バックアップ市場のトレンドはクラウドと仮想化米CA Technologies クレスト氏に聞く

» 2010年12月14日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 データ爆発とも呼べるほど、企業内で扱うデータ量が増加している。その量は前年比150〜200%増とも言われている。しかし、データ量が増えたからと言って、データの価値が落ちているわけではなく、むしろメールデータなどは重要度も増加する一方だ。「自分のメール履歴がすべて消えてしまったら?」と想像するだけでゾッとするのではないだろうか。このようにデータの重要性が増すにつれて重要視されているのが、バックアップ/レプリケーションツールだ。今回は、バックアップツール「ARCserve Backup」でバックアップツール市場でシェア1位を獲得している米CA Technologies データマネジメント事業部 ジェネラル・マネージャ マイク・クレスト(Michael Crest)氏に、バックアップ市場の動向について聞いた。

クレスト氏写真 米CA Technologies データマネジメント事業部 ジェネラル・マネージャ マイク・クレスト氏

 クレスト氏は、バックアップ市場の動向について「まず言えることは、パブリック/プライベートを問わず、クラウドコンピューティングへ移行している点だ。そして、仮想化環境への対応も挙げられる。日本はネットワーク環境が整っていることもあり、北米に負けない勢いでクラウド化が進んでいる魅力的な市場」と説明した。ただし、ほとんどの企業では、現状はまだ既存システムからクラウド環境に移行しつつある過渡期。データやシステムの内容によっては、あえてクラウド化しないことを選択する企業も多い。このような状況を踏まえて同氏は、「クラウド化を進めるに当たって重要なのは“データ管理”。既存システムとプライベートクラウド、パブリッククラウドをデータの中身に応じて管理し、使い分けることが重要となる」と説明した。

 データ管理で重要なのが「リスク」「コスト」「時間」の3つの視点だ。リスクの低減は、オンプレミス/クラウド環境問わず重要な問題で、データ管理における最重要ポイントだと言える。クラウド環境においても、リスク軽減のためのバックアップは重要視されており、クラウドベンダ側がバックアップを行うのはもちろんのこと、それに加えてクラウドプロバイダが提供するツールを利用することで、ユーザー側でもデータをバックアップできる環境も登場してきている。

 また、コストと時間は非常に深い関係にあると、クレスト氏は言う。「欧米での調査によると、中〜大企業システムにおける年間のダウンタイム時間は平均8時間だという。このシステムダウン8時間分のコストを考えると、かなりの額になるだろう。重要なのは、コストとリスクのバランスを取ることだ。コスト削減のみを考えてダウンタイムが増えてしまっては、サポートを含めたトータルコストは逆に増加しかねない」。

 また、最近のバックアップ市場の傾向として挙げられるのが、「Disk to Disk(D2D)」や「仮想化対応」だという。D2Dは、従来ハードディスクからテープへバックアップしていたものを、ハードディスクからハードディスクへバックアップするソリューション。「ディスク単価が安くなってきたため普及してきた」(クレスト氏)。CA Technologiesも2010年5月に「CA ARCserve D2D」をリリースした。同製品の特徴は、サーバ上のすべてのデータをブロック単位でバックアップすることで、差分バックアップが可能な「I2(Infinite Incremental)テクノロジ」だ。I2テクノロジを利用した差分バックアップを行うことで、ディスク使用量を最小化できる。

 仮想化対応では、仮想環境でのバックアップも通常環境と同じように行えるほか、重複排除機能によって、ディスク容量の削減も可能となっている。通常、仮想環境になると、構築の容易さゆえに仮想サーバが乱立する傾向がある。「その場合、システムが格納されるCドライブが増え、重複データが増える。重複排除機能があることで、そのような場合でも、必要以上にデータが増えない点はメリットだ」(同氏)とした。

 仮想化対応では、パートナーとの協業にも注力していくという。現在同社では、国内で47社のパートナー企業と協力しているが、仮想化対応では特にパートナーとの関係を強固にしたいとクレスト氏は強調する。最後に同氏は「欧米と比較すると、日本の仮想化対応はまだまだだ。『仮想化はテスト環境のみで、試験的に利用中』という企業も多い。日本はパートナー主導型のプロジェクトが多いため、仮想化/クラウド化については、当社が積極的にパートナー企業を支援し、ともに日本市場を開拓していきたい」と今後の方針を語った。

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