IT投資から占う2009年[Analysis]

» 2009年01月05日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 金融危機を発端に世界規模の不況が喧伝されている。日本も例外ではなく、2009年はマイナス成長が予測されており、その余波で12兆円を超える市場規模を持つ日本のIT業界も大きな影響を受けるのは避けられない。調査会社の予測から2009年を占ってみたい。

 IT業界の動向を左右するのが企業のIT投資。IDC Japanは2009年のIT投資額を前年比0.9%増と見ている(発表資料)。何とかプラス成長を維持するものの2007年の2.5%増、2008年の1.7%増から低下する。もっとも2007年は日本版SOX法対応などの特需があり、IT業界が潤ったのも事実だ。2009年は日本版SOX法などの規制対応特需もなく、冷え込みが予測される。

 0.9%という成長率は平均であり、投資分野によってその成長率は異なる。IDC Japanはハードウェア分野の成長がマイナスになると予測。同分野は2007年がマイナス0.2%、2008年がマイナス2.0%とマイナス成長を続けてきたが、2009年はマイナス3.6%とさらに落ち込む。ハードウェア買い換えサイクルの長期化や単価下落が影響しているようだ。IDCは特にPCとプリンタ、MFPの市場縮小を指摘している。「ものづくり立国」を標榜しながらハードウェアへの投資が真っ先に削られるのは寂しい限りだ。

 ハードウェアと比べて利益率が高いといわれるパッケージソフトウェア市場、ITサービス市場はプラス成長を維持する見通し。だが、パッケージソフトウェア市場はOSやデータベース、アプリケーションサーバなど基幹といわれる製品を海外製が占め、国内企業にどれだけお金が残るかは疑問もある。これらのパッケージソフトウェアを組み込んでシステムを開発するITサービス市場も、2009年4月には工事進行基準の適用が開始され、プロジェクト管理の複雑度が増す。ITサービス企業がこれまでのような高収益を達成できるかは不透明だ。

 IDCがこのレポートを発表したのは2008年10月中旬。不況の深刻度は日を追うごとに深まっていて、12月に発表したレポートでは、調査対象の国内327社のうち、51%の企業が2009年のIT投資を「削減する」と回答。やはりハードウェア分野での投資削減が目立つようだ。

 ただ、世界的に見ると今回の不況が日本へ与える影響は比較的小さいようだ。ガートナー ジャパンのレポートによると、世界の2009年のIT支出の成長率は2.3%。ガートナーは従来5.8%と予測していたが、金融危機の発生で大幅に引き下げた。成熟市場といわれる米国、西欧では特に影響が深刻と指摘している。

 こういう不況期にITベンダが繰り出すメッセージは「コストを削減しながら次の成長のために戦略分野に投資を」という内容が多い。しかし、不況におびえて投資を先延ばしにしたい企業にはなかなか響かないメッセージだ。ITベンダやITサービス企業は製品やサービスの単体売りではなく、企業にビジネス価値を提供するソリューション・プロバイダーに脱皮しようと、ここ数年努力してきた。守りに入った顧客企業に刺さる本当のソリューションが求められるだろう。

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