ウイングアーク、「ハイブリッド環境の全業務データを分析可能に」Salesforce上で動く分析製品「Motion Board」発表

» 2011年12月21日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 スピーディなビジネス展開が必須の課題となっている昨今、ビジネス基盤を迅速に配備できるクラウドサービスと、大量データから次のアクションの手掛かりを得るビッグデータの取り組みが注目を集めている。このトレンドを受けて、ウイングアークテクノロジーズは12月13日、同社が今年8月に発表した情報可視化・分析ソリューション「Motion Board」をSalesforceに対応させた「Motion Board for Salesforce」を発表。多くの企業が導入しているSalesforce CRMやForce.com上に展開したさまざまなアプリケーションデータを仮想統合することで、一元的な集計・分析を可能にするという。

 併せて、同社が2011年5月に発表した独自の基盤技術「Cloud Transporter」を使うことで、クラウド環境とオンプレミス環境にあるデータの仮想統合も予定。2012年夏をめどにハイブリッド環境のデータを一元的に集計・分析する機能もリリース予定だという。

クラウド上のアプリケーションデータを一元的に可視化・集計

 今回発表したMotion Board for Salesforceは、Salesforce CRMやForce.com上に展開したさまざまなアプリケーションデータを仮想統合し、横断的な可視化、集計・分析を実現する製品。同社が2011年8月に発表した、社内データを仮想統合して柔軟・迅速に可視化する“新世代ダッシュボードソリューション”「Motion Board」をSalesforceに対応させた製品で、Salesforceプラットフォーム上でMotion Boardをクラウドサービスとして利用できる。

 Motion Boardは、同社のBI製品「Dr.Sum EA」エンジンをはじめ、Oracle Database、Microsoft SQL Server、IBM DB2、MySQL、さらにはCSVファイルなど、各種データソースに対応し、ほしいデータを瞬時に可視化できる点が特徴。多彩なダッシュボードやチャートを用意しているほか、「超高速描画テクノロジ」により、データ分析の際、ユーザーが自由に設定した切り口から、考えるテンポを損ねることなく、リアルタイムかつスムーズにデータを可視化できる。

写真 Motion BoardのUI。各種データソースに対応し、ほしいデータを瞬時に可視化できる

 また、例えば「売り上げなどが一定のしきい値を下回っている」ことを瞬時に把握したいといったニーズにも応え、問題点を自動報告するダイナミックアラート機能や、チャート中、問題がある部分だけを点滅させる機能なども搭載。今回のMotion Board for Salesforceでもこうした各種機能を利用できる。

 加えて、Motion Board for Salesforceには、「Salesforce Chatterクライアント」機能を追加。Motion Boardのアラート機能と連携できる点が特徴で、Salesforce CRMやForce.com上のアプリケーションデータに変化があったり、設定したしきい値を下回った際などに、Chatter経由でリアルタイムに各利用者にそれを通知できる。さらに、iPadやiPhone、Android OS搭載のモバイルデバイスにも対応しているため、外出先からでもSalesforceプラットフォーム上のデータにアクセスし、自由に集計・分析できるという。

2012年夏、クラウド、オンプレミスのデータの一元的な分析も可能に

 一方、同社では2011年5月、クラウド環境にあるサーバやアプリケーションの機能を、ネットワークを介してユーザー企業のローカル環境に送り、ユーザー企業の社内システムと、クラウド上の機能を仮想統合する独自の基盤技術「Cloud Transporter」を発表している。

 これは、高度なセキュリティ要件を担保した同社独自開発のソフトウェア「Cloud Router」をインストールした専用ルータを介して、企業内ネットワークとクラウド環境を統合する仕組みとしており、“データを社外に出さない”点を特徴としている。

 具体的には、クラウド上のシステムを使う際、社内データはルータを介して、ネットワーク経由でクラウド上のシステムに届けられ、そこで処理された上で再び社内に戻される。つまり、一時的にデータは社外に出るが“処理のために流すだけ”であり、処理が終われば社外にデータが一切残らない仕組みとしている。データを送る際の漏えいリスクを考慮し、AES 256ビットの暗号化方式を採用している点も特徴で、「クラウドを利用しても、データは社内に寄せたい」というニーズに応えたものだという。

写真 クラウドとオンプレミスのデータを仮想統合し、全社のデータを一元的に可視化・分析可能とするという

 今後はこの技術によって、クラウドとオンプレミスのアプリケーションデータの仮想統合を実現。「クラウド環境とオンプレミス環境の違いを意識することなく、あたかも同一のネットワーク環境にデータがあるような感覚で、ハイブリッド環境のデータを一元的に可視化、集計・分析可能にする」という。こちらは2012年夏ごろの発表を予定している。

写真 1stホールディングス BI事業部 事業部長の小島薫氏

 ウイングアーク テクノロジーズの持株会社、1stホールディングス BI事業部 事業部長の小島薫氏は、「クラウド上のあらゆるアプリケーションデータを一元的かつスピーディに可視化・分析できる点は、意思決定の高度化に大いに寄与するはず。Chatterとの連携によって、関係者全員が一瞬でアラートを共有できる点も情報共有の在り方を大幅に改善すると思う」と解説。

 また、多くの企業がハイブリッド環境に移行しつつある今、「Cloud Transporterによって、クラウド、オンプレミスを意識せず、全てのデータを分析対象にできれば、ビジネス展開の可能性は一層拡大するはずだ」と述べ、今回の「Motion Board for Salesforce」が来年夏の発表に向けた1つのステップであることを強調した。

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