日本HP、「ビッグデータ活用はデータベースの統合がカギ」8テラバイトまで対応。SAP HANAに最適化したアプライアンス発売

» 2012年06月28日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日本HPは6月28日、SAPのインメモリデータベース「SAP HANA」に最適化したアプライアンス製品「HP App System for SAP HANA Scalable XL」を提供開始すると発表した。サーバ、ネットワーク、SANストレージを1つにパッケージングしているため迅速に導入できる他、ブレードによるモジュールアーキテクチャの採用により、優れた拡張性、信頼性を確保。分析対象となるデータ量の増大にも効率的に対応できるという。

データベースの統合とスケーラビリティがビッグデータ活用の鍵

 昨今、ビッグデータ活用に向けて、多くの企業が分析基盤強化に関心を寄せている。ただ、ビッグデータ活用の意義とは、部門内のデータソースを基に小さな範囲で分析していた従来のスタイルとは異なり、販売データ、財務データなど、社内の各部門のデータソースを使って一元的に分析し、従来は得られなかった知見を抽出する点にある。そのためには、各部門のデータを統合管理することがポイントとなるが、そうしたデータ管理体制を構築できているケースは日本ではまれだ。

 日本HP エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の山中伸吾氏はその点に触れ、「日本企業の多くは部門ごとにシステムを構築・運用する慣習があるため、データベースも社内の各部門に散在している。この状態のままビッグデータ活用を始めても、分析するデータを収集・統合する際にデータに不整合が起きるなど、正確・効率的な分析が難しい他、それぞれ独立したデータベースの管理コストもかさんでしまう」と指摘。ビッグデータ活用のポイントは、「全業務データの一元管理」にあることを挙げ、そのためには「データベースの統合・シンプル化と、データ量の増大に対応できるスケーラビリティの確保がカギになる」と解説した。

写真 日本HPのエンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 製品戦略室 室長の山中伸吾氏

 HP App System for SAP HANA Scalable XLはこうした課題に対応した製品だという。HP App Systemは、BIやグループウェアなど、特定のアプリケーションの性能を最大化できるようハードウェアの構成を最適化して提供するアプライアンス製品。SAPのインメモリデータベース、SAP HANAを搭載した「HP App System for SAP HANA」シリーズは、メモリ容量128キガバイト〜1テラバイト版まですでに提供しているが、今回発表したHP App System for SAP HANA Scalable XLは、最大4ラック16ノード、メモリを最大8テラバイトまで拡張可能なハイエンドモデルとなる。

 特徴は、サーバ、ネットワーク、SANストレージを1つにパッケージングしているため、煩雑になりがちなネットワーク設計が不要で、迅速に導入できること。ブレードを使ったモジュールアーキテクチャの採用により、拡張性、信頼性、管理性にも優れるという。また、SAP HANAは多様なハードウェア製品で稼働するが、一般的なハードウェアが外部アクセス用とストレージ用を1つのネットワークで共用しているのに対し、HP App Systemは外部アクセス用とストレージ用、それぞれに専用ネットワークを用意することでトラフィック増大によるネットワークボトルネックの解消にも配慮したという。

写真 HP App System for SAP HANA Scalable XLの概要。

 SAP HANAのスタンバイ・ホスト機能にも対応した。ブレードの障害をSAP HANAが検知すると自動的に待機ブレードを有効化して、障害を起こしたブレードのデータを待機ブレードのメモリに読み込む。このため「管理者は障害を起こしたブレードを交換するだけで済む」ほか、ソフトウェア、サーバ、ストレージの緊密な連携が必要なディザスタリカバリシステムの構築についても、SAP、HPの両社による共同検証とともに提供できるという。

各システムのデータベースをSAP HANAに統合可能に

 一方、SAPジャパン リアルタイムコンピューティング事業本部長の馬場渉氏は、各部門が個別に業務システムを持つために、データベースが社内に散在している日本企業の現状を改めて指摘。そうなった原因は、「システム構築の最終的なゴールを見据えず、場当たり的にシステムを増改築してしまう“ビジョンの欠落”」「システムの統合や標準化に不可欠な“部門間調整の回避”」「各部門が個別にシステムを持ちたがる“自前主義”」「できる限りシステムを業務に合わせようとする“過剰品質”」にあると述べ、「今後、情報基盤を強化する上では、データベースの統合、合理化、スケールが鍵になる」と指摘した。

写真 SAPジャパン リアルタイムコンピューティング事業本部長の馬場渉氏

 だが、各種業務システムのデータベースを統合するにしても、これまでは同一のデータベースでOLAPシステムとOLTPシステムを稼働させることは難しいという問題があった。その点、SAP HANAは「次期バージョンのSP5でOLTPにも対応することで、OLAPとOLTPシステムの両方に対応可能とする予定」だという。「これにより、SAP ERP以外のシステムのデータベースとしてもSAP HANAを利用できるようになる。複数あったデータベースをHANA1つに統合可能とすることで、数十年変わってこなかったデータベースの基本アーキテクチャを変革したい」(馬場氏)

 ただ、データベースを変更するとアプリケーション側も改修が必要になる。そこで日本HPでは、既存データベースの“方言”の割合を算定した上でSQLを標準化して、新しいデータベースへの移行とデータベースの統合をサポートする「HP SQL標準化アセスメントサービス」の提供に力を入れていくという。

写真 OLAPとOLTPシステム、両方に対応可能として、複数のデータベースをHANA1つに統合可能とする

 最後に、山中氏は「社内のデータベースを統合してシンプル化し、あらゆるデータソースを使って高速で分析できる理想的なビッグデータシステム構築をサポートする。これにより多くの企業のデータ管理の在り方を改革していきたい」と力説。ビッグデータの本格活用に乗り出してから、データ管理や分析スピード、管理コストなどの面で問題が噴出しないよう、“活用前夜”の今のうちにインフラを慎重に見直しておく必要性を訴えた。

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