の店長、複数店舗を統括するエリアマネージャー、品揃えを考えるバイヤーなど、それぞれの立場の人間が、マーケットを見る独自の視点を持っている。こうした視点を確実に予算に反映でき、かつ、必要な情報を随時共有できる仕組みがあれば、より市場の動きに合致した予算編成を実現できると考えた。予実に対するスタッフの意識付け、責任感の醸成という狙いも大きい」

 また、“現場の肌感覚”をシステマティックに収集できるInfor PM 10のコンセプトが、「各スタッフの技術や知見を尊重しながら、業務を“仕組み”として動かすエコスの文化にマッチした」ことも重視したという。

 三吉氏は、「予算収集・配分のシステム化・自動化による編成サイクルの短縮化と、予算の見直し頻度の向上により、より精度の高い計画を実施できると期待している。何より“全員参画型”経営という理念に基づいたシステム選択と、それによる全スタッフの当事者意識向上は、必ず数字に反映されてくると思う」と力説。“ビジョンありき”のシステム選択の重要性を示唆するとともに、今後の進展に対する自信をうかがわせた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ