ライトナウ、「ITを介した“おもてなし”」が生き残りの必須条件CEOに聞く、SaaS型CRM製品「RightNow CX」の開発理念

» 2010年10月08日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 製品・サービスがコモディティ化するスピードが速い近年、機能、価格で差別化を図ることは年々難しくなっている。こうした中、収益向上のキーワードとして再び注目を集めているのが「顧客経験価値」――あらゆる顧客接点で満足度の高い対応を行うことで、企業に対するロイヤリティを高め、感情的なつながりを強化する――という概念だ。

 では、Eコマースやソーシャルネットワークなどが日常生活に深く浸透しているいま、“ITを介した顧客接点”において「顧客経験価値」を向上させるポイントはどこにあるのだろうか。顧客経験価値向上を開発コンセプトとしたオンデマンドCRM製品を提供するライトナウ・テクノロジーズのCEO兼創業者 グレッグ・ジアンフォルテ氏に話を聞いた。

TwitterやSNSで増大したクチコミのパワー

 企業にとって、顧客対応の在り方が“両刃の剣”となることは以前から認知されてきたことだが、昨今はTwitterやソーシャルネットワークの浸透により、クチコミが拡大するスピード、パワーが大幅に増している。このように顧客対応の在り方が、ブランドイメージや収益に多大な影響を及ぼすようになった状況について、ジアンフォルテ氏は「企業より、消費者の方が強大な力を持つようになった」と表現する。

写真 ライトナウ・テクノロジーズのCEO兼創業者 グレッグ・ジアンフォルテ氏

 「調査会社 ハリスインタラクティブの調べによると、低質な顧客対応を経験した消費者の86%が『もうその会社とは取り引きをしない』と回答し、さらにそのうちの82%が『その体験を知り合いに伝える』と答えている。加えて、TwitterやSNSなどを使って、1人の消費者が不特定多数に向けて即座に情報発信できる環境が整っているいま、企業は一度の望ましくない対応によって、1人の顧客を失うばかりか、その顧客に抱かせてしまった不快な感情を瞬時に100万人規模の人々に伝ぱさせてしまう可能性もある、と考えるべきだ」

 むろん、逆のことも言える。望ましい対応ができれば、それは良いクチコミとなって多くの人々の間に広がっていく。良くも悪くもクチコミのパワーが増しているのだ。また、同氏は「重要なのは、優れたホスピタリティを消費者が積極的に求めているという事実だ」と付け加え、「『良いカスタマエクスペリエンスには、もっとお金を払っても良い』と回答した人が全調査対象の6割に上った」という同調査の別データを指し示す。

 「つまり、もはや企業は商品力、価格訴求力だけでは生き残れないということだ。差別化を図り、安定的に収益を獲得していくためには、日ごろから顧客の要望や気持ちに沿った対応を行うことで、ロイヤリティやエンゲージメントを高めてもらうことが大きなポイントとなる」

消費者同士、消費者と企業のコミュニティ作りに必要な機能を網羅

 同社が提供しているクラウド型のカスタマエクスペリエンス製品「RightNow CX」も、以上のような考えに基づき、Web、ソーシャルメディア、コンタクトセンターという3つの顧客接点で「いかにホスピタリティの高い対応を実現するか」をコンセプトに開発した製品だという。

 5つの製品で構成され、メインとなるのは、自社Webサイトの“消費者にとっての”使い勝手、快適性を高める「RightNow Web Experience」、ソーシャルウェブで話されている内容をモニタリングし、即座に対応可能な環境を整える「RightNow Social Experience」、電話、電子メール、チャットなどマルチチャネルでのコンタクトに対して、一貫性ある対応を実現する「RightNow Contact Center Experience」の3製品だ。さらに、これらを連携させて、販売、サポート、マーケティング関連業務といったバックオフィスの業務プロセスに統合できる「RightNow Engage」と、以上4製品をSaaS提供する際の提供基盤となる「RightNow CX Cloud Platform」で構成する。

写真 クラウド型のカスタマエクスペリエンス製品「RightNow CX」の製品構成。2010年9月には最新版「RightNow CX August 2010」を発表。顧客対応に関する業務プロセスやワークフローなどを「RightNow CX」のクラウド・プラットフォーム上で、アプリケーションとして自由に構築できる新機能も追加した

 このうち、RightNow Web Experienceは、Eコマースサイトや商品情報サイトにおいて、顧客が情報を調べる際に必要となる、ビデオやFlash、地図など、各種機能をウィジェットとして用意し、企業側が求める要件に応じて容易に機能をサイトに反映できる「カスタマポータル」や、オペレータと消費者のWeb画面を同期させ、きめ細かな案内を支援する「コ・ブラウズ」といった機能を備えている。

 また、「一定の時間以上、サイトに滞在している」「手の空いているオペレータがいる」といった条件を設定しておくと、 それに応じてWebサイトを閲覧中の消費者をプロアクティブにチャットに招待する「プロアクティブチャット」機能も持ち、「消費者がストレスなく必要な情報を入手できるWebサイトを、効率的に構築・整備できる」という。

 特徴的なのは「RightNow Social Experience」だ。商品・サービス関連の特定の話題について、消費者同士が自社Web上で情報交換する場を提供する「ディスカッションフォーラム」機能や、企業が作成したコンテンツ、ユーザーから寄せられたナレッジなど、有用な情報を蓄積し、随時検索できるリポジトリ「リソースライブラリ」機能などを用意し、自社Webに一種のコミュニティサイト機能を容易に構築することができるという。

 さらに、「RightNow Engage」を活用すれば、フォーラムで十分な回答が得られなかった質問について、コンタクトセンターにスムーズにエスカレーションする仕組みを築いたり、従来はリアルの世界で行っていたグループディスカッションをWeb上で行い、データを整理・蓄積することもできる。これにより、「消費者の生の声を、従来よりスピーディかつ効率的に商品開発やセールスプロモーションにフィードバックできる環境が整う」という。

Twitterでつぶやかれたクレームに即座に対応

 こうした中でも、「RightNow Social Experience」の「クラウドモニター」機能は、多くのユーザー企業から支持を獲得しているという。これはTwitterやYouTubeなどで話されている内容のうち、自社に関連性のある話題をモニタリングし、「商品名」「企業名」など、任意に定めた検索ワードによって、随時、自社にとって重要な書き込みやつぶやきを発見できるという機能だ。

 コンタクトセンターのオペレータが各種コミュニティサイトの書き込みやTwitterのつぶやきを監視し、自社の商品・サービスに対する不満や疑問を発見し次第、即座に解決する、といった活用法もある。ある銀行では、ATMを利用できなかった消費者がその不満をTwitterでつぶやいた際、コンタクトセンターのオペレータがそれを発見し、すぐさまその消費者にTwitter上で謝罪するとともに、保守部門に連絡、そのATMの稼働を支えているサーバをリブートさせてその場で問題を解決した、という“実話”もあるいう。

写真 「Twitterでの顧客対応も重要なポイントなる」と指摘するジアンフォルテ氏

 「Twitter対応というと、一部の先進的な事例に過ぎないといった印象もあるかもしれない。しかし、『うちはTwitterでつぶやかれるような会社ではないよ』と社員ら自らが言っていた企業ですら、クラウドモニターで調べてみると24時間で200件もつぶやかれていた、という事例もある。当人たちは驚いていたが、何らかの形で市場にサービスを提供している以上、すべての企業がクチコミの対象となるのは当然のこと。社の評判が収益に直結する要素である以上、スピーディ・適切な対応の重要性は今後ますます高まっていくはずだ」

カスタマサービス関連部門をプロフィットセンター化せよ

 なお、オンデマンドCRM/SFAというと、即座にセールスフォース・ドットコムなどが想起されるが、他社のCRM/SFAが「企業内の生産性向上、効率化」に重きを置いているのに対し、ジアンフォルテ氏は「弊社製品の場合、顧客経験価値の向上とそれによる収益向上――すなわち企業を外から見た“顧客視点”に重点を置いている。開発コンセプトであるカスタマエクスペリエンスという概念も、日本市場で説明するときには“おもてなし”という言葉を使って説明している」と解説。この点で「そもそもほかのCRM/SFA製品とは基本的な性質が異なる」と解説する。

 また、顧客対応の在り方が収益に直接的に影響を及ぼすこと、クレーム対応に時間がかかればかかるほど機会損失を拡大させてしまうことを受けて、RightNow CXがミッションクリティカルなシステムであることをアピール。さらに、SaaSベンダの多くが中小企業をターゲットにする中、ニコンやブリティッシュ・エアウェイズなど、ユーザー企業の6割が大企業であることを挙げ、「信頼性、拡張性、セキュリティ面を高いレベルで担保したSaaS製品は少ないはず」と、同社製品の独自性をあらためて強調する。

 ただ、顧客対応というテーマには、常に「効率と品質、コストのバランス」の問題が付いて回る。特にカスタマサービスを“必要悪”と考え、関連部門を“コストセンター”として扱う向きは少なくない。

 しかし同氏は、「市場の状況を見れば、消費者が企業以上に力を持っていることは明らか。現に弊社製品の導入実績が年々順調に伸びており、ユーザー企業2000社それぞれが実際にロイヤリティと収益向上を果たしていることも、その裏づけと言える」と指摘。顧客対応の姿勢をもう一度見直し、「カスタマサービス関連部門を、積極的に収益向上につなげるプロフィットセンターと認識し直すことが肝要だ」と締めくくった。

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