SAP、「ソーシャルデータは収益に直結させてこそ意義がある」ソーシャルデータの分析機能をクラウドサービスとして提供

» 2012年07月10日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 SAPジャパンは7月10日、ソーシャルデータをリアルタイムに分析するクラウドベースのソリューション「SAP Social Media Analytics by NetBase」を提供開始すると発表した。TwitterやFacebookなどグローバルのソーシャルメディアだけではなく、2ちゃんねるやアメブロなど国内メディアのソーシャルデータにも幅広く対応。高度な自然言語解析技術により、ブランドや製品・サービスに対する評判のポジティブ/ネガティブの把握だけではなく、つぶやき/書き込みに込められた感情の判断、購入・返品などの具体的な消費行動までリアルタイムに分析可能としたことで、正確かつスピーディな意思決定に貢献するという。

ソーシャルデータとその分析基盤をクラウドサービスとして提供

 昨今、ソーシャルメディア上のクチコミを分析してビジネスに生かす、ソーシャルメディアマーケティングに多くの企業が関心を寄せている。その実現を支援する製品・サービスも複数のベンダが提供しているが、初期投資の高さや投資対効果の面で、導入に二の足を踏んでいる企業が多い。

写真 SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスアナリティクス営業本部 本部長 桐井健之氏

 SAPジャパン バイスプレジデントの桐井健之氏はその点に触れ、「ソーシャルデータの分析に興味を持ちながら、自社にとって本当に価値ある知見を引き出せるのか不明なことや、分析基盤の整備コストが高いことが、ソーシャルメディアマーケティングに乗り出す際の大きなハードルとなっている。今回、ソーシャルデータの収集・分析・ダッシュボード機能を一括してクラウドサービスとして届け、ユーザー側はWebブラウザさえあれば利用可能としたことで、ソーシャルデータ活用に対する敷居を大幅に下げられたと考えている」と解説した。

 SAP Social Media Analytics by NetBaseは、2011年12月に買収したNetBaseの製品をクラウドサービスとして再販する製品。シンプルな操作画面上に、自社や製品サービスの名前など「評判を知りたいトピック」を入力し、「ブランド分析」「競合分析」「新製品ローンチトラッキング」など、あらかじめ用意された分析テンプレートの中から任意のものを選択するだけで即座に分析を実行。ダッシュボード画面で視覚的・定量的に分析結果を把握できる。任意のテンプレートをユーザー自身で作成することも可能だ。

写真 SAP Social Media Analytics by NetBaseの概要。自然言語解析エンジンにソーシャルデータを取り込んでリアルタイムに分析し、ウェアハウスに1年間ソーシャルデータを蓄積する

 特徴は大きく分けて3つ。1つは日本語を含む7カ国語に対応し、Twitter、Facebookなどグローバルのソーシャルメディアだけではなく、2ちゃんねる、アメブロ、価格.comなど、国内メディア上の書き込みも分析対象にできること。具体的には計8万6900ドメインをカバーし、1億5000万件を超える過去1年間分のソーシャルデータを分析に利用できるという。

 2つ目はNetBaseの自然言語解析技術を生かし、自社ブランドや製品・サービスの評判に対するネガティブ/ポジティブ判定だけではなく、つぶやき/書き込みに込められた感情や、消費行動まで分析できること。例えば、自社製品Aと他社製品Bの競合分析を行った場合、「製品Aの方が投稿数が多く関心を持っている消費者が多いが、製品に対する情熱・思い入れは製品Bの方が20%強い」といった具合に、市場の反応を詳細に把握できる。より正確に分析できるよう、インターネット上の俗語や隠語にも逐次対応していくという。

写真 自社製品と競合製品の比較分析も瞬時に行える

 そして3つめは、SAP ERPをはじめとするSAPの各種ビジネスアプリケーションとAPIでデータ連携させ、ソーシャルデータとビジネスデータの相関関係を分析可能としたこと。「例えば、製品に対する良い評判が多い時に、販売データ、在庫データとの関係を見ることで、製品の評判が売り上げにどう影響しているかを即座に把握できる。あるいは『どの店に行っても品物がない』といった書き込みが多ければ、在庫データを確認して製品流通を改善し、機会損失低減と販売向上を狙うといったこともできる。市場の反応を知るだけではなく、意思決定のスピードと正確性を高め、収益・ブランド向上というビジネスの成果につなげられる点に大きな意義がある」(桐井氏)。

 価格はユーザー数と分析するトピック数で決まり、最小構成で58万9950円から(1ユーザーが1トピックに対する評判を3カ月間分析する場合)。桐井氏は、「分析の専門的なノウハウがなくても、評判を知りたいトピックを入力するだけで、即座に市場の反応を把握でき、ビジネスのインサイトが得られる。本製品により、ソーシャルメディアマーケティングのハードルを下げるとともに、企業における消費者1人1人とのコミュニケーションの在り方にイノベーションを起こしたい」とまとめた。

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